長と少年
みずかん
第1話 であい
私と助手は基本仲は良い方ですが...、
ちょっとしたことで、喧嘩をしてしまいました。
私もムッとし過ぎて・・・、図書館を飛び出てしまったのです。
その後、森の中を適当に歩いていたら、急に意識が遠くなって・・・。
そして、気が付いたら...。
「ん...」
私は暗い所にいました。近くには川が流れています。
外は、雨が降っていました。
しかし、目の前に広がる光景は、パークではありませんでした...。
灰色の高い建物が遠くの方に見えます。
本の挿絵で見たことがあるのです。
アレは、ビルというものです。
「こ、ここは・・・」
どれも、本で読んだことある物ばかり。
空想の世界かと思いました。
道を走るのは自動車・・・
奥の橋を通り過ぎてゆく銀色の物体は電車・・・
そして・・・、川岸には、絶滅したハズのヒト・・・
「ジャ、ジャパリパークじゃないのです・・・
ここは・・・、人の世界・・・、なのです・・・」
「ってええええええええ!?」
ま、待つのです...。落ち着くのです。
長たる私が取り乱してどするのですか。
頭を動かして、賢明な解決策を出すのです...。
フゥと軽く息を吐いた。
「だ、誰かに聞くのです!ここは何処か!」
黒いスーツを着た人物がちょうど傘を差しながら通りかかった。
「あの人に聞きましょう!」
善は急げで、すぐに空中からその人物の元へと、近付いた。
「あの、すみません」
声を掛けたが、振り向かない。
雨音で聞こえないのだろうか。
「あのー!!」
大きな声で言ったが気づかない。
「ちょっと、聞いてるのですか!」
「ッ、何だよ、さっきから鬱陶しい鳥だなっ!あっちいけよ」
傘を乱暴に振り回し、追い払った。
「な、何なのですか・・・。長に対して失敬な・・・」
少し気分が悪くなった。
ヒトはかばんの様なヤツも居れば、こういう乱暴なヤツもいるのか。
初めて知った。
「うう、雨で濡れるのです・・・、どっかで雨宿りしなければ」
雨宿りを出来る場所を探した。
暫く空中を飛んでいると、大きな木がある公園が見えて来た。
降りて見ると、屋根が付いたベンチがあった。
身体を振るい、雨粒を落とす。
力なくベンチに座り、溜め息を吐いた。
「本当に最悪なのです...。
助手とは喧嘩するし、変な所に飛ばされるし、雨に濡れるし・・・」
空腹感も少し感じて来た。
手ぶらの状態で飛び出して来たので、何も持っていない。
濡れた体がすぐに乾くわけなく、肌寒さも感じる。
(鳥なのに・・・、こんな雨ごときで・・・)
訳のわからぬ地に、一人置き去りにされ、帰る術もわからない。
(あんなことで、喧嘩しなければ・・・)
今更後悔しても遅い。
いつもは偉そうに威張ってた自分だが、
どうしようもない。複雑な気持ちになり、顔を俯けた。
(これから・・・、どうすれば・・・)
「えっ・・・」
思い悩んでいた時だった。
顔を前にあげると、傘を差し、
白いシャツを着て、鞄を持った黒いズボンを身にまとった
少年がこちらを、まるで怪異を見る様に唖然として立っていた。
沈黙が広がった。何を言っていいか、2人ともわからない。
「・・・ハカセ?」
「・・・!!わ、私を知っているのですか!?」
「ホ、ホンモノ...!?」
「は...、確かに、ホンモノです・・・」
「コスじゃなくて・・・、ガチのフレンズ・・・?」
「フ、フレンズですよ・・・」
お互いに息の詰まったような会話をした。
「あっ...、えっと...、よければ、俺の家来る?」
(いきなり家に、さ、誘うのですか・・・!?
な、何が目的なのです・・・?
私の事を知っていて、気安く話しかけるヒトなんて...
まさか、何かよからぬことを・・・)
(いや・・・、いきなり家誘うのはマズかったかな・・・
だってさ、寒そうだねとか、お腹減ってるんじゃないなんて
言ったら、絶対“そんなことないのです”っていうじゃん・・・
ツンデレキャラの対応はニガテなんだよなあ...)
