第124話

今の時代と違って国の記念日には何処の家も当然乍ら必ず日の丸が掲げられる。大通りの両側にずらりと掲げられた国旗は実に壮観で美しい。其れが元旦だと一層美しく感じるのである。

朝一番に下着等を新しい物に着替えて、それぞれ水で禊を済ます。そして家族中が神棚の前に整列して、まず国家皇室の安泰を祈願し家族の健康を祈るのである。

その後主人は毎年お決まりの一言「みんな今年も元気でがんばろう」と挨拶して、お雑煮とお節料理を戴き子供達は学校の新年式に出かける。


又、母は家族全員を七福神に見立ててお祝いした。主人を恵比寿天、私は大黒天、博道は寿老人、實は毘沙門天、秀雄は布袋様、洋子は弁天様、母は福禄寿として七人全員並び母の合図で「目出度い目出度い」と新年を祝った。苦労続きの母にとって人生で一番幸せだったかもしれない。

毎年の正月には新調した下駄を下ろす、下駄の鼻緒は私が夜なべして作ったものである。

もっとも外は雪だから履くのは春まで待たねばならない、当時の小学生の夏は、ほぼ全員下駄での通学であった。

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