とある画家の話。
隣の佐藤。
第1話
「私はね、貴方に幸せになって欲しいの。」
マリーは今にも死にそうな掠れた声で私に話し掛けた。
「昨晩、私貴方に言いましたよね。『やり残した事は無い。』って。」
彼女が今にも死にそうで、けれども綺麗で、
「けれど、私、死ぬのが怖いです。また、またあの場所に3人で行きたいです。」
彼女は笑っていた。
目を閉じ、笑っていた。
「マリー、起きてくれ。まだ寝ているだけなんだろう?」
彼女に何を言おうと、目を閉じたまま、微笑んだまま何も言わない。
「なぁ、また2人でアイリスの絵を描こう。あの場所で写真を撮ろう。」
彼女は死んでいるように見えなかった。綺麗で、まさに生きている死体のようだった。
「戻って来てくれ…。私はマリーが居ないと幸せじゃないんだ…。3人で一緒にいなきゃ私は幸せじゃないんだ…。」
あぁ、マリー、私はどうすればいいんだ…。アイリスにも、なんて説明すればいいのだ…。
「ノワール様、マリー様はもう…。」
小さい頃から世話になっている執事のラフかディオが私の肩に手をそっと置いた。
「わかっている…わかっているんだ…。しかし…マリーは…本当に死んだのだろうか…こんなにも…綺麗じゃないか…。」
「…。」
沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、我が愛しい娘。アイリスだった。
「ただいま!お父さん!お母さんもただいま!」
「アイリス様!」
小学校から元気よく帰ってきたアイリス。
「ノ、ノワール様「いいんだ。アイリスには来るべき時が来たら説明する。それまでは言わないでくれ。」…わかりました。」
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