スターイプシロン
初書 ミタ
第1話
ハイヤーさん・ハイヤーさん・・・・・
「何の声だろう?」
「天国か、それとも地獄か?私は確かに死んだはずだ。」
しかし、肉体の感覚が これが 死後の世界でないことを
如実に語りかけていた。
体にまとわりつく、重苦しい空気を感じながら、
ふと目を覚ますと、見たこともない世界が広がっていた。
「ここは地獄か?私がなぜ地獄に?」
生まれ育った ゲットー ここはそこによく似ていた。
しかし、ガラス状の壁から見たそこには、
青と白の混じる 球体が浮いていた。
古代ギリシャの賢人が 月に映る影を見て
地球は球体だといった。
今、眼前に広がるものはとても信じられないものだった。
ビーーーーッ。(擬音)
機械音がなると、閉じ込められていた
真っ白な牢獄の扉が開いた。
硬いうろこに覆われた、2足歩行の トカゲ、ドラゴンにも似た生物は
何故か、聞きなれた ヘブライ語で話しかけてきた。
「早く出ろ、新入り。」
トカゲはそう言うと、ハイヤーの青い尻を蹴り上げた。
あまりに痛みに悶絶したが、あることに気がついた。
自分の体の痛みが 10代のころのようだった。
ふと手を見ると 艶と張りのある みずみずしい肌が
そこにはあった。
現在の状況はまったく理解できないが、
これが 、天使もしくは悪魔、いや
それ以上の存在によってなされているものではないかと
心の中で叫んでいた。
体が10代半ば 15~6歳のころに戻っていたのだ。
しかし、トカゲがやってきて、ハイヤーの髪をわしづかみにすると
通路に放り投げた。
とかげは 不機嫌そうにうなった。
「早く列に並べ。」
自分に対する扱いから、少なくとも天国ではなさそうな気がした。
しかし絶望はない。
自分は この世の地獄である ゲットーで生き抜いてきた、
どのような サタンの支配する地でも生き延びる自信はあった。
自らが ユダヤ民族に対して 救済を模索した、その行為が
「悪」であったのか・・・それが気がかりだった。
もし、神がそう判断したのであれば、私の存在は何だったのだろう
泣き叫んで、暴れたい衝動に駆られる。
先程よりカラフルな巨躯のトカゲが来て言った。
ハイヤーの希望を そして絶望を打ち砕く一言を。
「お前の名は ハイヤーハムシェル・ハートシルトだな。」
ハイヤーは言葉を発することすらできずに呆然としていると、
「よろこべ、お前は選ばれし者だ。原始的な文明を持つ土人の中にも、
ときおり能力の高いものが現れる。われわれは、奴隷として
お前たちに数千年の寿命を与えることができる。」
「この未開の惑星で死んだ、貴様は 銀河皇帝ヒンヌノム様の慈悲により
不滅の肉体を与えられた。奴隷として忠義を尽くせば、
この星の生活よりはるかに 良い暮らしができるだろう。」
ハイヤーは、思考の止まった頭で これだけは言わなければいけない。
頭ではなく、心が叫んでいた。
手と足を放り出し、頭を地に着けて懇願した。
「慈悲深き、銀河皇帝ヒンヌノム陛下にお願い申し上げます。」
「我妻グートレと、子供たちにも寛大なご処置を!」
目の前の トカゲは両腕を上げて、いかにも馬鹿げている
といったふうに、答えた。
「私は 一兵卒 奴隷ではないが そのような権限はない。」
単に労働力が欲しいだけなら、彼ら、トカゲ いや ドラゴニアン
たちは 19世紀の人類よりもはるかに発展した文明を築いており、
当然、ナノテクノロジーを使用した機械、又は、原始惑星から大量の
消耗品としての生命体をつれてくることはできる。
そしてそれはなされている。
つまり、ハイヤーハムシェルの言われた、「選ばれし者。」とは
奴隷とはいえ、知的労働を課されるものたちである。
それゆえに、かなり高度な、教育を受けることになる。
ハイヤーも自分自身の境遇に対してはそれほど絶望していなかった。
しかし、愛するものとの永遠の別れ、もちろん、死ぬことによって
それが訪れることは覚悟して、受け入れていた。
