ほどけたまんまの靴ひも
カゲトモ
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「うわぁん、もうどうしたらいいと思いますかぁ、マスターっ」
どうしたらいいって、そんなこと俺に訊かれても・・・こんな松本さん、初めて見るし。
見た目はいつも通り、と言うよりはちょっとだけメイクが濃い目ではあるような気がするけど、髪形も緩く巻いた髪が女性らしさを存分に表しているし、ネイルだって花柄でとてもガーリッシュだ。前からおしゃれな人だけど、恋をするとこうも女性らしさが爆発するのか。いや、もともと綺麗な女性だけどさ。
「どうしたんですか、そんなに荒れて。何か困った事でもありましたか「ありまくりですよ!」
そんな身を乗り出して言わなくても。そんなに取り乱すなんて松本さんらしくな・・・いやバレンタインの時も結構アレだったか。
「でも彼のことが好きだって認めたんでしょう?」
十歳も年下の彼に告白された松本さんは、絶対ないと言いつつも結局は彼が好きだと認めているわけで。バレンタインだってチョコをあげているくらいなんだから、最初から少しくらい気はあったんだろうけど・・・彼が好きだって認めた時も結構あーだこーだ言っていたけどさ、どうしたんだ今日は。
「す、好きだけどぉ」
好きだけど? え、まだ一杯目だよね? 情緒不安定って恋する乙女のデフォなの?
「こ、困るっていうか」
「困る、ですか?」
そう返すと松本さんは「ふぁぁ」と空気の抜けたみたいな音を出しながらカウンターに突っ伏す。相当キテいるな。
「だって彼まだ二十代なんですよ」
まぁ十も離れていたらそうだわな。
「彼、やっとアラサーになったわけじゃないですか」
あ、そうなの?
「私、もうすぐアラフォーなんですよ? 同じアラサーの期間、たった二ヶ月なんですよ?」
「なるほど」
そんな年下を好きになってしまったから“困る”って?
「そこじゃないんです」
え、違うの?
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