第13話 迷宮に足を踏み入れて……


「着いたぞ、ケイ。ここが奴らのダンジョンだ」


 そう言ってマックは、俺を下ろした。


 衣服の皺を伸ばしつつ辺りを見渡す。

 森を真円状にぽっかりと開けた広大な領域。

 それは勝手知ったる“常夜の森”ではなかった。


「フィールドダンジョン?」

「1層目はな」

「何か、紛争地帯みたいだ……」


 凹レンズのように陥没した地形は、“常夜の森”由来の霧に包まれている。

 土や砂を固めたような、窓の無い建物が寄り添うように建っている。

 ペンキを塗りたくったかのような彩色が、ある一定の区画毎に凝らされている。


 それはもう町であった。

 写真で見る中東諸国の町並みのような、起伏のあるカラフルな街。


 見たところ、人っ気なんてありゃしなかった。

 ヒトは居ないし、当のコボルドすら見当たらない。

 ゴミ1つ落ちてない道に、ベンチや屋台もない広場。

 噴水と思わしきオブジェは、動かないどころか水すら無かった。

 そんな生活の痕跡すら感じられない、無音の町。


 中心部にはこれまた意味有りげか、無いのか知らないが、何か見える。

 あれは、塔。塔のようなモノだ。

 霧に隠れてしまって、エルフ目・・・・でもスコープを用いてもよく見えないが。

 当面の目的地を、そこに設定すべきだろうか。


 それが“狗頭の迷宮”、1層目の光景であった。 


 どこか見覚えがあるのに、決定的に何かが違う。

 実際に目の前にあるのに、現実とは思えぬ歪な空間。

 俺はそれに釘付けとなってしまった。


 どくり、と心臓が一際大きく跳ね上がる。


 あれは、映画のセットか?

 それとも、ある種のゴーストタウンか?

 何だったら、頭のイカれた科学者どもの箱庭か?


 どれもNOノーと言わせてもらおう。

 地球の感性に囚われたには、あれの正体が解りもしない。


 だが、残念ながら。不本意ながら。

 魔女の子としてなら、溢れる魔力の性質で何となく分かってしまった。


 ここは七大魔法の要素が1つ、“無の要素”で溢れている。

 例のソロモン王が得意とし、邪神の召喚を成し得た歪な力で溢れている。


 久々に魔女としての本能が掻き立てられた。

 だが、エリーの手作業をただただ眺め見るそれとはモノが違う。

 あの温かい、安心感を覚える、まったり空間とは訳が違う。

 心臓が警笛を上げる程の焦燥感。泣き出したくなるくらいの衝動に駆られる。


 ――アレはヤバい。絶対に潰さなければ、ヤバい。


 何がだよ、くそったれ。

 一体全体、何がヤバいんだよ。

 そのヤバさとやらを、誰か説明してくれよ!


 もう一度心臓が『どくり』と鼓動した所で、我に返る。

 マックに話しかけられているようだ。

 狭まっていた視界が急激に開け、慣れ親しんだ森の歌声が鼓膜を打つ。

 体中をキツく縛っていた縄のようなモノが解かれるような開放感に包まれる。


「――おい、ケイ。……どうした?」

「ん? いや、何でもないよ」


 心配そうに顔を覗くマックに返事をする。

 自分でもびっくりするくらい穏やかな声色をしていた。

 