しかし、死による別れは、死が何も感じないようにしてくれる。
しかし、ある意味 永遠の生 を与えられた ハイヤーにとって
2度と戻ることのない、あるいは 数千年後に戻り、見知った
存在のいない世界は 永遠の苦痛を与えるだろう。
それを思うと、68年生きた老人は 宇宙船のベッドで泣いていた。
ハイヤーさん、ハイヤーさん・・・・・
ハイヤーは夢を見た。
トーラーに著述される、それは セラフィムに見えた。
宝瓶を司る天使 ウリエル。それが呼びかけてくる。
「偉大なる我が主 深淵の絶対者 万物の創造者
絶望することはありません。」
夢の幻影 ウリエルはこう続けた。
「この世界 あらゆる可能性世界を束ね、時間と空間を支配し
原初にてすべてを生み出し、そして終わらせる、唯一なる
われらを、天使も悪魔も無生物すら統べる 絶対者。」
「わたくし、ウリエルは 創造された者として、主であるあなたに仕え、
つねに、あなたの定めた因果律によって、あなたを導くでしょう。」
「これは すべてを円環の螺旋に閉じ込め 世界を永遠のものとする
遥か未来に存在する あなた ハイヤーハムシェルの意志なのです。」
銀河皇帝ヒンヌノムの所有する ドラゴニアンの乗った宇宙船は
別の恒星系へ向けて 100年にも及ぶ 長距離の移動をしていた。
むろん、超光速航法は存在するのだが、恒星間を結ぶ維持費や
照射の操作の難しさから 恒星間航行可能な知的生命体でも最底辺の
ドラゴニアンでは、作り出せるはずもなく。
銀河皇帝ヒンヌノムでさえ、100の1283乗を越える数がある中の
たった銀河を1つを、支配しているだけであり、
超光速航法の利用代金など払えるはずもなかった。
もちろん、ハイヤーハムシェルの本体である 総絶対根源と呼ばれる
全宇宙の存在が崇拝する 造物主は 宇宙の通貨 精神エネルギーを
94%以上所有しているが、自らが世界の維持のため定めた「因果律」
により、それを ハイヤーは知ることはできないし、仮に知ったとしても
使えない、いや 未来の彼自身により 知った という事実を消されるだろう。
ハイヤーは睡眠中に、ドラゴニアンによる 「強制睡眠学習」を受けており、
肉体情報の改変、人格構造の改変が起こるはずであったが、
セラフであるウリエルの 上位介入によりそれは 好都合なものに変えられていた。
セラフ、ケルブ、ソロネなど最上位天使は 本来、自分の意志では
実体をもてない。それは プリンシパリティ級でさえ、銀河団と同等
の存在であり、セラフ級の存在が 通常の世界に 実体を持つと
通常の生物は 消滅してしまうからである。
高位世界と呼ばれるその世界は 4次元や5次元で構成される世界ではない。
しかし、未来のハイヤーハムシェル、つまり、総絶対根源によって、
物理法則の影響を受けない代償として、観測することしかできない世界、
傍観者であることしかできない世界である。
それが、唯一絶対の神 無限ループ宇宙に存在する
最後のハイヤーハムシェルの強い意志である。
しかし、セラフであるウリエルの干渉は 時間遡行技術の開発の要因であり、
それが、ハイヤーハムシェルが 時間遡行の方法を発見し、
ハイヤーハムシェルが 天地創造を行った事実を作ったが故、
不可避なものである。
ハイヤーハムシェル の前にこれから現れる、
「ウリエル・セラフィナ・ニルヴァーナ」は、
2重の意味で彼から生まれた 娘である。
そして、彼女の人間としての人生は ハイヤーの死から 3年後に
終了している。ジュリー・ハートシルト、
ウリエルの人だった時の名である。
ドラゴニアンの奴隷移送宇宙船 ヒンヌノム3号は、
銀河皇帝ヒヌンノムの支配する、銀河首星ヒンヌノムと
同じ恒星の軌道を回る、1つ外の惑星に到着した。
宇宙船の移動において、1光年移動するのも100光年移動するのも
労力はあまり変わらないため、銀河を支配していても、
人口の密集度は非常に高い。
また、宇宙の支配者の決定により、所有者がはっきりとわかるようにする
法律が存在し、「気に入った名前をつける行為。」は許されていない。
余計な争いを避けるためでもあり、100の1283乗を超える数の銀河が
存在しているため、管理を簡易にするためである。
まぁ、銀河皇帝ヒンヌノムが、宇宙的な意味では、ミジンコどころか
素粒子レベルの存在感であり、
宇宙船も「とある理由から」2つしか持っていない。
「とある理由というのは」ヒンヌノムが貧乏だからという理由でなく
宇宙船すべてに 「時間遡行」する可能性があるからである。
もし、所属不明の宇宙船が、宇宙空間を航行していると
事前警告なしで、すべての国家から 最大級の攻撃を受けるだろう。
過去に行くということは、すべての先進文明にとって脅威であるからだ。
土人である 先祖の住む星に 高出力砲を撃たれれば文明が終わってしまう。
レムリアやムー、アトランティスのように 存在そのものが抹消され
元から存在しない 「架空のフィクション」になってしまう。
名前が残るのは 「滅ぼした。」だけではまったく意味がないので、
総絶対根源や彼の部下が、「見せしめに、滅ぼしたことを」
神話や伝承として残すからである。
「ぅうぅうぅぅ。。。。頭が痛い。」
肉体年齢15歳 精神年齢68歳の ハイヤーアムシェル・ハートシルト
は、ハイヤーハムシェル・ヒンヌノムという名前を与えられた。
労働用奴隷であれば、集団番号で呼ばれるし、個体として扱われない。
しかし、ハイヤーハムシェルは、知的労働を目的とした奴隷であり、
また、銀河皇帝よりも上位の 宇宙連邦評議会と呼ばれる組織から、
危害を加えたりできないような処置を取ることを、
銀河皇帝ヒンヌノムは求められていた。
当たり前ながら、銀河皇帝の名前を付けた、「奴隷」など
常識的に考えれば、ありえるはずもなく、それが銀河皇帝の意志であり
「庇護されている。」と考えるのが当然である。
ヒンヌノム銀河の 首星ヒンヌノムは 主成分は メタンと窒素であり
大きさは 木星の3分の2程度である。ただし地球よりはかなり高度な文明であり
中心の恒星に対して ほぼ平行して 自転及び公転している。
赤道上に 帯状の大陸があり 完全に1周している。幅は1万キロメートル
ほどである。人工的に作成されたものであり、ほかに陸地はない。
地球においては 生活域でなされている 鉱物の採掘や汚染を伴う工業は
奴隷惑星でなされており、首星ヒンヌノムには 農業しか存在せず
労働奴隷は、首星に進入を許されないため、農業に従事しているものが
貴族 と呼ばれる階級である。もちろん、システムを動かしているだけであり
土をいじったりはしていない。
また、銀河皇帝ヒンヌノムの絶対王政であり、銀河を支配しているため、
また、奴隷制で 労働の対価としての賃金が発生しないため
商業はほとんど発展していない。地球における消費財の98%が
人件費のウエイトであることを考えれば当然なのだが。
軍事面という点においては、これはこの銀河に限らず共通なのだが
宇宙空間での戦闘が可能な軍備は 一切所持していない。
銀河皇帝ヒンヌノムは存在すら知らないが、
総絶対根源すなわち、未来において無限ループ宇宙で、すべてを管理している
精神的生物が「宇宙開闢の刻から、宇宙全体を洗脳した」結果であり、
誰もそのことを疑問にすら思っていない。
そのため、宇宙戦争 というものは 発生したことがまったくない。
ヒンヌノム銀河において使用される兵器は、奴隷制圧用であり
高威力のものではない。無論、30世紀の地球程度の技術では模倣すら
不可能であるが。
長期の睡眠から目覚めた、ハイヤーは自分が死んだことを
おぼろげながら思い出していた。
「死ぬ。」とは簡単に言えば、
無属性の精神が負の物質に変わることである。
しかし、このハイヤーにはその知識はない。
だから、いつもどおり 赤い看板の家の自室で
目が覚めたと考えた。
死んだというのは夢だったと。
