第5話.親友への信念と悪友の狂気_後編
森の奥までやってきて、秋也を探した。
「おーい!秋也ー!いないのかー!」
大きな声で叫んでみるが、反応が無い。
あいついったいどれだけ奥までいったんだ。
混沌は森の奥に行くにつれて濃くなってきている。
霧というより暗闇に近い。
初めて見る俺でさえ、ここまで濃いと感じるのはさすがにやばそうだ。
急いで秋也を探さないと本当に恐ろしい魔族が現れるかもしれない。
もしそうなったら、秋也が危ない!
それから2時間くらい探したが、秋也の姿は一向に見当たらない。
というか、ここはどこだ?
なんだかさっきもここを通った気がする。
もしかして、道に迷ったのか?
まずい、かなりまずい。
どうしよう、とにかく今は秋也を探そう。
そんなことを考えながら歩いていると、
「■■、■■■■■----!!」
なんだ今の声は!?
もしかして、今のが魔物の声なのか!
だとしたら、今の声のところにあいつもいるかもしれない。
俺は声のするほうへ、急いだ。
声の元にたどり着くと、そこには、巨大な蟲が秋也をぐるりと取り囲んでいた。
その蟲の見た目は、百足そのものだった。
幸い百足は俺には気づいていないようで、俺は奴の後ろに回り込んだ。
何か武器になるようなものはないか探したが、
近くには折れた木の枝しか見つからない。
「こんなのでもないよりましか」
その枝を手に取り、その百足に思い切り振りおろした。
バキッ
何て硬さだ、木の枝なんかじゃまったく歯が立たない。
まるで体全体が鋼鉄で出来ているようだ。
「■■■■■---!!!」
百足の巨大な体が動く。
まずい気づかれたっ!
いや、今なら秋也はあいつだけは逃げられる。
「おいっ、秋也!動けるか?
今奴は俺に注意が向いている。今のうちにお前は逃げろっ!」
「何言ってんだ!っていうかお前誰なんだよ!この程度のやつ俺一人でやれるんだ。
赤の他人が首突っ込んでんじゃねーよっ!」
「俺は赤の他人なんかじゃねーよ!」
百足は尾を振り上げ、俺の頭の上へと振り下ろす。
何とか右へ避けたが、だが、完全には避けきれず左手をやられた。
「じゃあお前はなんなんだよ!俺はお前なんて知らねーよ!」
「それはお前が周りの人のことを見てないだけじゃねーか!
俺はお前同じなんだよ!」
「何言ってんだよ!余計なお世話だつってんだよ!」
「■■■■---!!■■■------!!!!!」
奴は怒り狂ったように口から何か液体を飛ばしてきた。
何とか避けその液体がとんだ方を見ると、液体が付いた木がみるみると溶けてゆく。
こんな攻撃、少しでも食らえば、一瞬でお陀仏だ。
「お前、まだ両親が魔族に殺されたことで立ち直れてねんだろうが!
そんなんで妹を守っていけると思ってんのかよ!
自分が情けないと思わないのかよ!」
「なんでお前がそのことを知ってんだよ!お前に俺たち兄妹の何がわかんだよ!
親を魔族なんかに殺される気持ちなんてお前なんかにわかるかよ」
「わからないはずねーだろ!俺とお前は同じなんだ。
俺たちも親を魔族に殺されて、この孤児院にやってきたんだ!」
「...何...だと...嘘...だろ...」
秋也は俺が言ったことが信じられないらしく、膝から崩れ落ちた。
「俺は妹の為に、妹のおかげで立ち直れたんだ!