 俺、馬鹿なんじゃないかと思った。

 何でも無い訳がない。身体が微かに震えているじゃないか。

 冷や汗をかいてインナーウェアがびっしょりだし、喉もカラカラだ。


「何か、変なもんでも見たのか?」

「いやいや、目の前のそれがそうでしょうに」

「それも、そうなんだけどよ……」


 嘘は言っていないのだが、何か違う。もっと危機感を煽るべきだろうか。

 何を以てして、何処に注意を払えと指摘すべきだろうか。

 どう言葉を、かけるべきか。俺は――


「――フィールドダンジョンなら“10フィートの棒”、必要ないかなぁって」

「ハハハッ、何だそりゃ。落とし穴でも警戒してんのか?」

「ブービートラップが怖いじゃないか。いや町中なら尚更かな」

「おい止せよ、ぞっとするぜ」


 誤魔化した。マックも、それに続いてくれた。

 俺の異変に気付いているはずなのに。



 ◆



「その格好――迷彩か。さしずめケイにマックだな。やっと来たか」


 外周をぐるりと回ってようやくキースと合流できた。

 装備を大きく変更し、フェイスガードにアイウェアを装着という素顔を隠した状態であった為、先に気付いた先行組の射手に威嚇射撃されるハプニングがあったが、何とか近付いてキースに取り次ぎ事なきを得た。

 迷彩服が便利過ぎるから、ついついマックにも勧めてしまったが、味方に一言断るべきだったな。同じく現代知識を持つキースがいなければフレンドリー・ファイアに繋がっていた。これは反省すべきだろう。


「ごめんなさい、父さま。武器だけではなく防御面も整えていたら遅くなってしまいました」


 そう言って腕を広げ、装備をキースに披露する。


「すごいじゃないか。ボディーアーマーやヘルメットがあれば安心だな」

「はい父さま。こちらはラプアを2発は耐える代物です。

 スカベンジア基準の性能ならコボルドに負ける気がしませんね」

「何か予想以上に凄過ぎるないかっ?!」


 ぬけぬけとボディーアーマーの性能を告げたらキースに驚かれた。

 だってトドとかの海獣やクジラの銃猟に使う実包までサポートしてますし。軍用だとバレットM82やブローニングM2でお馴染みの“.50 BMG”――つまり“12.7×99mm NATO”弾とかもエグい威力してますよ。

 そしてそんなヤバい銃を嬉々としてブッ放す奴の多い事……。俺もたが。


「衝撃まで殺せる訳ではないので無敵とは言えません。

 攻撃をマトモに貰えば当然のように血は出ますし、骨折だってします。

 コレを付けていようが相も変わらず被弾は禁物ですよ」

「そりゃそうさ」


 あくまでボディショットのダメージを軽減するための代物だからな。

 『スカベンジア』では脳・頭・喉・心臓・肺・腹・大動脈と、身体の軸を沿うように、被弾したらマズい事になる当たり判定ダメージ・ボックスが目白押しだ。

 勿論、現実世界では当たり前ではあるものの、ゲームから来る経験というものもある。そこが傷付くのだけは是が非でも阻止しなければならない。コレだけは、何度も死んで覚えた俺――『スカベンジア』プレイヤー全体における大前提の常識だ。

 ボディーアーマーを主体とする防御系装備ディフェンシブ・ギアの類は、耐久値が許す限り、絶対に弾丸の貫通を許さないし、破損もしない。先程発言した通り、超長距離射撃用途の銃弾が襲い掛かろうと何発か耐えるこの優れモノは、迫る重戦闘を前にして絶対に欠かせないものといって過言ではない。


 だが、そんな防御系装備ディフェンシブ・ギアも完璧ではない。

 頭、胴体、各手足にはそれぞれ耐久値が存在し、それが減少する毎に対応する部分のパフォーマンスが加速度的に落ちてしまうのだ。こちらは幾ら装備を整えても、全ての当たり判定ダメージ・ボックスを完璧に隠蔽する事は不可能であるし、着弾の衝撃力までは殺しきってはくれなかった。どうしても生存力バイタルはある程度減るし、ショック状態にも陥る。

 それは敵も味方も共通。『スカベンジア』では如何に敵対象の装備を見抜き、的確な射撃をするかというテクニックが要求されるのだ。面倒になったら海獣用のイカれた猟銃を持ち出してデンジャラス・ゲームと洒落込むか、忍んで高所から突き落とすか、大量の炸薬で吹き飛ばしてしまおう。いっその事すべてを投げ出してナイフ片手に突っ込んで首を掻き切ってやるのもいい。たまにやると楽しいぞ。とっても。


