『僕は、とあるこの星で、ヒーローになった。』
@yun2g01
第1話 完結
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「この世知辛い世の中で、君は何を思う?」
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正月。と言えば元旦の1月1日。
これは、日本の風習である事を知る人はどれぐらいおられるだろうか?
古から中国では旧暦の元日、2月が正月である。
御節は日本のものであるけども、彼の国では、手作りの餃子を皆でこさえていわうらしい。
立春も過ぎて、やはり古の日本では梅は咲いたか、桜は未だかいな~♪
何て歌もあるんだか?ないんだか?
満開くに近い桜の散り行く姿は実に美しい。
それも、若葉に変わって花は咲き誇り、草木が青々と茂る季節を迎える。
入学シーズンというものがあれば、五月病なるものも存在をするらしい。
春が過ぎれば初夏、夏の本番。楽しみが多い。はずである。
僕が、それを楽しむ余裕が出てきたのは、それなりの年を取ってからである。
それから20才も過ぎて、僕は良い年のおっさんになった。
とある桜の舞う季節、窓を開ける。
遠めにも風が吹けば花びらが舞い散るのが見える。
春なんだなぁ、、、。
当たり前の事を考えてた。
1枚の桜の花びらが窓から入って来た。
綺麗だ。つかめるかな?手を伸ばした瞬間、それは起きた。
ピンクの花びらがうっすらと軽く光って、形状を変えて大きくなる。
僕が、唖然とする、その間もなく。
それは、「ポンッ!」って音を立てて、女の子の姿へ、変貌を遂げた。
驚いたのなんのって!
「初めまして。桜の妖精です。名前は、未だありません。」
君は?って、聞こうとする前に自己紹介をされる。
「こちらの世界での、メディアを探してます。手伝っては貰えませんでしょうか?」
「メディア?媒体の事ですか?」
「左様です。女の子のお知り合いは?」
「、、、居ません。」
「でしたか、では一緒に探しましょう。」
「それ以前に、どうして?僕の前に?目的は何なの?」
疑問、質問だらけだ。
「とある惑星が危機なのです。私は、相性のしっかりした、こちらの世界でのメディアと融合をしないと力を発揮できないのです。」
彼女は、続ける。
「先程、貴方が、花びらを掴もうとした事ですら大変な事でした。何故ならば、私の住まう惑星はこの地球の衛星程度のサイズしかありません。御分かりいだけましたか?」
僕は、直ぐに理解した。
要は、衛星、月程度の惑星の住人とあらば、地球の1/6程度の重力である。
ならば、必要エネルギーも体力も同等ということになる。
「とある女性ならば、当たりを付けときましたよ。参りましょう!」
「って、どこに?」
「昔の、高校、ですよ。」
花びら宛らにフワフワと舞う妖精は、来た窓から下りる。
他の住人には見えないらしい。
僕も慌てて後を追う。
途中で気づいて、彼女も、電車に乗らねばならないので、僕の胸ポケットに入ってもらった。体の大きさぐらいは容易に変えられるらしい。
高校へ着いたら。ポッケから妖精は飛び出して校内へ飛ぶ。
向かった先は僕の隣のクラス。
もしやとは思ったけども、例の彼女だった。
今日は、ボーっと外を眺めてるだけだった。
それだけいつもは眠ってるだけということでもあるのだが。
こちらに気づいた。妖精も見えるらしい。
「こんにちは。」
「こんにちは。どちら様?」
「桜の妖精です。今春で生まれたばかりです。私の、メディアになってもらえませんか?」
「メディア???」
「媒体の事だよ。」
「どうして?」
「私の住まう惑星の危機だって、こちらの男性に先程お伝えしました。」
「眠くない時なら良いよ。力になれるなら。」
「お二方供理解が早くて助かります。貴女へ、試しに入ってみますね。」
「、、、こわくない?」
「大丈夫です。寧ろ、楽になられるらしいです。」
