第113話 俺の来た道なき、道。


 震災があった時、俺はすでにバイト生活だったが、それ以前の問題に、俺はそこから、病気生活に入っていた。簡単な手術だったはずが。手術前のミスに気づいた俺は、死なずに済んだ。


 ありがとう、You Tube!


 もしも手術のことを何も調べずに、オペ室にいたら、俺は医療ミスで死んでいた。用心深い俺は、全てを自分でチェックしていて、医者に言ったら、真っ青な顔して、オペ室から走って出ていった。


 あんな有名な名医が、ごく単純な看護婦のミスで、患者死なせるところだったんだから、慌てて当たり前。俺は、クールでよく切れる刃物みたいなシャープな先生が、オペ室で取り乱すとこ見て、びっくりしたわ。



何で食った、何で朝ご飯、食ったんだ?死ぬぞ死ぬぞ死ぬぞ、死ぬところだぞ!!


 俺が、いやだから看護婦に「これ今の時間に食べたら、オペ中に俺、死ぬことになるから、ドクターに確認しろ」と何度も言ったけど、「絶対間違ってないから、食え」と。


 さすがに俺は死にたくなくて、裸でストレッチャーから体起こして、「先生、これだけは言わないとダメだと思うから、今、言うけど、このまま手術したら、俺、死にますけど?」と。


 なんじゃあそりゃあ、と先生に前後に揺すられて、首がガクガクしたが、そんな漫画みたいなことって本当にあるんだな、と全裸の俺は「さむ」と、先生が出て行ったオペ室で呆然としてた。


 冷凍庫みたいに寒いんですが。しかも俺、薄いペラペラした紙が体に乗っかってるだけの状態だし。寒い。凍える。マグロみたい。


 それにしても、看護婦、無茶だった。


 オペ時間、間違えて、いつもと一緒だと思い込んでカルテ確認せず。体、消毒もしてない状態でオペ室に運び込み、それくらいはまあ大丈夫にせよ、食事出てるから、オペ中に気管に吐瀉物詰まって、俺、もうちょっとで死ぬところ……


 いやあ、医療ミスって怖いね!


そんなくだらないことで、もうちょっとで死体になってる俺。




 まあ、そんなアクシデントに関係あるのかないのか、手術後、予後が悪くて、飛行機どころかバスも乗れない。飯作るどころか、風呂に入れないぐらい具合悪い。


 俺は、日本に帰るにも飛行機に乗れねーから無理だな、と思い、寝たきりに近い日々が半年以上。振り返ると、俺って、無茶苦茶に恵まれてるが、同時に人生のアップダウンが激しすぎる。


 幸運なことに、Bが当時、ホテルのマネージャーの職を得て、俺たちは豪華にホテル暮らしと相成った。本当に奇跡。じゃなきゃ、アパート借りる金もねえ、だいたいこの国はアパート借りるのに、身分証明となる職場の勤続証明(六ヶ月以上)ないと借りれねえし。B、ありがとう。住むとこないのはまずいので、本当に滑り込みセーフだった。


 俺は日本に帰ることは考えてなかった。だいたい飛行機に乗れねえ。飛行機は何度も確認したが、自分でまともに歩けないような、途中で具合悪くなる客は、「途中で死んでも知りません」と言う。ほらさ、車椅子とか、なんかないの?


 そんな状態で飛行機に乗らないでください。



 冷たい。俺この国から動けねーね。いいけど。


 

 まあそういうわけで、死にかけたら、自家用機持ってるか、それとも黙って飛行機に乗るしかないよ。俺、驚いたんだけど。普通、もうちょっとサポートないの?俺、おとなしく骨壷に入らなきゃ、日本に帰れないらしいな。


 手術はこの国だったんだが、こんなに具合悪くなるとは知らず、当時、住んでた田舎の国にさっと帰った。でも、フラフラになり、結局、手術した国に引っ越した。田舎の国は、俺に優しかったが、あの国の病院は野戦病院。実はこの田舎の国、田舎ゆえ、ヤバイ話はいっぱいあった。普通に見える企業が、ヤクザ家業だったり、と。


 結局、俺たち、逃げなきゃいけないから、引っ越したことになる。

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