第7話秋(3)

私は今日も木の上で一人、彼を待っていた。やっと学園祭が終わり、この時間になると彼はいつもここにやって来る。彼の『俺と話すと木が成長する』という言葉が頭に妙にひっかかる。確かにじぶんでも薄々感じてはいたが、やはりそうだったのか。そして、そんな微妙な変化に彼が気づいてくれていたことに胸を高鳴らせた。




「リオ!!」




彼がむこうからやって来るのを見て私が声をあげると、彼は嬉しそうに笑って駆け寄ってきた。それに呼応するかのようにまた一枚ひらりと葉が落ちた。








「じゃあ、またな!!」




去っていく彼を見つめ、幸せな気分で見送る。カサリ




音の方に目を向けると、大量の枯葉に埋もれたネズミが動いた音であった。




ふと不安が胸を過った。もし、これ以上成長したら、どうなってしまうのだろう。その先は________。




そんな一抹の不安を胸にかかえ、毎日を過ごしているとあることに気付いた。私が言葉を発するごとに葉が落ちているのだと。残りの葉は残り3枚。冷や汗がだらだらと背中を伝った。




「じゃあ、またな!!」




「バイバイ!」




彼に悟られないよういつものようにあいさつをする。すっと一枚がまた風に乗って消えていくのが目の端に映った。まるで、刃を首筋にあてられているかのような、そんな気分であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る