「じゃあ、お願いします。」
了承を得た桜の妖精は、彼女へ両手を出す様に指示をして、すればその上に浮く。
そうして光になって彼女たるメディアと融合をした。
「本当に入っちゃった。」
見てくれは、桜の妖精の衣装と殆ど全く同じだ。
薄いピンクのフレアな上下で可愛らしい。
「どんな感じ?」
「、、、軽い。、、、体が。」
「内部からですが、話も出来ますよ。余り時間がありません。私の惑星へ、移動をお願いします。」
妖精は、メディアの体内からでも、校庭へ随分大きな球体を作り上げた。
「そこの男性にも少なからず妖精の力を与えました。行ってください。」
気付けば、高2の姿だ。
意識を球体へ向ければ、妖精と同じ様にフワリと体が浮いて開いてる窓から、直ぐにでも球体の内部へ入る。
「時間差の魔法も使います。半日以内に彼の家へ戻れる様、設定をしました。では、参りましょう。」
一瞬で校庭から巨大な球体は消えた。
瞬き数回程度の間、僕達は、別世界へ居た。
「着きましたよ。こちらです。」
球体からすんなり外へ出る。
やっぱりだ、重力が1/6、或いは、それよりも軽く感じるぐらいだ。
ふと見ると、黒尽くめの漢が遠めに見える。
「大体は、理解した。めぐみ。あいつにそこの小石を投げてくれないか?」
「ジョン君。ふつーは届かない距離だよ?やってみるけど。」
小石を拾って軽く投げる。
それは、銃弾並みの猛スピードで漢の横を飛んでく。
「凄い、、、。」
「誰だ?!貴様等!」
「桜の妖精よ!やっと、メディアを見つけて融合が叶ったの!」
「ちっ!厄介なことになったぜ。これから強盗を働こうって時に。」
「ここは、無法地帯なのか?堂々と強盗とか言ってるな!お前は、アホなのか?!」
「アホで結構だ。それでも好き勝手にやらせて貰えたからな。その妖精が現われるまではな!」
「警察でも手が出せない悪党って訳か。目的は、金品だけか?」
「ガキに答える必要はあるのか?後は、薬、女だな。」
「、、、ゲスが。なぁ?どう料理する?」
「、、、、、、直接手を下すのも汚らわしい。」
「なるほどね。今は、そういう感覚か。じゃあ、俺が行くしかないな。」
「てめぇら、さっきから何を?!!!」
一瞬の地面の蹴りだけで間合いに入って、ボディに空圧でのパンチを試みる。
そいつは、派手に吹っ飛ぶ。
「何だ?!このガキ供は?!!!」
「地球から来た。サクラちゃんの頼みでね。俺が、悪党の相手になってやる。」
「そいつは分が悪すぎる。アニキに報告をしないと。」
「、、、させない!」
彼女がやはり間合いを詰めてそれの両手を片手で掴み上げる。
「やめろ!分かった!分かったから!離してくれ!全部しゃべるから!」
「アジトはどこ?」
から始まって、所持をしてた大麻(麻薬)その薬で未成年で拘束を強いられた売春婦達。あっと言う間に助け出しだ。
彼女達は、家族の元へ帰還が叶って涙ながらに何度も頭を下げる。
悪党は、強大な力のガキが惑星外からやってきたってに俄かに信じがたい事ばかり喋るもんだから、全員、警察の病院送り。
当然の事をしたまでなのでお礼は結構です。
等と言いながらも国を上げての御礼を受ける。
パレードに乗せられて気分が良いに決まってる。
後の、国のシェフが腕を振るっての、ご馳走が振舞われる。
のだが、ボリュームはあるのだが、カロリーが少なく感じて二人して何度もお代わりをした。
良く食べられますね。って、返って喜ばれるのだが、長居は難しいなって考えてた。
暫く、黙ってた妖精がしゃべる。
「あれは、情弱な悪党ですよ。本当の敵は別に居るんですよ。」
だとしても、この惑星内ならば、無敵だって、この時の僕は思ってた。
数日の内にメディアが懸命に探してくれたお陰で本当の敵とやらはあっさり見つかった。
それは、この国の海辺に立って地平線を見てた。
「お気をつけください。」
サクラちゃんに言われても未だ余裕をぶっこいてた。
彼女は、何か違和感があるって言う。
どういう意味なのだろう?
