第104話 日本人の医者のセカンドオピニオン
俺は、マジに癌かもしれない、ずっと痛い、もうダメかもと、日本人の医者に行くことにした。
現地の医者はヤブだ。前に誤診してる。そんな医者に行くなよ、というツッコミはやめて欲しい。日本と違い、医者にかかろうにも、早くて1週間、長かったら3ヶ月待ち。膵臓癌だったら、全ての検査終わる頃、とっくに死んでるよ。
で、俺は、看護婦のうさぎちゃんにメールで相談したり、母さんにごめん、保険入ってる?俺死んだら保険金下りる?と聞いてみたり、兄貴に遺書メールを書いて送ったりと、めちゃめちゃに忙しくしていた。
仕事もせずにな。
どうせ死ぬんだったらもういいじゃないか。今の段階で、あと3〜4ヶ月なら、余裕で大丈夫だ。
徹夜徹夜徹夜、毎晩徹夜。
俺、マジで死ぬかもしれない、死にそう、死ぬ。
この生活は健康でもキツイのに、俺は、睡眠時間を削り、馬鹿げた小説を書く読む、ウェブにあげる。遺書を書き、他所にも書く。その間に医者に行く、検査受ける。書く。繰り返した。
俺は何やってるんだろう。死ぬって決まったら、やりたいことを優先順位つけてやれって、うさぎちゃんが。
俺、「すごくくだらない小説を書いて死ぬ」のが本望らしいな。
I先生が、だらだらやるべきことを引き伸ばして、手をつけないでいて、ガッツがなさすぎる。そんなでいて、成功など口にするのはおこがましいぞ、とそんな俺を見て、メールで一喝した。
俺はI先生はいつも本質を突いてくる、と思った。お前は口ばっかり、動け、直線的に、成功をつかむ努力をまっすぐしないで、言い訳するんじゃない。
先生の言うことは最もなので、俺、すごくくだらないことに命を賭けてるってわかってます、と言った。
成功とか、しあわせとかそんなの俺、実は興味全くないですけど、成功してないと、くだらない俺の実験、誰にも知られずに終わりますよね?
俺はI先生だけには、俺のやってることを話した。そう、遺書で兄貴にも。
Bは最初から、俺が何をやっているのかよく知っている。
この広い世界中で、知ってるのはこの3人だけだ。俺が本当にくだらない遊びに命賭けてること。
I先生からも、兄貴からも、返事はなかった。到底理解できないんだと思う。Bは、何でもいいから、とにかく今生きる分だけは、自分で稼げよ、と言った。
俺は、やっぱり誰もいない空虚な空に向かって「俺が命賭けてやりたいくだらないことを、死に間際までやります!本当に充実しているし、これが俺!」と、握りこぶしを固めた。
きっと誰からも理解できない。でも俺は、何だか清々しかった。だって、何も価値などないと思われようとも、自分は自分のやりたいことをやっているわけで。
金など稼げないし、名誉や成功、しあわせとも関係ない。
でも俺はやりたい。実験したい。
I先生に呆れられたかもしれないが、仕方ない。先生には、「お前、もうちょっと意味あることに時間を使え。人の役に立つことじゃないと、本当に時間の浪費だぞ」と、言われた気がした。
限りのある時間や金を、なぜそんなところに突っ込むのか、俺は。
俺はこの実験で、本当に自由を得ている、と実感した。俺が長い間、どうしても手に入れられなかった自由。どうやって手に入れたらいいのか、海外にまで出て、社会的な束縛やルール、全て壊すことができるような環境を作り出そうとして。
時間や金や物に縛られないで、どうやって自由に存在するのか。
俺は、一時期、修行しようと真剣だった時期があった。馬鹿だな。
せめて「食べない」くらいならできるだろ。
俺は本当に食べなくなった。食べられなくなった。でも全然、平気だった。
最初だけだった。だるくて仕方なかったのは。その後は、大して食べずとも何も変わらない、と思った。(もちろんゼロにはできない。)
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