異世界の覇者、転生して無双開始

蓬莱汐

序章

prologue

 かつて異世界の覇権を賭けて起こってた戦争。


終焉戦争ラグナロク


 人間族、妖精族、魔族、天界族、龍族、獣人族、霊族。

 人間族は発達した頭脳を、妖精族は産まれ持っての高度な魔力を、魔族は対象を腐敗させる能力を、天界族は光を操る能力を、龍族は強靭な身体と絶大な火力を、獣人族は他を圧倒する身体能力を、霊族は影を操る能力を駆使して殺しあってきた。


 戦争が始まって以来、わずか数十年の内に全種族は絶滅の危機に陥ってしまった。

 一種族、また一種族と戦争からリタイアしてく中、最後には人間族と龍族の一騎討ちとなり、見事覇権を手にしたのは龍族―の筈だった。


 覇権を手にした数年後、龍族は突然の絶滅を迎えた。

 自然災害や天災によるものなどではない。

 ある男が率いるパーティに種を絶やされたのだ。

 勇者ブレイヴァー魔術師ウィザード予言者プロフェ、そして覇王マスター

 たった四人に異世界の覇権は略奪された。

 最強の四人によって。



 ***


 人間領の最端。

 なんの変哲もない田舎村。


 オギャア、オギャア。


 赤子の誕生と共に聞こえるはずの産声。

 それがこの赤子からは聞こえなかった。未だ、肺呼吸をしていないのか、あるいは出来ないのか。

 出産に付き添った者は聞こえない産声に身を強張らせていた。

 数ある方法を試行し、ついに赤子から声を聞くことが出来た。


「……鬱陶しい」


 この瞬間、その場に静寂と混乱が訪れた。

 産まれて数分で赤子が言葉を発した。これだけで充分に驚異なことだ。

 だが、本当の意味で世間を震え上がらせたのはこの後の出来事だ。


「……あれ? 先生、このラプラスの魔眼故障していますよ?」


「そんな馬鹿な! これは先日購入したばかりだぞ!」


 その魔力測定装置に映し出された数字。


『魔力数値:■■■■■■■■■』


 この日、この世に一人の少年が誕生した。

 名を、アスト・ヴァングリーフと言う。



 ***



 同時刻、凍えるような人間領の最北端のとある田舎町。


 可愛らしい産声、赤子ながらに分かる整った顔立ち。

 狩人と宿女将の間に産まれた少女。

 両親ともに魔力値は最底辺。優秀な血筋である親族一同から、「産まれてくるのは出来損ないだ」と馬鹿にされての出産だった。

 だが、産まれてきた少女の魔力値は親族の、否、全世界の人間を驚愕させるものだった。


『魔力数値:■■■■■■■■■』


 この日、この世に一人の少女が誕生した。

 名を、ミゾレ・サーフェンクスと言う。



 ***



 同時刻、人間領の南沖。魔族領に近い離れ島。


 漁師の家に少年が生を受けた。

 その家は代々続く魔術師の家系。少年の祖父の代で名を下ろしたが、国内でも名の知れた家系だった。

 そんな少年の出産に立ち会った助産師は、産まれてすぐの少年の魔力を測定し、顎を落とした。


『魔力数値:■■■■■■■■■』


 この日、この世に一人の少年が誕生した。

 名を、ケイオス・フィートと言う。



 ***



 同時刻、人間領の都市部。


 ある病院に産声が響いた。

 優秀な頭脳を有する両親。論文などを提出すれば高く評価される父、県内で名を出せば知らない人はいない母。

 そんな両親の遺伝子を継ぎ、天才的な頭脳を持つと噂された赤子。

 その魔力値に、立ち合った全ての人が驚きを声にした。


『魔力数値:■■■■■■■■■』


 この日、この世に一人の少女が誕生した。

 名を、ミオン・オラクルと言う。



 ***



 そうして、かつて異世界の覇権を握り締めた最強の四人が現世にて誕生した。


『覇王』アスト・ヴァングリーフ。

『勇者』ミゾレ・サーフェンクス。

『魔術師』ケイオス・フィート。

『予言者』ミオン・オラクル。


 かつてと同姓同名。

 所謂、転生をした彼等はその力を有したままの状態だった。

 だが、「そんな魔力数値があるはずがない」。

 その一言により、彼等の魔力値は魔眼の故障という結論に至った。

 それは、彼等が転生を成してから十数年後。

 最強の四人が再会する直前のことだった。














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