第18話 オリバーの手紙

 間に合った。ギリギリでもなかったが。

 流石は《神速》というところか。

 シャオーンに感謝しなくちゃいけないな。

 シエラさんたちになんて説明しようか……まずいことになった。

 目の前でオリバー・ジョーが死んでいる。


 それにしても躊躇いなく一突きとは……。

 我ながら神経が太くなったものだ。


――『《オリバー・ジョー【Lv:37】》討伐により固有スキル《女神の加護》を発動しました。戦利品を選んでください』


ーーーーーーーーーー

スキル:火炎の鎧ファイア・アーマー

スキル:火属性強化

スキル:烈火れっかやり

魔術:火炎の一速ファイア・ソル

魔術:火炎の鉄槌ディボルケード

アイテム:火炎かえんのハルバード

アイテム:オリバーの手紙

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 なるほど、オリバーは炎使いだったのか。

 それより、一部スキルに魔法名が付いているのはどういうことなのか。

 スキルとして魔術が使える、ということなのか。


 火炎のハルバードには興味を持った。

 だが俺は自然とオリバーの手紙を選ぶ。

 リストの中にあった異質な雰囲気の手紙。


 中に目を通した。

 なるほど。読めん。

 この世界の文字を知らない俺に、手紙など読めるはずもなかった。

 すると、手紙が微かに発光する。

 不思議なことが起こった。

 文面が理解できたのだ。

 文字に目を通さなくても、頭の中に意味が入ってくるように。


 手紙には、自分は望んで騎士になったわけではないこと。

 さらにアンナという一人の女性の名が手紙に出てきた。

 アンナは故郷に残してきた妻のようだ。

 オリバーは故郷に残してきたアンナのことを心配していたようだ。

 彼女のために鍛錬を積み、隊長の座を手に入れた。

 が、これも望んだことではなかったらしい。


 ウラノス草原の戦い。

 オリバーは灰の団の隊長として、この戦で猛威を振るったそうだ。

 戦から帰還したオリバーは、アンナが野盗に攫われ殺されたことを知る。

 遺体は見るも無残な姿で見つかったのだと。

 アンナの父親に「お前は見ない方がいい」と言われた。

 そう記されていた。

 オリバーは絶望し生きる気力を失った。

 そんなオリバーを部下たちは嘲笑ったそうだ。


 後半の部分にはオリバーの怒りが記されていた。

 それは王を殺すということ。

 ただでは殺さないということがだった。


 この手紙の内容を知ったのは、ターニャ村に戻った夜だ。

 皆が寝静まった後だった。

 手紙は断片的で衝動的な、殴り書きのような部分もあった。

 全体を理解するのは難しい。

 手紙自体に言葉が足りていないような気がした。

 何故、オリバーは王を恨んでいたのか。

 それが気になった。


 手紙を異空間収納にしまうと、頭の中でアナウンスが鳴った。


――『魔術 《業火※※》を習得しました』


 直ぐにステータスを確認する。


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魔術:業火※※

オリバー・ジョーの怨念により生まれた火。

この火は時間を掛けて徐々に対象者を焼く。

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 ハルバードにしておけば良かったと後悔した。

 何故こんな怨念の塊を習得しなければいけないのか。


 それに、属性魔法が使えないからアイテムを選んだんだ。

 結局、手に入れたのはオリバー・ジョーの情報と火属性魔法だった。

 だが、まさか手紙を読むことで習得できるパターンがあるとは思わなかった。

 知らないことを知れたという意味ではよかったのかもしれない。


 だが使えない魔法を手にしてしまったのだ。

 ないよりはマシと言うが使えないのだらかマシもクソもない。

 一応どうにかして使えないか考えた。

 呪文を詠唱し一瞬でも火が出ないかと……。

 ところがこの魔術には魔法名がそもそもなかった。

 と、そこで固有スキル《反転の悪戯【極】》だ。


 以前、ダンジョンで色々試した。

 が、《侵蝕の波動ディスパレイズ・オーラ》が十分過ぎた。

 他の魔法も反転できることをド忘れていた。


 と、《業火※※》に、《反転の悪戯【極】》を使った。

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