マブタノキミ 13

ヒラヤマさんがマシーンを起動させると、ヒラヤマさんの奥さんが現れた。

写真で見た奥さんよりもだいぶ若い。

少し後に、中年の男性が現れる。


ヒラヤマさんは苦しそうな顔で、二人を見ている。


アツコさんはその男性を見た瞬間、顔が強ばった。


「お父さん、誰、この人。

嫌だ、なんだか、怖い。」


「こいつが、お前の本当の父親だ。」


アツコさんが目を見開く。


「刑事をしていた頃、近所の人からな、相談されたんだ。

隣の家から毎晩のように物が壊れる音、子供の泣き声がするって。

それで事情を聞きに行ったのが、母さんとの出会いだ。」


ヒラヤマさんは涙ぐんで続けた。


「俺がマシーンを嫌いなのは…、いや、使わないのはな、母さんの顔を思い出そうとすると、出てくるんだよ。

こいつが一緒に。

お前の本当の父親は俺じゃないんだって気づかされる。

お前にもいつか言わなければと思い続けてたんだが、言えなかった。

お前のトラウマが元旦那のことだけじゃないと、わかっていたのに。

……ごめんな、すまない。」


一息で話しきると、ヒラヤマさんは俯いてしまった。

アツコさんが、そっとヒラヤマさんの手を握る。


「お父さん、私のお父さんはお父さんだけだよ。

私こそ、ごめんなさい。

私、お父さんを疑って…、殺そうとまでしてしまった。」


父娘は手を握りあったまま泣いていた。


「あ…。」


声をかけられずにいたが、あることに気づき、安堵する。


ヒラヤマさんの出している妄想からはいつしか男性の姿は消え、代わりにアツコさんと思われる小さな女の子が現れていて。

二人とも幸せそうな、穏やかな笑顔を浮かべて、ヒラヤマさんのことを見つめていた。


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