第106話 膵臓に何ができてるのか
日本人の先生は、とても注意深く俺を観察していた。それから、驚くぐらいしっかりと、カルテに全てというくらいの血液検査、俺の過去の病歴をせっせと書き留めていく。
こんな先生は珍しいな。いい先生だ。町医者然としているが、こういう医者が患者に求められている。
俺はエコー結果を指差した。
これ、膵臓に何かできてるの、写ってますよね?これは何ですか?癌ですか?
白い小指の爪くらいの丸いもの。こっちの医者は、何かできてると言った後、これ、一応、何か調べましょうと言った。
先生は、血液検査結果からして、癌の心配はほぼしなくていいと思う、と言った。さっき。それはこっちの医者もそう言ってた。ヘモグロビンとか、いろんな数値はさほど悪くない。かと言って、全く正常値かというと、そうでない。
じゃ、これは何?痛みの原因は?
先生は、それらがはっきりするから、次の検査がMRIなんですよね、と言った。
続けて、この影は、「過去の炎症の後」の可能性もあります、と言った。
さっき先生は、俺の飲酒歴について、本当に詳細に聞き取った。
実は俺、ほぼ飲まないんだが、急性アルコール中毒になり、海外で病院に運ばれたことがある。矛盾してるよな。俺の全ては矛盾しているから、ちょっと出会っただけの人や表面的に付き合ってるだけの人になんて、俺のことは全く理解できないよ。
酒、ほぼ飲まない俺がそんなことに。俺は深く考えず、バーテンがサービスです、と出してきたテキーラのショットを一気に飲んで、意識を失った。
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