第7話
それにこれはある程度仕方が無い面もある。
俺は鬼上の末端の末端だ。
だが一応はその力の一部を継承しているようで、身体能力その他が人並み以上に外れている。
しかしそれは同時にある種の人間としての面からも外れてしまっていて定期的に、俺の場合は主に新月の晩に破壊衝動に心を包まれてしまうことがある。
その為、俺が殺人やその他を殺すのは新月の晩が多い。
恭介の方もそれは察知しているようで新月の晩に主に仕事を依頼するのだ。
つまり俺が殺人鬼になっているのはある種の本能であり、仕方が無いことであり、必要なことなのだ。
もちろん自慢できることでは無いが、その代わりに基本的に死んでも問題ない者しか殺さない。
全く意味の無い自己満足だけどな……。
そして殺人鬼である俺は恭介に仕事を斡旋されて生活している。
とは言っても街の悪党を始末するというような勧善懲悪的なものではなくて、俺の仕事とは俺と似たような存在……つまりは俺と同じ化け物を駆除するのが主な仕事だ。
駆除とは文字通りの意味だ。
つまり化け物を探しだし殺す。
どうも鬼上の血は色々なところに拡散していて、たまに血に目覚めてしまう人間がいる。
そういう目覚めた人間は大抵、鬼上の本能に従って人を殺し、食らう。
鬼上の宗家にとってはかつての自分の先祖の不始末と高貴なる生まれの自分達に似た存在が許せないのだろう。
全国の公組織に自分達の一族の者を送り込み、そういった物を発見しだい駆除している。
恭介もそういった息のかかった者としてこの街の警察に送られてきた一人だった。
しかし恭介の仕事はもう一つある。
それはある一定以上の力を持った者達は捕らえて、宗家の訓練施設に送り込むことだ。
そしてそこで訓練と徹底した教育を受けて彼らの忠実な兵隊にされて、俺のように捕獲兼駆除部隊に組み込まれるのだ。
俺も地獄の訓練と洗脳教育を受けてこの仕事についている。
もっとも俺は捕獲されたわけではなかったが……。
昨日の赤毛の敵は果たして駆除されるのかそれとも捕獲されて宗家行きなのか……どちらにしても不幸なことは変わりないだろう。
俺は自身の宗家在籍時代を思い出して歯噛みした。
思い出したくもない! 最悪の記憶だ。
でもまあ……少しだけ楽しいというか……忘れる必要は無いと思えることはあるにはあったが……。
「ほらほらお前ら授業は始まってるぞ!席に着け」
いつの間にか教室に来ていた担任がいつものような掛け声で俺の日常はいつものように始まる。
その二重に重ねたいつものようにという言葉とは裏腹に何か嫌な予感で頭がざわめくのを俺は感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます