英雄譚〜転生少年の成り上がり冒険譚〜

エリス

第1話転生少年の誕生

おかしい…おかしいおかしいおかしい!

ここは何処だ!誰なんだこいつら!なんで声が出ない!なんで身体が動かない!なんで視界がはっきりしない!こいつら何言ってんだよ!


「う…うあぁ〜!うあー!うあーー!」


声が出たと思ったら、なんで泣いてんだよ俺!いい歳こいた大人が何でこんなことで泣いてんだ!しっかりしろよ俺!


なんか口に入って来たぞ……なんだこれ?

な、なんだ!?液が口に流れて…!

飲み込むなよ俺!飲み込む…な……でも、なんか喉が渇いてるな……あんなに大声で泣き叫んだからか…?


「んっんっんっ…ぷはぁー……うっぷ」


美味しかった……毒では…ない…か。

満腹になったら…なんか眠たく……なって…き…た…。


「スピー……スピー……スピー……スピー……」




----寝静まった部屋に、二人の声が響く----




「寝たわね〜」

「ああ、そうだな」

「ほら、あなたの子よ抱いてみて」

「そうさせてもらうよ」


ニコッとはにかみ、自分の息子を抱く。




日本語"ではない"言語を喋るこの二人、そして日本から転生した二人の息子。

名を『ハルマ』と言う。

父は名を『ゲルマ』と言う。

母は名を『ハナ』と言う。


そこに、三つの足音が近づいてくる。


ガチャ。


「おとーさん!赤ちゃんはどこなのです!?」

「おやじ!赤ちゃんなんて放っておいて俺と遊んでくれ!」

「お父様、わたくしに"魔法"を教えてください」

「静かにしなさい、赤ちゃんが起きちゃうでしょ」

「そうだぞ、後で遊んでやるから待っていてくれ。サナも静かにな。カノンもまた後で教えてやる」


一気に忙しくなったことで、ハルマが起きてしまう。


「う…うあ〜!うあぁ〜!!」

「うるせぇ〜!俺外行って遊んでくる!」

「お父様、約束ですよ。では後ほど」

「あ、ごめんなさいおとーさん赤ちゃん起こしちゃった…」

「いいのよ、サナ。ほらこっちへ来てみなさい」


そして、泣き終わったらすぐに寝息を立てて寝てしまった。


「かわい〜…おかーさん、私にも抱っこさせて」

「ええ、気を付けるのよ」

「じゃあ、俺はカノンに勉強を教えてくるから後は頼んだぞ」

「承知いたしました」


実は一人、部屋の隅でじっとしていた侍女が居た。


「それでは奥様、サナ様ここは私にお任せ下さい」

「ん〜しょうがないわよね。分かったわ、サナ行くわよ」

「え〜もうちょっとハルマくんと居たい!」

「だーめ。言うこと聞かないとハルマを抱っこさせないわよ」

「ぶー!分かった!でも、明日はもっと抱っこさせてね!」


はいはい。と言いハナはサナを連れて出ていく。


部屋で一人、侍女がハルマを抱きながら無表情であやしている。




----そんなこんなでハルマが一歳の誕生日----




だいぶ、耳と目には慣れてきたな。

あとは身体を動かすことが出来てきたか。


実はあれから約一年がたったんだが、大体自分の現在の境遇が分かってきた。

まず、俺は何故か知らないが赤ちゃんになっている。

それと、ここは日本……いや、地球ではないという事。

なぜ分かったか、それはまず言語だ。いや、言語だけで地球じゃないということを特定するのは無理だろう。だが、俺は聞いてしまった。長女のカノンが"魔法"という言葉を使っていることを。

最初は、「何この子、そういう歳なのかな?」と思ったが、どうもおかしい。で俺のおしめを取り替えてるんだが。いや、気にするな。お尻を吹く時はウェ〇トティ〇シュじゃなくて、手から光を発しているんだ。それが、結構気持ちい……いや、何も無い。