 話を戻す。


 そんな訳で、大金はたいて防御系装備も購入した次第である。

 もし仮に『スカベンジア』としての性能が発揮されなかったとしても、それぞれに仕込まれた高耐久繊維やセラミックプレート本来が持つ物理的特性が守ってくれるはずだ。

 それは決して無駄な出費ではないと、俺は確信していた。


「それでですね。父さまには一応コレを渡しておこうと思いまして」


 そう言って俺が取り出したのは、Bluetoothイヤカム。選択したのは耳にかける骨振動タイプだ。これなら戦士職の邪魔にはなるまい。

 いくら凸砂といえども、戦士とシューターでは間合いが違うからね。

 備えておくだけならタダだ。これ結構するけど。


「通信機器か。確かに、あって損はないな。連続稼働時間はどのくらいだ?」

「え?」

「……え?」

「あー、スカベンジアではバッテリ残量の概念はないので、恐らく永久的に」

「嘘だろ……」


 だってボイスチャットのシステムを擬似的に付与するだけのオプション系装備だし。だからBluetoothって名前の割に物凄い通信距離があるからね。

 その代わり、照明だとか、暗視装置、指向性マイクなどの索敵・捜索に使えそうなものはホラーゲームの懐中電灯のようにゴリゴリ減っていく。現実だと使いモノにならないレベルで。


「これならダンジョンでも同階層であるなら問題なく使えると思います」

「あ、ああ……。ありがとう、使わせてもらうよ」


 そういってキースはイヤカムを耳にかけると皆に号令をかける。


「さぁみんな。全員揃ったから、今から突入する。準備はいいか?」


 その言葉に皆が頷く。

 敵地を前に閧の声をあげる訳にはいかないもんな。


「予定通りの陣形で行く。ケイとマックはどうする?」

「俺は今まで通り、前衛でいいぜ。ショットガンだしな」

「ポイントマン宜しく。僕は中衛後ろ寄りで。魔術士への支援射撃を行います」


 ボルトアクションでも本気出せば魔法よりかは速射性に優れているからな。

 その上、威力にムラがない。近付かれる前に倒すという役割ならこなしてみせる。


「分かった。油断のないようにな。

 後、発砲は大きな音が出るから許可あるまでは控えるように」


 キースがそう言い放つとマックが即座に反応した。


「なっ、そりゃないぜ旦那! 俺、撃てねぇじゃん!!」

「ガバメント用にサプレッサー持ってきて正解でした♪」

「ん? ハンドガンはケイが持つ事にしたのかい?」

「アンロックしたんだよ! 俺のデザートイーグル!!」

「ははは、そりゃ駄目だな。格闘で頑張りなさい」

「――のぉおおおおお……」


 本当はマズルアップ対策の重しのつもりだったのだが。

 マック哀れだなぁ。


「迷彩で忍んで、マチェットか斧で頑張ってみてはどうでしょう?」

「分かるだろ? ブッ放す気分だったんだよ。偲ぶ気になれっかよ……」


 そういうとマックは前衛に続いてトボトボと歩く。

 いやまぁ、撃てるって。ボス部屋とかでさ。DEはそこでこそ輝くんだよ。

 苦笑混じりで中衛と後衛の間に入った俺もまた、迷宮へ突入する。



■Location/“常夜の森”>“狗頭の迷宮”>Level.1 “CITY AREA”