「初めまして。こんにちは。」
そいつは、普通に普通の挨拶を掛ける。
「初めまして。こんにちは。あの、、、」
拍子抜けして同じに返してしまう。
「地球。からですよね?」
嫌な予感がする。
彼は、ふふふって笑って。
「僕も同じですよ。長らく地球で暮らしてました。」
やっぱりだ。フェアな戦いを強いられるな。
ここにきても未だ、僕の考えは甘かったらしい。
「僕の生い立ちを聞いて戴けますか?」
「、、、どうぞ。」
「僕の生まれは、この星のはずです。確証が持てないのは、僕は両親共に、父の仕事で偵察もあって地球へ送り込まれました。暫くは両親の愛情を受けてのびのびと楽しい幼少の時代を送っておりました。ですが、しかし、偵察が終わって帰還をして間もなく、両親が他界をしました。どちらが先かも分かりませんけどもお人よしで気の弱かった二人でしたので後追いも考えられます。唯一の救いは、この国の病院で両親の最後を見取れたことだけです。僕は、親の後を継いで地球への偵察を願い出て再度、向いました。そして、何とか食いつなぎながら体も鍛えました。目的は、この星を亡き物にする為です。それが叶えば地球で住まう事も出来ます。御分かり戴けましたか?」
御分かりは戴け様って。
「この国の住人全員が悪い訳ではないでしょう?」
「分かってます。だからついてこれる人間だけ地球へ連れて行きます。」
「、、、残りは?」
「諦めて戴きます。」
「反対意見は?」
「僕の、目的の邪魔者として排除させて戴きます。」
僕は、唖然とした。彼は、心が病んでしまってる。直ぐ気付いた。
「これが、この惑星の危機の本体です。」
漸く、理解した。
下手な動きをすれば、この星を破壊することもやぶさかでないという考え。
地球で同じ、或いはそれ以上の期間を過ごしたとあれば、力は同等或いは、それ以上。
ややこしいことになってる。
「心理戦だよ。」
僕も、同意見だ。
「そこの妖精の目的は知ってますよ。惑星の温存。ならば、完全に僕の敵ですね。」
「、、、サクラちゃんが怯えてる。」
「だろうね。」
「メディアをやめて戴けませんか?そこの男性の協力も。」
「その相談は、お受け出来ません。」
「俺は、ジョンだ。一人の被害者も出すつもりはない。」
「僕は、サードにしときましょう。」
名乗れば、彼は、冷たい視線に変わる。
「ダーク・ローズ!」
「メディア様!さっさと排除をしましょう。時間の無駄ですよ。」
サードのサイドの妖精か。
「貴方がサードさんに吹き込んだのね!」
「何の事かな?」
「とぼけないで!サードさん!騙されないで、貴方の目的は多くの犠牲者を出すわ!」
「ダークは、僕の、唯一の友達だよ。ジョン君。君から、行くよ。」
間合いを詰めて左パンチ、右の蹴りを空圧で。
僕は、受ける。同時に、一気に決めるべく、右パンチ、反動で左の蹴り。
彼は、後方へ飛ぶ。
「気付かないの?!貴方の大事な人がいたし、いる様に、この星の人たちも同じなのよ?!」
彼は、たじろいだ。
サクラちゃんが叫ぶ。
「もう時間がないのよ!地球時間では半日から一日程度が限界なの!全員、移動して!出来るでしょう?」
「僕は、未だ、目的を、、、。」
「俺は、こんな星はあきあきしてたんだよ!」
「サードは、病気みたいなもんだ!俺が病院連れてって治るまで看てってやる!」
「だったらなおさら来なさいよ!」
ピシャリと諭されて誰も何も言えなくなる。
サクラちゃんが再び球体を作り上げる。
めぐみが乗り込む、虚無の表情に満ちた彼を、ジョンがぐいぐい引っ張って乗せる。
来たときと同じ様に数回の瞬き程度で校庭へ着く。
夕焼けで染まるグラウンド。
「僕は、何を、間違ってたのか。もう少し、ここで頑張れば、生きていけるかもしれない。」
「そうだよ。友達にもなれるよな。」
「みんなで頑張ろうね。」
「俺、ここで、悪い様にされない?」
「そう思うなら。サクラちゃんの言うことを聞いて、悪いことかんがえたり、言ったり、ましてやしちゃだめだよ。」
僕は、ふと我に返った。
あの惑星での事は、僕が憧れてた時期もあったヒーローに、好きな女の子の前で一時でもなれた経験だったのだなって、今更ながら、嬉しくなったのだった。
(完)
『僕は、とあるこの星で、ヒーローになった。』 @yun2g01
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