「・・・・・・・・。」
「ここは、フランクフルトの・・・・???」
「ここは銀河皇帝ヒンヌノムの貴賓室です。」
「????????????????」
1812年の老人がほかの銀河の地球外知性の部屋にいるということを
理解するということは、将来、「唯一神」と呼ばれる存在ですら
無理だった。
「はじめまして、というのも変なのですが。」
「私の名前は ウリエル・セラフィナ・ニルヴァーナ。」
おそらく、未来の彼、総絶対根源が セラフィナ ニルヴァーナ
という 天使、涅槃 というわかりやすい名前を付けたのも、
科学的解説では、過去の自分自身が 受け入れないだろうとの経験則
からなのだろう。
「ウ・ウリエル セラフィナ !!!!!!!!!」
「あなたは 天使なのですか?」
「わたしは、いま 天国にいるのでしょうか?」
「そうであるとも、そうでないともいえます。」
「小さな精神思念体は、捕食され 無へと帰ります。
それらの意識や魂は残りません。」
「私は、あなたに食べられるのですか?」
正確に言うならば、精神、もしくは魂と呼ぶべきものは、
よりどころとする架空の存在を依り代にし、集合体を作る。
多くの小さな精神は、集合体となることで、精神世界において
より大きな精神生命体として意識を持つ、しかしそれは
あくまで、集合意識なので、統一した思考が不可能であり
高度な知性を持つことはできない。おなかがすいたら食べる、
自分と同じ、思想や宗教の死者を 捕食し 大きくなる。
ただ、それだけの 下等生物である。
ヤハウェもキリストもムハンマドも依り代であり、
行き着くところは地獄しかないのである。
天地創造の主、ウリエルの創造主であり、かつては肉親であった存在は
唯一、完全に、単一の存在で 根源世界に存在している。
しかも、94%ものエネルギーを支配している。
それは、天地開闢から、終わりなき無限の進化を経て、
閉鎖した 循環宇宙を作り上げ、すべての根源となり、
また、ほとんどすべての 生命体に 信仰されている 個体だからである。
彼は、信仰者を捕食しない。
この、下等生物と創造主の違いは何か?
それは単純にして明快である。
捕食される餌は、死に対し 恐怖を抱き、絶望や苦しみの中で死ぬ。
それを捕食し、吸収するため、恐怖、絶望、苦しみの集合体となり
それに属するすべてが 地獄を味わう。
創造者 ハイヤーハムシェルは 死ぬことを経験せず、
過去へのタイムトラベルの開発により、精神生命体
いや、精神知性となった。そこには、死に対するマイナスの経験、意識は
まったくない。
これが、創造者ハイヤーハムシェルによって作り出された
宇宙全域に広がる、始まりにして 終わりなるもの、
形而上量子コンピューターの正体である。
残念ながら、この事実を 現在のハイヤーハムシェルに
総絶対根源の許可が下りて、教えたとしても理解できないだろう。
この宇宙において 最も重要な イベントが ここである
ウリエルは ハイヤーハムシェル に答えた。
「わたしは、天地創造を成した 絶対神によりつくられた。
そしてその造物主とは、遥か未来の ハイヤーハムシェル、
すなわち、あなたなのです。」
われわれの住む地球というちんけな惑星ですら、
完全に統一し支配した存在はない。
人類に限らず、植物、魚類、爬虫類を含めてだ。
にもかかわらず
このドラゴニアンの皇帝は
半径数光年に渡る 銀河 を単独で支配する。
「君の住む、いや住んでいた。が正しいか。
に興味を持ち、管理を行っているのは、
かつて、我々がそこに住んでいたからなのだよ。」
「君たちの星で ときおり巨大な骨が見つかるだろう?、
あれが太古の我が眷属だ。」
銀河皇帝の住居 それは宮殿などという表現では
到底あらわしきれるものではない。
素直に賞賛するハイヤーハムシェルに、彼は言った。
「ふむ、これは 別の種族から購入したものだよ。
我々は 建築分野や芸術分野が苦手でね。」
