狩りと流星群 ②
今日の狩りの獲物は、
オンブリアでは、すべての動物は竜を祖先とする、と考える。すべての竜の頂点に竜祖と、その血族である古竜がいて、自分たちはその子孫だと考えている。その
動きまわるタイプの竜ではなく、比較的狭いテリトリーのなかでじっと待ち、
もっといい位置から見るという名目でリアナはイーサーを誘い、岩場から離れた林を滑空し、竜たちの間近に寄った。捕食する相手を惹きつけるための、サンザシのような独特の強い芳香があたりにむせかえった。
「お見事な腕前ですね」
リアナは決まりきった世辞を述べた。
「遅れないようについていくので精一杯でしたが、陛下の笑顔に報われました」
イーサーはそう言って、後ろをふり返った。「みなさん、すばらしいライダーでいらっしゃいますが、デイミオン
「デイミオン卿は竜騎手団の
「ああ、なるほど。……それに、王太子でもあられる。『種は一カ所に
「われわれは『ひとつの籠に卵を入れるな』と言います」
「短命の人間からすると不思議なものです、王よりもはるかに年長の王太子がおられるというのは」
「デイミオンは〈鉄の節〉(竜族の48~59歳をさす)ですから、わたしとは三節差で、それほど年上というわけでは……」
長命な竜族の一員として、リアナはそう返した。彼女自身が16歳と非常に若いのは事実だったが、デイミオンとの年齢差を強調されると、どうも面白くない。
二人の会話に、飛竜乗りの一人が合図を送った。
これから彼らが獲物の動きを止めるという意味の合図に、リアナもうなずいて返した。
「では。せっかくの獲物ですから、記念にあの竜の首を落としてきます」
イーサーはそう言うと、周囲が制止するよりも早く、仕留めたばかりの
「イーサー公子!」リアナはあわてて叫んだ。
とどめを刺したと公子が思った直後に、すぐに警告しなかったことを悔やむが、遅い。
力を失ってだらりと地面に投げ出されていた
落下そのものは、
(落ちる――!)
背中から風圧を感じながら落ちていくリアナにできることはいくつかあったが、レーデルルがいないパニックでそれができない。(無理、ほかの
ほんの二月前に、混乱の火事場でそれをやってのけた男のことが脳裏によぎった。彼にできることなら、自分にできていいはずなのに――
なすすべもなく落ちていくほんの2、3秒。そして次の瞬間、リアナの背はどさりとなにかに受けとめられた。身体が重く沈みこみ、怒りに満ちた青色の目とかちあう。
「〈
それは、オンブリア随一の黒竜アーダルに乗った〈黒竜大公〉にして王太子、デイミオン・エクハリトスだった。
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