@kemusi

第1話

木田 6.5.0443


気づいたら朝になっていた。少しの湿度を感じながらも、耳から30cm近く離れたところにある壁、その外から聞こえる鳥の声に清々しさを感じていた。諦めと期待の1日。 朝が始まった


木田は昨日、何にもない1日の中で、興味のある人に出会った。その人は1+1の意味が分からない。そして、影で木田の事をただなんとなく苦手な存在と位置付けていたらしい。木田も1+1が数学的に考えると2になることは理解していたが、それ以外の場合の1+1が2になる意味が分からなかった。分からなかったというよりかは考えなかった。考える必要がなかった。


「その人と話すことになったきっかけは、教習所で席が隣になったこと。それまでも面識はあったが話す意味がないと木田は思っていた。」


身の回りを取り囲む空気が朝の時とは違う。暑さを感じながらも退屈だったので、ただの興味本位で、その人に自分の印象を聞いてみた。周りの目を気にしないと決めているのにどこかで周りの評価を気にする木田の悪いクセが出た。その人は「あんまり話したことないからなー。ちょっと考えてみるね」という言葉を添えていくつか思ってる事を教えてどこかへ行ってしまった。


それを機に暇の波を感じその波で暇を潰していた。そろそろ帰りの支度をしようかという頃。その人が少し悪い顔、何か企んだような顔をしながら、「はいっ」と1枚の紙...ゴミ?をくれた。用事が終わり捨てられた紙。紙の役割を果たし放って置けばすてられるだけのゴミ。その紙に自分の印象をいくつか書いていてくれた。ゴミじゃない事を確認し目を通す。


そこに書いてあった「他人に興味ない、でもそうじゃない一部」「他人に合わせてる」この言葉に納得と理解をした後、考えてくれたから考えてあげようと木田は思った。1+1は2でない理由を分かりやすく考えてみようと思った。

肌寒さを感じ、布団の中でただ上を見ていた。暇の波を感じない。時間が早く流れている。自分の時間に。


スニーカーとサンダルが片方づつ。靴の数え方で、1足と1足で2足。ここまでは理解できる。でもこれは1+1で2ではない。理解できる。スニーカーをもし1としてしまったらサンダルは1にならない

身近なもので1番分かりやすいのは「手」だと思う。こんな話を普通の人にするとおかしい、変わってると思われる。だから話を聞かれたくない。疎通の必要がない。分からせるだけムダだと思う。

右手を1にしてってみんなに説明する1の形、それと同様に左手も。みんなに話を聞かれたくないから、右手の指を1本、左手の指を1本。それを「あ」として会話しよう。中国では片手で10まで数えられる。あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ、10文字。ぁぃぅぇぉは5文字。成る。もう1+1が2ではない。

朝が来る 6.5.0622

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