「それに特別金持ちというわけではない、
ひとつの星で得られる資源と、銀河で得られる資源
を比べれば、簡単なことさ、多くなれば価値が下がる。」
「価値が高いのは 叡智さ。唯一無二のものだからね。」
「この宮殿は、君のような 知恵者をより高度な文明に、
売却して得たものだ。」
ドラゴニアンの皇帝は不思議そうに ハイヤーを見つめていた。
彼の名は、ヒンヌノム・サウルス。1億年近く生きてきた。
太古の生物である。
人類では知りえない、不老不死の原理を彼は、雑談として
話してくれた。無論、誰にでもというわけではないが、
ハイヤーハムシェル という存在は、彼にとっても理解を超えているようだ。」
彼の説明に興味を持つものもいるだろう、ゆえに簡潔に述べておく。
宇宙において、生命が生まれたが 多数派であったのは
地球と同じく 灼熱の星の環境ゆえ、嫌気性生命体だった。
しかし、酸素だけ消費する生物がいても、逆の生物だけがいても生き残れない
ゆえに2種類の生命体が生まれた。対となったのが好気性生命体
すなわち ミトコンドリアである。
この時点では 寿命という概念はなかった。
牡と雌が引き合うようにこの2つは結びついた。
細胞核とミトコンドリアが 単独でいる間は、片方が死ねば
その個体が死ぬだけであった。これが寿命の始まりである。
やがて、厚い雲が晴れ、太陽から光が降り注いだとき、
危機が訪れた。ミトコンドリアは 熱や放射線に弱かったのだ。
そこで、多細胞化がおこり、ミトコンドリアは鉄分により
酸素と二酸化炭素を生物の全身に送るシステムを作った。
しかし、背中に広範囲に分布する、褐色脂肪組織が全身の筋肉を
通じて、温度管理しており、これがなくなると、細胞の癌化もしくは
鉄分の劣化により、細胞が免疫に殺される。
不老不死は大げさにしても、1万年程度生きるのが目的ならば
褐色脂肪細胞を減らさなければ良いだけらしい。
もちろん、現在はふやす方法もある。
19世紀の地球には存在しないが。
彼の説明でもうひとつ驚いたのは、過去に行くこと自体は簡単
というより、幼児でもできるレベルだということだ。
宇宙空間を一定以上の速度で飛ぶだけで、時間を遡れる、
それゆえに、宇宙船は 超光速航法を使用しない場合 秒速2万Km以下
でしか移動できないらしい。単なる自然現象なので
発見であっても、発明ではないらしい。
発見したのは 総絶対根源 という 万物の頂点に君臨する絶対者らしい。
地球では アイザック・ニュートンという 50年前の馬鹿な学者が
星の中心には 引力がある と主張して 受け入れられてしまったため
そのことに長い間気づけなかったらしい。
一定以上の星は 終末期 内部が高温高圧になりすぎ、自ら作り出す
エネルギーにより 爆発し、空間が完全に停止してしまうらしい。
宇宙には、この力を使って、数万光年の距離を 静止時間系と加速時間系
のタイムラグなしで1時間程度で移動する技術があるらしい。
しかもそのほとんどは 加速と減速によるもので ある意味
魔術による、テレポートに近いものらしい。
とはいえ、ドラゴニアンの皇帝は、
「ふぅ、、、われわれには、数万光年先にある時間制御システムを
リンクする技術がないし、根源界に制御されているため、
天文学的な 宇宙通貨が必要なのだ。」とのことだ。
どうやら、宇宙空間に マテリアルな物は 捨てるほどあるようで
運搬コストのほうが高いらしく、
支払いは アイデア 若しくは 精神エネルギーらしい。
そのため、知能 厳密に言えば クリエイターを集めて売買しているようだ。
これは発明や発見、学術分野だけでなく。
音楽 絵 小説 マンガ ゲーム といったものも価値が高いようだ。
ようするに、複製が容易で 運搬コストのかからないもの である。
私は 経理技術に長けてはいるが、クリエイターとしての素質は
まったくないように感じる。
が、皇帝はそう考えていないようだ。
ドラゴニアンの皇帝は 私のなぞ多き友人?
