第24話

母は芝居や義太夫が好きで時々口ずさみ、栄楽座(後の帝劇、現在はパーキング)に良いお芝居が来ると夕食もそこそこにして私を連れて行ってくれた。仙台萩(伊達家のお家騒動の物語)を見た明くる日、店へその役者が買い物に来たのを見て、「この人悪い人」と指差し店の者に袖を引かれたそれでも尚「この人憎らしい人」と本当に憎しみを持って睨んでいた。


その役者は前夜、仙台萩の八汐役で、鶴千代に毒饅頭を贈り毒殺を謀ったが千松が身代りに食したので露見を恐れ刺し殺す。其れを見たから真顔で着流し姿の役者にでも悪に対しての怒りであろう。しかしその役者は良く出来たのだそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る