愛してるって言ってもいいですか?

ノン❄

第1話

新緑が眩しい五月晴れの日

大きく息を吸い込んで、伸びをする


ギュッと瞑った目を開くと

太陽が瞳の奥がしみる



「柚ー」


「はぁーい、今行く 」



幸せって、十人十色

何が一番だなんて決められない

だから、私はきっと……幸せなの


自分にそう言い聞かせて、3年の時が流れてた


いつも、背中をそっと支えてくれる優しい彼

きっと、私はこの人とずっと生きていくのかなって思ってた



「ねぇ、、今日はどこ行くの?」


「さぁねぇ~」


「えー、またぁ?

いっつも内緒だよね」


「ハハ、柚のびっくりした顔見るのが面白いの」


「なにぃー、それ、子供扱いして」


「あれ?拗ねてんの?

ゆーずーきーちゃん」


「だから、バカにっ」


チュッ


「隙あり」


「もう~」




彼女と出会ったのもちょうどこんな春の日だった


同僚と飲んだ帰り、タクシーがつかまらず、仕方なく歩き始めた。

1人でじっと東京タワーを見上げる横顔が涙で濡れていた


あまりにも切なくて、壊れそうで、

でも、潤んだ瞳が月明かりに照らされ、とても綺麗だった


そんな柚希に俺は一目惚れしたんだ




「東京タワー見るの好き?」


「へ?」


泣き顔が恥ずかしいのか、俯いてしまった


「あっ、ごめんね。俺、ここで東京タワー見るの好きなんだ」


「…じゃあ私は」


「待ってよ。一緒に見ようよ」


「え?」


「ねっ」


「は、はい」



黙ったまま、少し間をあけて並んで見つめてた


今では明け方まで点灯されるタワーもあの頃は12時までだった


「消えちゃったね」


「はい」


「帰ろっか」


「あのーありがとうございます」


「え?俺は何も」


「うううん、一緒にいてくれて、元気出ました」


「そっか、良かった…じゃあ、また」


「また?」


「また、一緒に見ようよ」


「…はい」



ここは俺と柚希の思い出の場所

そうなんだよな?柚?

あの時泣いてた意味は結局今も聞けないまま。

でも、いいんだ。そうやって隣で笑ってる柚希がいれば…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る