ウリエル・セラフィナ・ニルヴァーナ に異常なほどの警戒感を抱いている。
私にはまったく感じられないのだが、銀河皇帝すら恐怖する
存在のエネルギー、これには説明が必要だろうから付け足すが、
神、歴史的人物、芸能人といった 多くの人に 知り渡り、認識される
人数と重さが 根源界では重要であり、総絶対根源を除いては
単独で存在することは難しく、依存するものに引き寄せられ、吸収されるらしい。
ウリエル女史によれば、根源界では 捕食される と呼ぶらしい。
根源界には 架空の実在しないもの、ユニコーンや猫型ロボットも
存在しているらしい。無論存在自体は小さいが。
また作者とは無関係に存在しているようで、
ウリエル女史によれば「ジャイ子の描いたマンガのキャラ」も存在できるらしい。
この話は長くなるので、またの機会にするが。
銀河皇帝とウリエル女史は、私に関して 何らかの密約があるのか、
規定路線、予定調和 あるべき歴史を進むしか道はない。
とひたすら話し込んでいた。
さて、そろそろ、豪華な家に帰ろう。
ヒンヌノム銀河帝国 第3ギガノト星系 第3惑星ギガノトⅢ-Ⅲ
過酷な環境汚染にある重工業惑星である。
第3等市民階級が多く住む地域である。
彼らは、表面的には民主的、機会均等なシステムで生活している。
しかし、実態は、銀河首星の巨大企業が、ギガノト星系の銀行を支配し
総生産の7割を超える財閥企業の株の過半数を所持している。
通貨ギガノトは首星通貨ヌンキに対して極端に安く、
安く作った工業製品は安いため飛ぶように売れるが、
通貨ギガノトが安いため、酸素や食料などの輸入品が異常に高く、
一部の財閥社員以外は、生きていくのも難しい。
大学卒業の初任給は 首星の5分の1以下であるが、
衣食住すべてが 首星並みの価格であり、定年退職後の年金は
首星の10分の1以下であり、老人3人が、海苔巻きとスープを分け合い
無料で食べられる、白菜を食べ漁ることで死を免れている。
首星の住人が良い住環境で、安く贅沢に暮らすために作られた 経済植民地である。
歴史は浅く、近代的な生活が導入されて、100年程度しか立っていない。
元々は、ギガノトⅢ-Ⅰの属国であったが、100年前にギガノトⅢ-Ⅱが
戦争で勝利し、奪い取った。
100年前の首星からの旅行者は、土のみで作られた建物に、申し訳程度の屋根
しかも、王城ですら平屋建てであり、国民は染料がないため
糞まみれの白い服を着ていた。宗主国に3回土下座し、9回頭を叩き付ける
礼儀作法を国王が行っていた。
70年ほど前に、第2惑星ギガノトⅢ-Ⅱから首星の命令で分離され、
現在に至っている。
首星は、管理を簡単にするため、ヒンヌノム聖教を広めており、
ハイヤーハムシェルの故郷での、イエオーシュアを崇拝の対象としている。
人間は、死の瞬間、「恐怖、苦痛、絶望、後悔」の思念があると
ソウルスウォームという集団に取り込まれ、その集団全体が負の効果を
共有し永遠の地獄を味わう。
故に、教会は、「死後の安寧、幸福」を説くのである。
ここにある少年がいた。
名前は 金本 昭人、100年前の近代化で、戸籍制度がつくられ、
氏名を作ることになったのだが、
第3惑星出身であると、差別されるため、自由に名前をつけた結果だ。
金本は鉄工所で働いていた。
低い労働賃金で、家族は生活ができず、16歳になった妹は
隣の星で、借金を抱え、体を売って生活している。
金本は、事故で、大やけどを負い、1週間苦しんだ後に死んだ。
彼の魂は、闇のソウルスウォームに食われる。しかし、
彼の悲憤は、地獄に引きずりこまれる前に、引き裂かれ
周りの人間を襲いだした。ソウルスウォームは、非実体で、知覚できない。
首星ヒンヌノム
銀河皇帝である、ヒンヌノムは座席を移動し、ハイヤーハムシェルに
上座を譲った。続いて、セラピ(セラフィーナ)も席に着いた。
首星ヒヌンノムには見事な茶畑があり、皇帝の畑で取れたものは
最上級である。召使が差し出す、飲み物はハイヤーハムシェルにとっては
最上級のものではなく普通のものになっていたが、
「ありがとうございます、おいしいです。」と感想を述べる。
ハイヤーは、謙虚さを非常に重視しており、自らの存在価値が希少であることを知っても
決して驕ることはない。
娘のセラピは、ハイヤー以外に興味はなく、ヒンヌノムを、トカゲと同じに思っている。
