お電話代わりました、3.5次元サポートセンターです

小鳥遊 醍醐

第1章 ある大晦日の出会い

第1話 気付かれない人生を希望します

当たり前に便利な毎日。テレビには24時間楽しげな番組が用意され、時間を問わずに買い物ができる。テレビの通販番組は深夜帯に売り上げを伸ばすのだとか。

24時間営業。コンビニエンスストアやファミリーレストラン、テレビ番組、インターネット。私が起きている限り、私は買い物ができる。


人が起きていれば物欲が生じ、どこかで誰かが買い物をしている。そして、人が起きていれば、何かが壊れ、誰かが困る。そんな時に頼るのが、コールセンターだ。電話一本で、ナントカしてくれる(という期待感が持てる)


この物語の主人公である私は、最近珍しくなったと言われる国内拠点のコールセンターで、これまた最近は珍しい正社員として働いている。今日は月に数回担当する深夜当番。今夜は特に寒いから、深夜のコールも少ない感じ。この時間帯、お客さんからの電話を最初に受け付けるのは、外注しているオペレーターさん。そこでどうにもならない時に、私のデスクのランプが光る。幸運にも、今夜は電話自体が少ないみたい。ツイてるぞ。このまま朝まで静かに時が過ぎますように。


唐突な質問だけど、答えてね。子供の頃、何になりたかった?ケーキ屋さん?パイロット?野球選手とかアイドルなんかも、よくある答えよね。もしかして、学校の先生とか?


私は…作家、もしくはスパイ。え?脈絡が無いって?そんなこと無いわよ、良く見て。作家と、スパイだよ。


作家もスパイも、仕事の時は本名とは別の名前を使うじゃない。自分の素性を隠して、世間の目に触れるのはあくまでも仮の姿。本当の私の姿は、誰も知らない。ね、同じでしょ!そして、なんて魅力的な生き方なんでしょう!いろいろあってコールセンターの中の人をやっているけれど、この仕事はそういう意味で気に入っているの。

電話の向こうのお客様は、本当の私の事なんて、知らないの。名前も住所も、姿形も。毎日が仮の姿。ちょっと、コスプレ気分で楽しいのよね。


地味に、静かに、淡々と。

誰にも気付かれずに、静かにひっそり暮らす事。それが、私の望み。


去年の大晦日の晩までは、上手くいっていたんだけどなぁ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます