第149話

昭和十六年十二月の日米開戦により二年余り経過し社宅でも応召、出征、戦死者も出てくる。

洋子は寅年生まれ「寅は毘沙門天のお使い」「寅は千里を行って千里を還る」と云う由来から出征する人、あるいは前線にいる人の武運長久を祈る家族から良く頼まれ進んでお受けしていた。


寅年の人は自分の年齢だけ結び目を作ることが出来るので、特に寅年で年配の婦人が居られると、其の方は特別忙しかったようである。

1メートル程の晒しに、赤い糸で千人の人が一針ずつ縫って貰い結び目を作るのである。

兵士は此れを弾除けのお守りとして腹に巻いたり、帽子に縫い付けたりした。

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