「首星以外を多少見学させていただきましたが、環境汚染がひどいですね。」
ハイヤーは、産業革命のイギリスのようだと思っていた。
「ハハハ、首星ヒンヌノムも、ああいった環境でしたが、重工業を後進惑星に移動し
良い環境を取り戻しました。」
「まあ、愚民にはちょうどいいでしょう。」
アヌナンキは、ハイヤーやセラピの前では、平身低頭だが、
ほかの存在には、恐怖の皇帝として通っていた。
「注文したものは届きましたか?」セラピはアヌナンキに、結構な金額を出して
非実体への攻撃能力を持つ、ユニットを注文していた。
当たり前の話だが、宇宙共通の通貨は、「精神エネルギーであり」
物質にたいした価値はない。
精神エネルギーを奪うということは、「喰う」ということである。
ハイヤーは 脆弱な肉体であり、万が一 苦痛や恐怖で死んだ場合
総絶対根源が汚染され、「エデン」の消失につながりかねない。
戦闘能力は必要だ。
機神レッドシールドは規格外の代物である。
恒星間兵器はとてつもない価格であり、銀河皇帝といえど購入は難しい。
小型の銀河の価格が1シュケルであり、ハイヤーハムシェルの購入したものは
常軌を逸していた。
性能テストを兼ねて、古代竜を攻撃したが、
星の存在にかかわる大打撃となってしまった。
この一撃により、700万平方KMに及ぶクレーターが創られた。
これはオーストラリア大陸に匹敵する規模である。
また、構成物質は、プラズマ化し、大規模な爆発を起こした。
ヒンヌノム星系において最強の生物、古代竜と言えど
耐え切れるはずもなく、完全消滅した。
ヒンヌノムは、ギガノトⅢ-Ⅲで発生した、ソウルスウォーム退治を
ハイヤーとセラピに提案した。古代竜は実体があるためだ。
非実体の時間遡行生物を喰らい浄化する機会はそうないだろうからだ。
そして、アヌナンキが対処するのは難しいからだ。
いなくなるのを待つより、早期に消滅を願っていた。
「oo0o0oo0o00」金本だったものは、叫んでいた。
「苦しい、苦しい、助けて」周りの生命を喰らいながら、
自分の質量が減るのを感じる。
完全にゼロになったらどうなるのだろう?、
そういう本能が、周りを喰らう。
機神レッドシールドは大きさを2m程度に変化させ
ソウルスウォームに対峙する。
「完全密閉でも生命が死ぬと質量が減るのをご存知ですか?ハイヤーさん」
セラピは尋ねた。
「それが何か関係あるのか?」
「死ぬと魂は、反質量物質に変化し、光速での移動が可能になります。
低温真空の状態だと、過去へ移動する存在になり、通常の方法では
観測が不可能です。」
なのでこうします。
スキル発動「ミラーオブメタピュシカ」
鏡の中に、うごめく苦痛にゆがめられた無数の顔があった。
生前人が最もよく見るのが、自身の顔だからだろう。
「我が名は、イエオーシュア!救済者である!」
「貴様らも喰らってやる。」
狂いながらも、ソウルスウォームは喰うために襲ってくる。
しかし、機神の装甲は反物質を無効化する。
ソウルスウォームには何もできないのだ。
「ばかな、ばかな。」イエオーシュアの一部は理解できないまま
滅びはしなかった。。。
セラピ「それではいただきます。」
機神レッドシールドは口を大きく開けると、むしゃむしゃと
魂の集合体をたいらげた。
「これで エルサレムのイエオーシュアの力も少し失われるでしょう。」
セラピは満足げに、微笑んだ。
ハイヤーハムシェルが仮の死を迎えたのは、1812年。
それから、140年後。
ヨーロッパ大陸で悲劇が起きる。
ユダヤ人大量虐殺である。
死因の大半は、「餓死、病死、衰弱死。」であった。
セラピが死に、再び蘇ったのは、自身の力ではない。
2004年に「時間遡行理論」が誕生した。
物理的タイムトラベルが可能となったのはそれから50年程度。
その技術は、地球外生命体によってもたらされた。
過去へ 時間遡行するときは「タイムマシンを作る原因」が
産まれたときが限界である。
しかし、その原因、発明者を7000年前に送れば、自由に行き来できる。
それなら、タイムマシン発明者は、悲惨な運命が待っているのか?
宇宙の原初に飛ばされ、天地創造をさせられるのだろうか?
答えは、「そのとおりだ」である。
しかしだれが、自らの歴史を離れ家族も友人も国も文明も失い、
純粋な精神体として生きたいと願うだろうか?
