第22話 けっちゃく

(この周辺を彷徨く怪しいヤツがいるのです...。ここはケーサツとやらに電話した方が良いのでしょうかね...)


ここ2、3日この近辺で彷徨く怪しい人物を見つけた。最初はそのように思っていたが、翌日からはパッタリと居なくなった。


「すみません、ちょっと出掛けてきます」


「かばん...!」


「は、はい?」


「なるべく人通りの多い所を歩くのです」


「わ...、わかりました」


そう言ってかばんは出かけて行った。


「助手は出掛けないの?」


サーバルが尋ねた。


「大丈夫です。手は打ってます」






かばんは助手の言いつけを守り人通りのある場所を歩いていた。

すると突然、


「よお、嬢ちゃん」


「ちょっと俺達と遊ぼうぜ」


「えっ...、いや...」


唐突に現れた男二人に絡まれる。

拒むが、無理矢理口元にハンカチを当てられる。声が出せない。意識が薄れた。


駐車場の車の中に連れてかれた。


「先輩、やって来ましたよ」


「お疲れ」


満足そうに述べた。


「これからどうするんですか?」


「アイツは俺から逃げやがったんだ。

後悔させてやるぜ...」






「...!!」


目が覚めた。

辺りは真っ暗で、街頭のような明かりが等間隔で設置されている。


「ここは!?」


「おはよう」


その声に聞き覚えがあった。


「か...、川角さん...」


「フッ...」


彼は鼻で笑った。


「どうして俺の前から逃げたんだ?」


「逃げたんじゃないです...」


その返答には自信が無かった。


「まあいいや」


「どこに行くんですか...」


「何処だっていいだろ?目的地が必要か?」


「早く帰してくださいっ!」


強い口調で言い放った。


「ッチ...」


舌打ちが聞こえた。

それと同時にウィンカーの音も聞こえる。


車が止まった。


「帰せる訳ないだろ...」


後ろを振り向いた彼は、唐突に手を伸ばす。


「いやっ...!」


「騒ぐなって」


彼は狭い空間をゆっくりと動く。

かばんは動くことが出来なかった。


「や、やめて...」


「女らしい声出すじゃねぇか...」


「...!」


か弱い小動物を喰らう猛獣のように、

彼女に手を出した。


「やめっ!!」


器用な事に左手で口を塞がれる。一方の手は服の上から...。

完全なる犯罪行為だ。


「んんっ...!!」


目には涙を浮かべる。


「お前は俺から逃げられない。

俺のモンになんだよ...」


そう囁かれる。

彼の手が地を這うトカゲのように、地肌を触る。


(だれか...!助けて...)




コンコンと音がし、車のドアが開いた。


その人物は一気に川角を殴った。


かばんは唖然として見つめるしかなかった。


「誰だてめぇ!!」


彼は外に出た。


駐車中の車の影から飛び出し、

川角に拳でダメージを与えた。


「グッ...」


大柄な彼をここまで追い詰めのは素人じゃない。


「行くぞ」


かばんはその人物に手を引っ張られた。


「クソ!待ちやがれ!」


川角が追ってくるので急いだ。

助けてくれた人物の言うままに、

後ろに乗った。


「捕まってろ!」


その声で背中にギュッと抱きつくように

しがみついた。

バイクを発進させる。


そして、川角を振り切ったのだ。



「大丈夫?」


その声でハッと気付いた。


「...む、室見くん...」


「全く...、俺ら友達なんだから、

相談してくれよな」


彼の背中に抱きつき、涙を流した。




後の話だが、助手さんが僕に自身の携帯を忍ばせ、家でGPSを使い監視していたという。僕がサーバルちゃんに室見君の連絡先を教えたのが功を奏した。


僕は、室見くんに全てを話した。

「それとなくわかってた」

と言った。

助手は彼が協力してくれた事を感謝し、

ヨリを戻しても良いということだった。

サーバルちゃんも、「いいよ」って。





とりあえず、丸く収まってよかった。


川角さんの方は、室見くんが昔の友達に頼むとか言っていたけど...








「テメェが川角かぁ!?」


「なんだお前らは...」


川角の前に現れたのはガンを飛ばす二人組の男だった。


「リーダーの彼女に手出した見てえだな?」


「ただじゃおかねえからな?

金だせよ。慰謝料だよ慰謝料」


「ふざけんな。俺はアイツに...」


「リーダーをバカにする奴は俺達が許さねえぞ」


「...、不良か?

リーダー、リーダーって」


「不良?そんなんじゃねえよ…

悪い事をしてる輩をシめてるだけだ...。

そこら辺のチンピラとは違うんだよ」


「さっさと金を出せ。

でないと、もっと酷いことになるぞ」


脅しを掛けられたが川角は平然とした様子だった。


「酷いこと?勝手にしろ」


勢いよく部屋のドアを閉めた。


「ふん、せっかくのチャンスを棒に振るなんてバカな奴だ」


「人間のクズだな」




そのすぐ直後、川角が音信不通になるとは、かばん達は知る由も無い。

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