第47話 暴かれた世界(2)〜実家に帰る!
どうも頭の整理がつかない。
突っ込みどころが多すぎて、何から確認すればいいのかわからない。
ここは探偵事務所。
だが実のところ殺し屋の事務所だ。
殺し屋の社員が集まっている。
ここにいる全員が殺し屋、またそれをサポートする人たちだ。
まだ会ったことのないリトルハンドという呼び名の殺し屋がいる。
澤村はそのリトルハンドに会わせたいと言った。
そして目の前にいるのは、楓だ。
楓は保険外交員だ。
.................................。
どこまでが本当で、どこからが嘘か。
全部、冗談か。
それとも次の依頼人が、楓なのか。
聞きたいことが多すぎて、言葉が出ない。
「シンちゃん。びっくりした?」
「びっくりした、じゃないよ」
「え、じゃあ、もう気づいてた?」
なんだか、おちょくられてるみたいで腹が立ってきた。腹の奥から、沸々となにかが昇ってきた。それが吹き出す。
「おい!お前、殺し屋なのか!なあ、人殺しだぞ。なにやってんだよ。お前、里穂のママだろ。ママがそんなことしていいのか!いいわけねえだろ!!」
自分でも驚いた。娘に叱る時に大きな声を出したことはあるが、妻にはない。しかも、妻のことを「お前」と言ったのも、記憶が正しければ初めてだ。
「え、なんで?里穂も知ってるよ」
「お前なに考えて......里穂に、ママ人殺してるよ、なんて言ってんのか!」
「違うよ。正義の味方だもん」
「なにを言ってんだ!人殺しは正義の味方じゃねえよ」
みんな知っていたのだろう。他の社員は黙って、このやり取りを、ただ眺めている。1人を除いて。
「えーっ!こいつ姉ちゃんの旦那なの?マジで。じゃあ義兄さんじゃん。俺、こいつに、覚悟が出来てねえなんて、生意気なこと言っちゃったじゃん!」
「ジバンシイ、知らなかったの?」
ミントは小さな声で話しかけていた。
「知らねえよ。俺、聞いてねえもん」
「じゃあ、今日なんで来たの?」
「だって、こいつの入社パーティーだろ。って親父に言われたから」
そうだ、ジバンシイと澤村は親子だった。そしてジバンシイはリトルハンドこと楓の弟........?........!
「え!?お義父さん!」
俺は澤村の方を見た。澤村はバツの悪そうな顔で小さく、はい、と答えた。
「ちょっと待って、ちょっと待って。どういうことですか?澤村さんは、俺が楓の夫だと知ってて、声をかけてきたんですか?」
俺は澤村に詰め寄った。また、小さな声で、まあそういうことになるね、と答えた。
あー、わかんねえわかんねえわかんねえ。
俺は誰に言うでもなく、大声を出していた。
「じゃあ、ちゃんと聞いて。あのね」
「もういいよ!ちょっと頭の整理つかない!話しかけないでくれ!」
「なに、それ。ちゃんと聞いてよ」
「うるさい!とにかく、俺は帰る!」
「帰るってどこによ」
「里穂連れて、実家に行く!人殺しの子供なんて、教育上ありえない!」
「なに言ってんの。シンちゃんだって、やってたでしょ。シンちゃん、しばらく続けたいって言ってたくせに、アタシがやるのはダメなの?それ、おかしくない?」
おう、ケンカか、やれやれ。ドクターが囃し立てる。
「俺は、まだやるとは言ってない。もう少し居たいと言っただけだ」
「また、ずるい言い訳するんだよね」
ジバンシイが俺と楓の間に入ってきた。
「まあ、まあ、お義兄さん。これから、みんなで仲良くやっていきましょう」
「樹は黙ってて!」
樹、というのがジバンシイの本名だろう。楓がジバンシイを制した。
「ねえ、殺し屋だけど、アタシ、殺してないよ」
「なんだよ、適当なこと言うなよ」
「ちょっと、お父さん。シンちゃんにちゃんと説明してあるの?」
澤村は咳払いをした。
「あのね、アサシン、いや、浅野くん、や、真一くん。これはね」
「だいたい、お義母さんと離婚してるんですよねえ。それも嘘ですか」
「それは嘘ではない。楓が中学の時に離婚している。それでね」
「もういいです。とりあえず帰ります」
俺は事務所を出て、ドアを勢いよく閉めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
家に帰ると、旅行バッグに俺と里穂の着替えを手当たり次第突っ込み、実家に電話した。
(あれ、真一。どうしたの?)
「俺、しばらくそっちに行っていい?」
(なになに、楓ちゃんとケンカでもしたのかね。里穂ちゃん、どうするの?)
「里穂も連れてく」
(あらら、本格的なやつねえ。学校大丈夫なの)
「そんなの、どうだっていいんだよ。理由は後で話す」
(いや、いや。けっこう、深刻なやつ。まあいいわ。里穂ちゃんに会うの、久しぶり。気をつけて来るのよ)
電話を切ると、ちょうど里穂が帰ってきた。
「なんで、パパいるの」
「ちょっと都合で、静岡行くよ」
「なんで?学校は?」
「いいよ、パパ学校電話するから。学校はしばらく休もう」
「ママは?」
なんて説明したらいいかわからないし、里穂は知らない方がいい。
「ママは、しばらく仕事で、一緒に来れないから」
「ふうん、まあ、いっか。バアバっ
無邪気な笑う里穂と、新幹線で実家に向かった。
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