 外周から階段を降りて、通りへ。

 長い坂を下るように、建物の隙間を抜けていく。


 まるでアイスクリームショップのショーケースの中を歩いているようだ。

 チョコミントだの、ブルーベリーだの、ストロベリーだの、レモンだの。

 そんなパステルカラーにも近い、どこか安っぽい健康に悪そうな色彩に溢れていた。


 ここは本当に誰も住んでいない抜け殻のような町であるようで、本当に生活の痕跡が感じられる物品なんてありもしない。姿形だけを真似た、作りかけの何かだ。


 俺は、この気味の悪さの正体を知っていた。

 没入型仮想現実でも問題になったヤツだ。

 レベルデザインにおける“不気味の谷”に非常に良く似た、不快感を催すこの現象。

 使用者の身体にも僅かながら影響をもたらす程の強烈な思考的パラドックス。それが異世界における正真正銘の現実リアルで、本物の五感をもってして醜悪に俺を苛んでいた。


「ふぅー……嫌なところだぜ、まったくよ」

「同感。早いところ抜けてしまいたいね」


 無線を通じてマックと愚痴をこぼす。

 他の同行者は大丈夫なんだろうか。


 そう思った俺は、後方の魔術士と殿しんがりの戦士の方を向く。

 彼らもまた、不快そうに眉をひそめていた。

 ものは試しに尋ねた所、若い迷宮はみんなそんなものらしい。

 本当に、作りかけの迷宮、という事なのだろう。


 こんなもの、作らなくたっていいのに。

 心の中でそんな悪態をつきながらも、微かに積もった砂塵を踏みしめながらも。

 この狂気の中を、皆で歩いていく。

 肌を伝う冷や汗が僅かに体温を下げていった。


 一体どれ程の時間を歩いていただろう。

 四半刻か、もう少し。大体40分程だろうか。

 もとよりフィールドダンジョンだ。迷宮は幾ら現実を書き換えて環境をすり替える事はしても、空間異常だの意地の悪い仕組みなど無いらしく、迷う事はないらしい。

 それでも、もう2キロメートル以上はまっすぐ道なりに歩いた筈なのに、肝心の塔に辿り着くには少し遠かった。

 中心への最短距離を歩いているはずなのに、キースとの合流で歩いた外周ぐるり旅の方がずっと気楽だった。


 合同パーティ12人分の足音が一斉に止む。

 ここ広いな。噴水っぽい何かもあるし、憩いの広場のつもりだろうか。


 代表者のキースが号令をかけた。


「一旦、停止だ。見張りは散開して警戒を。ケイ、君は休んでいいぞ」

「どうされましたか? 休憩にはまだ早いでしょう?」


 俺がそう尋ねると、キースはにこやかに羊皮紙のようなものを取り出しながら教えてくれた。


「来た道を地図に書き留めておくのさ。ほら、この魔法道具。

 これは歩いた道のりを記録してくれる素晴らしい道具でね。

 この専用のペンで注釈を付けておく事で距離感を失わないようにする訳さ」


 そういって、俺に羊皮紙を見せてくれる。

 まずはじめに碁盤目状の、マス目。

 でかでかとした真円状の、黒いインクのようなシミがぐるりと走っている。

 その3時方向からヒョロヒョロと頼りなく描かれた線が見て取れた。

 そしてその先端に、ぼんやりと真っ黒な煙草タバコの煙のようなものが立っている。


「なるほど。これは『一度ダンジョンの外周を一周してから、突入しましたよ』という事を示している訳ですね」

「そういう事。現在地がこの黒いやつさ。便利なものだよ」


 そう言いながら、キースは地図に赤い点を『ちょんちょん』と付けた後、青インクの細筆に持ち替えて注釈を付けていく。

 書かれているのは言葉ではなく、数字と数字、そして記号。


「これ、座標系ですか?」

「そうだよ。目印になりそうなモノに座標と番号を振ってシンボルを付けておくんだ。

 一度やっておいて情報交換すれば、目視でも大体の位置関係がわかるだろう?」


 こりゃ凄い。何というか、目からウロコだ。流石は元・海兵隊員。

