第4話.親友への信念と悪友の狂気_前編
2人がやって来て1週間が経ったある日にちょっとした事件起きた。
「真人お兄ちゃん!きて!秋也お兄ちゃんがいきなり暴れだしたの!
秋也お兄ちゃんを止めて!」
その子に理由を聞くと俺たちが来る前から孤児院にいる子たちが、
秋也を怒らせてしまったらしい。
なんでも、ここに来た訳を聞いたらしい。
秋也はまだ両親の死を受け入れられていないみたいなので、
こればかりは仕方がない。
俺は天音とともに秋也のもとに向うことにした。
秋也のもとに到着し、俺が見たものは、
泣いている子供たちとそれをなだめている仁さんの姿だった。
仁さんに秋也がどこに行ったのかと聞いてみたが、
仁さんが来たときにはもう姿はなかったそうだ。
俺たちは、天音に子供たちのことを任せ、秋也を探すことにした。
俺は孤児院の外、そして仁さんは孤児院の中をそれぞれ探すことにした。
秋也はいったい何処に行ったんだ?考えろ、考えるんだ。
秋也たちはまだ孤児院に来て日が浅い。
だが、あいつは今一人になりたいはずだ。
屋上か?いや、屋上には基本的に鍵がかかっている。
鍵を持っているのは依里子さんが今の秋也に貸すとは思えない。
きっと依里子さんなら、何があったのか理由を聞こうとするはずだ。
なら自分の部屋か?いやこれも違う、なぜなら部屋には、おそらく
奏恵さんがいるはずだ。兄として妹に心配させるようなことはしないはずだ。
なら何処だ?他に1人になれそうな場所は俺には思いつかない。
もしあるとすれば、孤児院の外にある森の中しかない。
俺は、急いで森に入った。
俺は焦っていた。なぜならつい先日、仁さんにこんな話を聞いていたかだ。
「真人、今良いか?」
「はい、大丈夫ですけど。なんですか?」
「そういえば、お前たちに言ってないことがあってな」
「言ってない事?」
「ああ、お前孤児院から少し行ったところに森があるのは知ってるか?」
「森?あぁ、それって、朝でもなんだか薄暗くて不気味なあの森のことですか?」
「そうだ、その森だ。」
「あの森には何かあるんですか?」
「実はな、昔はあんな感じじゃなかったんだが、最近になって、
あの森には混沌が発生するようになってしまったみたいなんだ」
「あの、すこし良いですか?」
「どうした」
「あの、混沌ってなんですか?」
「何って、混沌のことを知らないのか?」
「はい、正直言って今まで聞いたことありませんでした」
「そうなのか、お前たちの住んでいたところはかなり良い所だったみたいだな」
「どういうことですか?」
「何て言えばいいか。まあ、簡単に言うと混沌っていうのは自然現象なんだが、
不幸な事故が遭った場所があるとするだろ。そういうとこには死んだ人間の
未練や憎悪っていう、陰の気が漂ってる。そういうとこに混沌は発生するんだ。
逆に、人間が幸福だと感じているとこには陽の気が漂っているから、
混沌は発生することはないんだ。混沌が発生するとその場所に赤黒い霧の様な
ものが出るんだ。不気っていうのは、おそらくお前もそれを見たんだろう。」
「てことは、その森で誰か不幸な事件で亡くなった人がいるってことですか?」
「いや、俺がこの孤児院にいる間にそんな事件は聞いたことがない」
「ならどうして、混沌が発生しているんですか。おかしいじゃないですか」
「でも本当なんだ、実際、銅鉄さんが先頭に立って森で死んでいる人がいないか
捜索したみたいなんだが、何も見つからなかったらしい。
一応、今でも銅鉄さんが街に戻ったときに、捜索はしてくれてるみたいなんだが」
「それはわかりました。でもその混沌っていうのは、何か危険なんですか?
今の話だけなら、そこまで気にしないでもいいような気がするんですけど」
「えっとな、実は、混沌が発生するところには、魔族が現れるといわれているんだ。」
「えっ..」
嘘だろ、なんでまた魔族が出てくるんだ。
「真人、大丈夫か?」
「あっ、はい。大丈夫です。続けてください。」
「ああ、でな、なんで魔族が現れるかっていうと、なんでも混沌は、魔族にとって
かなり重要なものらしい。混沌が薄いとこなら俺達でも倒せるくらいの奴しか
現れないらしいんだが、混沌が濃くなるほど強大で凶悪な奴が現れるらしい。
それでその森には、初めは混沌が発生したといってもかなり薄かったんだが、
最近、少しずつ濃くなってきているらしいんだ。だから、今は大人たちが森に
子供が入らないようにしているんだ。
混沌が発生する前まで、あの森は俺たちの遊び場だった。
でも、悔しいけどこればかりは仕方ない。だからあの森にはみんな近づかないんだ。
だから、お前らも近づかないように気をつけろよ。」
この話を聞いたとき、もしかしたらどこかで秋也も聞いていたかもしれない。
そう思うと焦らずはいられなかった。秋也に何もなくいてくれ、
お前がいなくなればだれが奏恵さんを守るんだよっ!
到着すると、森の周りをおそらく村の大人たち数人が見回りをしていた。
どうすれば、いいか考えていると、仁さんが孤児院の中を探し終えてやってきた。
やはり仁さんも俺と同じように考えたらしい。
どうやって森に入るか相談すると、いきなり仁さんが、大人たちの前に飛び出て、
騒ぎ始めた。
いきなりなんだと大人たちは仁さんももとに集まり、
今のうちだ、いけっ!
と合図を送ってきた。
俺は済みませんと頭を下げ、森への潜入に成功した。
俺の姿が見えなくなるまで、仁さんはずっと大人たちの注意をそらしてくれていた。
俺は仁さんに感謝し、森の奥へと進んだ。
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