第6話 転生したら○○ウだった件
暗い──
とうとう念願のあの世なのか。それとも無に帰したのだろうか。
だったらどうして思考できる?
転生を繰り返して、何かを超越したのかもしれない。
神への一歩。
少し酔いしれているとき、髪の毛を切られる。首の太さを確認された。すると程なくして近くで妙な音がしはじめた。何かを掘っているかのようだ。
そして一気に身体が持ち上げられる。
眩しい太陽さんこんにちは。
神への階段を上っていると思っていた自分を呪う。
それにしても今度はなんだ?
地中に埋もれていたゴミというわけでもないとは思うが、これまでのことを考えると一概に否定はできない。
毛を刈られているから不法に投棄されたものではないと信じたい。根菜あたりだろうか。どうせなら美人の手で美味しくしてくれ。
「立派に育ったのぉ」
爺さんかよ。
かわいい嫁と同居していることに期待するしかない。淡いけど。
大きな日本家屋らしきところに連れていかれた。
すぐに調理に取り掛かるつもりか、念入りに泥を落としている。そして──
痛い。
皮膚を包丁の背でゴリゴリとこそげ落されている。俺は根菜ではないのか。そうだとすると、こんなことはされない。ピーラーで剃られるか、桂剥きのようにされるかのはずだ。
こんなことをされるということは、つまりゴボウ。
マジかぁ……
細く切り刻まれて水の中に突っ込まれる。
窒息の心配はない。体中の悪いなにかが出ていく気持ちよさ。これがデトックスってやつなのだろうか。人間じゃないけど。
そもそも俺はデトックスなんて健康法を信じちゃいない。だが、ゴボウである今ならばアクが抜けていっているということだ。
悪くない──
人参だろうか、皮を向かれて5センチの細切りにされている音が聞こえる。
きんぴらごぼうだな──
ここまで転生を繰り返すと、分析するだけの余裕が生まれる。
ごま油の香りが辺りを包み込みはじめた。赤唐辛子、好きだったなぁ。
そろそろ鍋に投入されるというわけか。熱いのはイヤだが仕方ない。ゴボウだからな──
どうせなら美味く作ってくれよ──そう願いながら俺は炒められていく。そして意識が遠くなっていった。最後に聞こえたのは決して若くない女性の声。
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