 戦うことに気を取られていた俺とは違い、キースは位置関係をハッキリさせることで効率的な行軍をしていたという事らしい。

 もし仮に使用者が俺だったら、無計画にそのまま使って、グニョグニョとした縮れ毛のようなラインを前に発狂していたに違いないな。


「凄いですね。セミオートでマッピングできる魔法道具ですか」

「ゲームでお馴染みのオートマッピングのようにはいかないさ」

「それでも便利なものです。……気になるお値段は?」

「大銀貨6枚さ。まぁ、普通。普通に高いけど、高すぎる程じゃない」

「……300ドルくらい?」

「多分そのくらいだ。でもそう言っちゃうと有難みが無くなるからよしなさい」

「はい。それもそうですね、心の中に留めます」


 ドルに換算したら叱られました。

 ディーラーシステム解禁以降、現地通貨のドル換算が板についた俺である。

 日本円でもいいけど、生前の『スカベンジア』では外国貨で課金しようとすると時価のように値段が変動する。米ドルを用いるのが1番楽で分かりやすいのだ。

 しかも、この世界の現地通貨が、都合よく日本円でキリ良く算出できるハズもなく、これまた米ドルが上手いこと当てはまったりもした。

 日本に親しい『異世界』の概念とやらもグローバル化が進んでいるのだろうか。

 現在、確認できた地球出身者は俺を含め日本人1人、アメリカ人2人。あと“ワイルドハント”のマリアさん、故・イギリス人。英語圏だけで3人だ。この時点で、もはや日本円換算が実用できないだろうと納得できた。


「――その方がいい。不用意にドルだのエンだの言ったら場が混乱するぞ?」

「日本人の本能と思ってください」

「何だそりゃ」


 すました顔で言う俺に、苦笑するキース。

 ごめんねパパン。通貨換算は異世界転生のお約束なんだ。これは譲れないよ。


 俺はキースと談笑しつつ、ふと視線を建物へと向ける。

 なんて事のない、注意力のない無防備な一瞥。

 偶然だろう、今、何か捉えたな。

 さて、どうするね。判断を仰ぐか。


「どうした?」

「――いえ、何も?」


 そう言いつつ、キースに判りやすくホルスターからガバメントを抜く。

 キースはそれをにこやかに眺めながら、頷いた。


「ところで父さま。コボルド・・・・って犬なんですよね」

「犬だねぇ」


 バレルキャップをキュルキュルと外し、サプレッサーを取り出す。

 キースは収納から、布に包まれた槍を取り出して脇に置く。


「犬って高いところ・・・・・や、暗くて・・・狭い場所・・・・、好きでしたっけ?」

「どうだろう。種類にもよるんじゃないかな」


 これは父との談笑だ。悪戯っぽい表情で、サプレッサーをバレルに装着。

 キースは背中の弓を手に持つ。エルフが耳を立てて聞いていた。


「コボルドって尻尾・・はあったりするんですか? 犬っぽい尻尾!」

「あるね、ふさふさしてるよ」


 もふ……! 失礼、ちょっと高揚しかけた罪な心を宥めつつ、セイフティを解除。

 キースはレッドキャップたちとアイコンタクトを図っている。


「わぁ! 犬は好きです。賢くて、集団行動・・・・が得意で。じゃなかったらモフりたかったです」

「ああ同感だ。私も犬は大好きだ――」


 キースは矢を番える方の手首に装着された腕輪を起動する。

 俺はピストルのスライドを引いた。


「「――本当に残念だ」です」


 それだけ言い終えると俺はガバメントを建物の影に向けて発砲。

 キースは突如現れた、螺旋状の真っ白な針のような矢を番え、弓をいた。

 戦士たちは獰猛な笑みと共に獲物を引き抜く。

 魔術士は澄ました笑みを浮かべて思い思いの呪文を詠唱。


 直径50メートル程の開けた空間。

 建物に囲まれた、中央に休憩用の腰掛けも兼ねた噴水のある広場。

 そこは既に、音もなく包囲されていた。

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