お前も兄貴なら早く立ち直って妹を守れよ!」
そう言うと、俺は秋也から奴を遠ざけるため森の奥へと進んだ。
ハーハー
走りながら後ろを確認する。
良し、百足はしっかりと俺についてきている。
このまま完全に秋也から引き離すまでこのまま進もう。
1時間ほど走ると、目の前に小屋が見えてきた。
俺は急いで小屋の中に隠れた。
小屋の中を見回してみるが、武器にできそうな物は鉄の杭やロープ、大鎚くらいだ。
いや、待てよこれがあれば、もしかしたら奴を倒せないまでも
動きを封じることくらいはできるかもしれない。
外を確認すると、奴は俺を探しているらしく、大暴れしていた。
気付かれないように小屋からロープを持ち出し、奴から少し離れた所にある
一際大きな木にロープを結び、そのまま周りの木にもロープを結びつけ、
罠を作った。
そして、近くにあった石を奴に投げつけ、
「おーい蟲野郎!俺はここにいるぞ!これるもんなら来てみろ!」
「■■■!!■■■■■■■------!!!」
バキバキバキッ
周りの木を薙ぎ払いながら、俺めがけて勢いよく突進してきた。
ロープを結びつけた木もなぎ倒されてしまったが、計画通りだ。
薙ぎ払われた木はロープと共に奴の体に巻き付き、奴は身動きが取れなくなった。
「■■■■■■---!!!!」
俺は急いで小屋に戻り、杭と大鎚を持ち出し、奴のもとに戻った。
「■■■■!!■■■■■!!」
奴は必死に罠から抜け出そうともがいていたが、
しばらくは抜け出せそうに無かった。
奴の尾の方に回り込んだ。
奴の体は鋼鉄で守られているが、体の節目はこの鉄の杭なら貫けるはずだ。
俺は精一杯の力を込めて奴の体に杭を突き刺した。
「■■-------!!!!!!」
杭に大鎚を振り下ろす。
ガンッ
「■■■■-------!!!!!!」
ガンッ
「■■■■■■-------!!!!!!」
ガンッ
いける、いけるぞ!これなら奴を倒すこともできるかもしれない!
そう思った瞬間、奴は溶解液を俺めがけて飛ばしてきた。
まずいっ、避けられない。
バシャッ
ハッ
なんともない、どういうことだ?
「ったく、お前一人で大丈夫なんじゃなかったのかよ。かっこわりーな」
「お、お前なんで来てんだよ!逃げろって言ったじゃねーか!」
「うるせーよ!お前の命令なんて聞く必要ねーよ。」
どおやら立ち直れたみたいだ。
「ふっ、素直じゃねーな。ありがとな!」
「俺は俺のやりたいことをやっただけだ。で、これからどうするんだ?」
「このまま放っておいたら危険だ。こいつは俺たちで倒そう」
「奴の弱点は目だ、目さえ攻撃できれば奴は死ぬ。」
「でもどうやって目なんて狙うんだ?」
「さっきお前がやってた鉄の杭なら目も貫ける。このまま続けよう」
「そうなのか、幸い杭はまだ何本もあった。
このまま奴を地面に縫い付けていけばいけるかもしれない」
「じゃあ、行くか」
「おう、こいつを倒したら、次はお前お前との決着だ。覚悟しとけ」
「望むところだ」
そして俺たちは行動を開始した。
俺が杭を突き刺し、秋也が大鎚で地面に縫い付ける、
俺たちは、自分たちでも驚くほど息の合う連携をとることができた。
そして奴の目に手が届くまできた。
「■■■■■-----■■■■■!!!!」
奴はあばれていたが、地面に縫い付けられているので動けない。
そして、俺たちは同時に奴の両目を貫いた。
「■■■■■■-----------!!」
奴は断末魔を上げて息絶えた。
奴の体は混沌に溶けるように跡形もなく消えた。
何とか強敵を倒し、疲れ切った俺と秋也は、後日決着をつけることにし、
孤児院に戻った。
森を抜けるのに時間がかかり、戻った頃には月が頭上まで登っていた。
戻った俺たちは、依里子さんと妹たちにたっぷりと怒られた後、
疲れ果て泥のように眠った。
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