ソウル クリエイティブズ

beeeyan

一章 物語の始まりはいつも突然

第1部 新作のオンラインゲーム

「お前クビ、明日から来なくていいよ。」

「はぁ、わかりました。」


 コンビニの薄暗い事務所でハゲの店長、新田に「クビ」だと言われた。


「お前クビ」この言葉はもう聞きなれていた。いつも2~3ヶ月に一回くらいのペースで聞いてる言葉だ。今回6回目のコンビニバイトもこの一言で幕を閉じたのである。

 まぁ確かに遅刻、欠勤は当たり前のようにするし、仕事にやる気がないから全く覚えようともしない。

 そりゃあクビにされて当然だと自分で自覚しているレベルだ。


(いつからこんな風になったんだろう。)


 思えば22の時に大学を卒業して教育免許の資格を手にいれていた。

 けど小説家になりたい自分の夢を追いかけて時間に縛られる教師にはならなかった。その結果卒業と同時にフリーターとなり自分の作品に時間を注いできた。

 しかし25の時、編集者に「君は想像力や独創性はあるのに小説を作るセンスが全くないよ。」といわれて以来作品を作る意欲がなくなりバイトに対する意欲すらなくなってしまった。

 結果その言葉を言われてから当時のバイトは1週間でクビになり、ずっとバイトを転々としている。

 当たり前のようにその時から金も稼げなくなり、暇な時間も増えてギャンブルにはまり借金をした。ちなみに借金の額は積もりに積もって600万円の借金ができた。。

 そして今回バイトがクビになり借金を返す当てすらもなくなってしまった。


「あー、もう自己破産でもして楽になろうかなぁ」


 最近ずっと考えている。もう30代手前だし、一回借金をチャラにして1から人生やり直したいとすら思っているが中々自己破産に踏み切ることができなかった。


 そんな時、いつも立ち寄ってるゲームセンターの壁に新作のオンラインゲームが稼働しているというチラシが目に入ってきた。


『ソウル クリエイティブズ』本日から絶賛稼働開始という至ってシンプルな張り紙だが妙に心が引き寄せられた。

 ゲームセンターが開店してからまだ5分、まだ人は集まってないだろうしそもそも平日の昼間から人は朝一でゲームセンターに来ないと踏んだ俺は新しいオンラインゲームのコーナーに足を伸ばした。


 ゲーム機は全部で6台おいてあり、4台はもう稼働していた。人が一人入れそうな、球状のゲーム機である。その中にはマッサージチェアサイズの椅子とVRゴーグルがあり液晶画面などはなかった。


「とりあえず装着しろってことかな。」


 1プレイ300円なのでそのお金を投入し、VRゴーグルを装着してみた。


 すると意識が一瞬とんだ様に感じた。

 目を開けるとそこにはなにもない、ただ真っ暗闇な世界が広がっていた。

 それに不思議なことに手足が自由に動かせるし、自分の腕を少しつねってみると痛みを感じた。


 まさかゲームの世界に入り混んでるってことかな??


「はじめましてソウル クリエイティブズの世界へようこそ。」


 突如そんな声が聞こえて振り返るとそこには1人のすごくかわいい天使が笑顔でこちらを見つめていた。


「ヤバいめっちゃかわいい。」


 思わず呟いてしまった。


「ありがとうございます。あなたももう少し身なりをキレイにしてたらカッコいいのにもったいない。」

「なっ!?」


 ゲームのキャラクターが普通に会話をしていることに対して俺は驚きの声をあげた。


「普通に会話できて驚いています?」

「まぁそりゃあビックリしてるよ。」

「私はこのゲームの製作会社である『クリエイティブズ コーポレーション』で作られたAIシステムなんですよ。ちなみにあなたは今ゲームの世界に入りこんでるのでこの状況に適応してくださいね。」


 天使は笑顔で説明してきたがそれでもここまで流暢に会話を成立させている天使の笑みが、俺はただすごく不気味に感じた。ってか簡単に適応できる状況じゃなくね。


 この時何気なくこのゲームを始めた俺は、この後大きな事件に巻き込まれていくなんてまだ考えもしなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る