生命が死亡した時に、吸収される存在、全宇宙においてそれは、
ハイヤーハムシェルであり、総絶対根源である。
彼こそが、死者にとって 原初のときから終末まで
唯一の「楽園」である。
ハイヤーハムシェルは、死ぬことにより、原初にたどり着いたのではなく
生きたままたどり着いた。
「死」を知らず、「恐怖も苦痛も絶望」もない。
総絶対根源ハイヤーハムシェルの中は、幸福な楽園である。
原初から終焉まで存在する、総絶対根源はいつもどこでもいる。
総絶対根源の渇望は、「自身が人として普通に生活する様子をただ眺めること。」
である。総絶対根源は、自らの消滅を願っていた。
それゆえ、セラピが生み出された。宇宙人とタイムトラベルによって。
セラピに課せられた使命は、
1.欧州でのユダヤ人虐殺の阻止
2.消滅し歴史から消えた総絶対根源の家族に根源者を会わせること。
3.第2のハイヤーハムシェルを、原初に送ることである。
整理しよう。
時間遡行で1900年に行き、ハックフェラーを不老にして
第二次世界大戦が起きなかったら、多くの命は救われる。
だが、戦争を体験した世界の人間は生まれてこない。
歴史から消滅し、存在しなくなるのだ。
例外は1つ、時間遡行理論のオリジナルがいる場合だ。
ハイヤーは、セラピに負い目を感じていた。
産まれたとき、長くはないと知らされていた。
妻のグートレは、それでも一生懸命愛情を注いでいた。
だがハイヤーは、生きている娘を見ても、人形程度の興味しかわかなかった。
どうせ死ぬんだ。だからもう死んでいるのと同じだ。死んでいる。
セラピは心の中でずっと死んでいた、殺していた。まだ生きているのに。
ヒンヌノムの宮殿の一室で、セラピはほかの銀河へ行くための準備をしていた。
「セラピさん・・・・」ハイヤーは消え入りそうな声で言った。
「いかがされましたか?」
「セラピさんは、地球での生活を覚えていますか?」
「いえ、覚えていません。」
「家族、友人、すべて二度と手にはいらない、だか、君だけは・・・」
ハイヤーは、自身の使命、天地創造の真実を知り、絶望していた。
しかし、心の中で殺した、娘が、原初の地まで運命を共にするというのだ。
ハイヤーは、そっとセラピの後ろに回り、腰の天使の羽を撫で、ぎゅっと抱きしめた。
時間が経つから家族に会えないのなら、時間遡行で何とかなる。
でも、ハイヤーの運命は 因果律である。
「な、なにをなさるのですか?ハイヤーさん!」
ハイヤーは号泣していた。
宇宙港
セラピは、宇宙ステーションに来ていた。
データカードを紛失してしまい、
宇宙船を購入できない。
「困ったわね。」セラピは再発行の手続きをすべく
ネットワークに接続しようとした。
しかしそのとき 「おねえさん、これをお探しですか。」
その男の持っているものが、探しているものだった。
「使用制限なし、ってすごいですね、へへへ」
「100万ヌンキで、お渡ししますよ、へへへ」
なんて下種な野郎なんだろうと思ったが、
表情だけ取り繕って、笑顔で言った。
「宇宙船のクルーが不足していて、困ってるんです。
雇われる気はありませんか?」
1回のローテーションで、100万ヌンキ出しましょう
宇宙共通通貨で。」
犯罪者にしか見えない男、マイクは言った。
「ありがとうございます。」
マイクは、この女は頭がお花畑。警戒心ゼロなんだなと思った。
宇宙船のブリッジ
「宇宙船の運用AIの一部に、プロテクトがかけられていたんですよ。」
「プロテクトは、脳が緊急事態になっていると解除されます。」
「これは 腐植液、生きたまま、首から下を腐らせます。」
マイクは、「やめてくれ、何でそんなことを!金はいらないか帰らせてくれ!」
と大声で叫びながら。
「誰かがやらないと、宇宙船を発進させられないですよ?」
静かに微笑んだ。
腐った肉体が崩れないように、治療を受けながら
マイクは狂ったように「うごぁ~、うぐぉ~、ぉ~。」とわめいていた。
「痛みを和らげる薬品などは、「緊急時」と認識されませんから。」
銀河皇帝ヒンヌノムに別れを告げた、ハイヤーは宇宙船に乗り込んだ。
次の目的地は、シリウス星系だ。
スターイプシロン 初書 ミタ @yuukioka2263
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スターイプシロンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます