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「それじゃぁどこが困るんですか?」

「そ、それは・・・」

 フルーツたっぷりのマイタイから、ピックに刺さったチェリーを抜きながら松本さんは躊躇うように口を動かす。

 恋は人を臆病にさせる、なんて言葉があるけれど、それは相手を目の前にした時だけの言葉じゃないらしい。

「その、好き、過ぎて・・・的な」

「好きすぎて、ですか?」

 彼の事を好きすぎて困る、だって?

「だって最初の頃は全然格好いいとか思ったこと無かったはずなのに、今になって凄く恰好良く見えて来るし、そうしたら今度はついつい目で追ってしまって仕事が手に付かないし、なんだか夜も眠りにつけないし、朝は朝で凄く早く目が覚めてしまってなんか寝不足だし、肌の調子だって良くないのに彼は話すとき私の顔をじっと見てくるし、最近ついにちょっとお高いクリーム買っちゃいましたよ、これ以上酷い顔見せられないから」

「ほ、お」

 で、それの何が困る訳?

「だから、その・・・こんなことになっちゃってる自分に、困っているんです」

 あー。

「今まで仕事をメインにして生きて来たから今更恋なんて、いや、いつかはできると思っていましたけどこんなタイミングだと思わないし、ライフスタイルが崩れまくっているし、こんな私になるとは思っていなかったので。だから、凄く今、自分の気持ちに困っているんです」

 そこまで言い切って、グイッとグラスを仰ぐ。瞳が潤んでいるのはアルコールのせいだけじゃないようだ。

「どうしたらいいでしょう、私」

 どうしたらいいのか、その答えは簡単だ。それを受け入れるかどうかは、松本さん次第だけど。

「自然に身を任せて」

「自然に、身を?」

「彼を好きなのも、困ってしまうのも自然なことだと思って身を任せて下さい。楽観的に自分を見れば、おのずと道が見えてくるかもしれませんよ」

 無責任? バカ言え。相手は恋に盲目なんだぞ? その答えは自分で見つけなきゃ、俺が言ったってなにも変わらないよ。

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