第2話 おにぎりへのオード

おまえは古来から数多の

手によって握られ

数多の人々の空腹を癒してきた

遥か大陸から伝来して

長きにわたりこの国で愛されてきた

米という穀物が辿り着いた

俵や三角、丸、四角の

妙なる造形よ


炊き上がったばかりのかがやく白さと

角のないやわらかさ

米のひと粒ひと粒よ

ばらばらなお前たちが

人の手を介して結び付けられる様は

人の心の絆が結ばれる象徴のようだ

そしてその身を包む海苔

母なる海で生まれたそれが

地の恵みを包み込む

それは長い歴史の果ての

奇跡的な邂逅のようでもある

さらにお前たちは時にその身のうちに

さまざまな者たちを

受け入れる度量を持っている

鮭に塩辛、たら子におかか

梅干し、ツナマヨ、豚角煮

そんなお前を食べるたびに思うのだ

我々人は何故、少しの違いから

相争うのか

互いに握ったおにぎりを

食べあってみるがいい

それが何よりの信用の証ではないのか

そうして手を握りあえばいい

ともに食する時間が人と人を結ぶ

だからお前はお結びともよばれているのだ

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