閑話休題


話がそれたな。

それで、俺の尻を拭かずに、魔法のようなもので汚れを落としているのだ。

しかも、その際「浄化クリーン」と、言葉を発している。これらを見て魔法じゃないという方がおかしい。いや、あの長女が言ってるのならまだしも、お母さんや次女のサナが言っているのを見ると、まさかとは思うだろ。


おっ、噂をすればだ。


「クリーン」

「うあぁ〜」

「ふふ、綺麗になったわよ」

「あいっ!」


返事は出来るようになったが、この「あいっ!」て言うのはなんだか恥ずかしい気も……いや、お尻見られてる時点でもうどうでもいいんだがな。

それと、最初に言ってた口に入ってきたやつだが……いや、何でもないです。


「今日はあなたの誕生日会よ!おめかししなきゃね〜」

「あい!」




----そんなこんなで二時間後----


「今日は、ハルマの一歳の誕生日だ!思う存分楽しめ!」

「うおー!うめぇ!」

「ゲド、静かに食べなさい。汚らしいわよ」

「そうだぞゲド、カノンを見習え」

「うるせぇな!兄貴!」


「ほら、ハルマくんあ〜ん」

「うあぁあ〜ん」


忙しいなあいつら。

それにしてもサナはいっつも俺に付きっきりだな。弟思いの姉っていうのはいいものだな。


「ふふ、かわい〜」

「サナも自分のご飯食べてきなさい、お腹減ってるでしょ」

「う〜ん、ハルマくんにご飯あげてから行ってくる!」

「だ〜め、今日はパーティなんだから楽しんできなさい」

「ハルマくんと一緒にいるのが一番楽しい!」

「困ったわね〜、じゃあご飯とってきてあげるから、三人で一緒に食べましょう」

「うん!ありがとうおかーさん!」


いつもこれだ。サナは俺に付きっきりで、自分よりも俺優先。これじゃ、サナがダメになっちゃうな。いつも俺に優しくしてくれるし、恩返しも兼ねて、サナがダメにならないように立ち回らないとな。


そんなこんなでパーティも終わり、みんなが就寝する頃。


サナを守らなきゃいけないよな。

その為には俺が強くならなきゃだよな……でもやることないしな〜……。

あっ、そう言えば転生物の小説とかって小さい頃から魔法使ったりしてたよな…?

じゃあ、俺も使えたりして!

たしか、体の中を巡る血液に混じっているのが魔法だったか?

…………んなの分かるわけねぇだろ!

……集中集中!


ん?んんん?んんんんん?んんんんんん!?おっ?おっ!?お〜っ!?!?

こ、これじゃね?


と、とりあえず落ち着こう。

え〜っと、これを動かすんだっけか?


……!?動いた!あっ、集中切らしたらダメなのか。

集中!


えっと、次は想像したらいいんだよな?この魔法を掌に集める……集める…集める……。


おっ、きたきたきた!

手を突き出し、唱える!


うぃんおウィンド!」


すると手から、微風が吹く。


なんだこれ、髪の毛がちょっとフワッとなるくらいじゃねぇか!ダメだダメ!


もっと想像を膨らませて……えっと、風…旋風!…ウィルウィンド!旋風が起きる原理!知らんけど!

多分、最終形態を想像したら行けるだろ!

風を回す…扇風機みたいな感じかな?

扇風機か……旋風……たしか上昇気流が関連してたはず!


上昇気流って確か、鉛直方向が上なんだよな?竜巻とかも風が渦巻状に吹くから出来るんだとか……よし!やって見るか!


えっと、上昇気流を頭の中でイメージする。

よし、そこに渦巻状に風を吹かせる!

よし出来た!簡単!


うぃううぃんおウィルウィンド!」


すると手から微量の旋風が放出された。

あ、あれ?何がいけなかった?

ん〜……あっ!風を吹かせただけだったらダメだ!

早く回転させて、そこに強風を吹かせる!

よ〜し、やるぞ!


うぃううぃんおウィルウィンド!


すると手から先程とは比べ物にならない……が、扇風機で言うところの強風位しか風が吹かなかった。


な…なんで〜……。


すると、意識が遠のいて行き、知らず知らずのうちに寝てしまった。

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