無駄な様な心理戦を行っていた。
「カレー・・・、あるけど・・・」
(ヒトの世界のカレーですか・・・
ていうかなんで、好物も知ってるんですかね・・・
で、でも、私の事をこんなに知っているなら...
逆に話を信じてもらえるかもしれませんね...
それにこの人以外に、話せる人がいないかもしれませんしね...)
「じゃ、じゃあ...、あの...、い、行きますよ...」
「じゃ、じゃあ...、一緒に...、ち、近くだからさ...」
(あっ、以外とあっさりだな・・・、き、緊張するな・・・)
博士と少年は同じ傘に入り、家へと向かった。
少年の家はマンションだった。
初めて見るものばかりで、博士は色々尋ねたかがったが、
独特の雰囲気に飲まれ、言葉が出なかった。
そんな感じのままエレベーターに乗り込んだ。
「まだ名前言ってなかったね。
オレ、川宮結人(かわみや ゆいと)。中1...、ってもわからないか」
博士は内心知ってると言って意地を張りたかったが、
とてもそう言える雰囲気じゃなかった。
7階にたどり着き、彼の部屋へと入った。
「えっと、ちょっと待ってて」
玄関で待たされた。
しばらくすると、大きめのタオルを持って戻って来た。
「髪濡れちゃってるから...、拭きなよ」
そう言って差し出した。
黙って、それを受け取った。
(お、長であり賢い私が良い待遇を受けてるだけなのです...
れ、礼なんて...)
「とりあえずさ...、ソファーでも座って待っててよ。
ソレは適当に置いといていいから」
「そ、そうですか...」
灰色の大き目のソファに腰かけた。
結人は、台所の方で色々忙しなく動き始めた。
周りに目を向けると、ここも、真新しい物で一杯だった。
ずっと座っていても良かったが、彼のやってることが気になった。
キッチンに行くと、鍋に水を入れていた。
「何をしてるのですか・・・?」
「ん・・・、お湯を沸かすんだよ」
お湯と言えば、かばんが野菜を茹でる時に使っていましたが...
「火は使わないのですか?」
「ああ、ここはIHって言って電気の力で物を温める事ができるんだよ。
フレンズの世界にもこれがあれば、何時でも簡単に料理食べれるのにね」
他人事の様に言った。
「野菜とかも、切らないんですか・・・?」
そう尋ねると銀色のパックを見せつけた。
「この中に、野菜とか、ルーとかいろいろ入ってるんだよ。
お湯の中入れるだけでカレーが作れるんだよ。レトルトっていうんだけど」
「便利なのですね・・・」
数分後、カレーが出来上がった。
結人も一緒に食べる様だった。
かばんの作るカレーより、少し辛さはあったが、
空腹の自分にとっては、そんなのどうでもよかった。
(お腹空いてたのかな・・・、にしても食べっぷりが凄いなぁ・・・)
感心して、その様子を見た。
「満足したかな...?」
「あっ...、ええ...、まぁ...」
結人は息を吐き、遠まわし的に本題への切り口を開いた。
「...さっき言ったかもしれないけど、ホンモノの博士なんだね」
「どういう意味なのですか?」
結人が立ち上がり、充電中のスマートフォンを持ち、
博士の前に画面を提示させた。
動画だった。
その動画を見た瞬間、驚きを禁じ得なかった。
「えっ...、これは...、わ、私!?」
思わず声を上げてしまった。
「そうだよ。こんな事自分で言うのも馬鹿馬鹿しいけど、
君はアニメのキャラクターなんだ。
つまり、この世界に“いない存在”なんだよ」
「ええええっ!?」
そう聞かされ、更に衝撃を受けた。
「年に一度、ジャパリパークに流星が降るとき、
流れ星が降る時と同じタイミングで願い事をすると、願いが叶う。
そんな噂話を信じるフレンズはいたけど、みんな
仲良くなれますように、とか、平和でいられますように。
だけど、彼女だけは違った。“もう助手とは会いたくない”
私にとっては、良いお願いだったよ。フフフッ...
彼女をちょっと弄びましょうか・・・」
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