第5話
雨上がりの朝は空気が澄んで陽の光が眩しい
私達はいつものように並んで朝食を食べ、笑い合った
変わらない時間がただ、ゆっくりと流れて
時折、触れるあなたの大きな手に心が震えた
「真優、俺、そろそろ行くな」
「うん、下まで行くよ」
玄関でサヨナラするのが淋しくて彼の手を握った
「じゃあな」
「うん」
「元気でな」
「理空もね」
「頑張れよ」
「理空こそ」
泣くなよって言うかのように瞼に触れた彼の乾いた唇
その温もりが離れた瞬間、大きく吹き荒れた春の風
泣かないで見送ろうと必死に唇を噛みしめてた私に...背を向けたあなた
少しずつ小さくなっていく背中を見つめてると、急に何か思い付いたように振り返り走ってくる彼
「ハッハッ、真優、これ、やるよ」
渡された物は理空がいつも使っていたヘッドホンと音楽player
私の耳にそっとつけてくれながら、彼は優しく言った
「雷鳴ったら、これしろ」
頭にポンと手を置くとニコリと笑ってすぐにまた、背を向けた
ヘッドホンから流れる曲
いつも彼の部屋で朝を迎えた時に聞いていた2人のお気に入りの曲
理空、最後にこんなことしないでよ
涙が後から後から溢れてくる
遠くなっていくあなたの癖のある走り方が滲んで見えない
たくさんの愛をありがとう
私達がこの先交わる場所が
輝ける場所でありますように
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