正々堂々と
カゲトモ
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「子供の頃ってさ」
「はい」
「選手宣誓のとき、選手なのになんで先生? って思わなかった?」
「急にどうしたんですか?」
なんで急に選手宣誓の話?
「確かに、小学生の頃は“センセイ”の意味が分からなかったので、そんなことも思っていましたけれど」
「やっぱりそうだよね、みんなやっぱりそう思うよね」
少し赤い顔をした太田さんがグラスを煽って言う。
「俺もそう思っていたんだよねぇ、割と大きくなるまで」
「中学生まで、とかですか?」
「いや、高校まで意味分からないまま聞いていたと思うよ。本当バカでしょ」
あはは、まぁ一つや二つそんなこともあるってもんだよな。俺は中学のときにはちゃんと知っていたけど。ってあんま変わらないか。
「まぁそんなバカでも店は経営できるんだから世の中分かんないよね」
太田さんは商店街の中で整骨院を営んでいるベテランの整体師だ。いつもよく流行っているし、俺もたまにお世話になる。絶妙な力加減がイタ気持ちよくて、帰り道では飛べるほど身体が軽くなるくらいだ。
「いや昨日ね、実は昨日、息子の小学校の運動会だったんだよ」
「え、運動会ですか? こんな季節に?」
なるほど。太田さんの顔が赤いのはアルコールのせいかと思ったけど、日焼けなら納得。昨日は夏のように暑かったからきっと焼けてしまったに違いない。痛そう。
「そうなんだよ、なんか変な感じするよね」
「そうですよね。運動会と言えば秋のイメージが強いので。私が学生の頃そうでしたから」
運動会のお弁当といえば必ず栗ご飯と決まっていて毎年それを楽しみにしていた。高校生になって親が運動会を見に来なくなっても、ちゃんと三年間栗ご飯を作ってくれていた母親には感謝すらある。あ、栗ご飯食べたい。
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