第166話 普通という悪臭
翌日。
パトリックの試合が行われるその日、俺たちは来客室に呼び出されていた。
あと数分でパトリックの試合が始まってしまう。
あいつとはもう長いこと話をしていないが、試合くらいは応援してやりたい。
きっと会わなかったこの期間もずっと、精霊魔法の練習をしていたはずだ。
それがどうなっているのか見てみたい気持ちもある。
だが……そういう訳にもいかなそうだ。
「……悪いな」
「別にいいわよ、気にしてないから」
「特にニト様が出られる試合ではありませんし、わたくしは構いません」
実はここには3人も連れてきている。
勧誘が心配で離れられなかったのだ。
「ネム? 具合はどうだ?」
「昨日お肉を一杯食べたから大丈夫なのです!」
昨日、あれほど憂鬱に見えたネムだったが、晩餐会でお肉を目の前にすると、その表情は一変し、数分後にはいつものネムに戻っていた。
俺は扉を数回ノックし、「失礼します」と扉を開ける。
するとそこには、おなじみの2人が座っていた。
サブリナとオズワルドだ。
部屋に入るなり、特に多くは語らず、ただ手で座るように促すサブリナ。
そこには暗雲が立ち込めていた。
まったく、鬱陶しい奴らだ。
俺たちは2人の表情を窺いながら、席に着いた。
「呼ばれた理由は分かるわね?」
周りに人がいないと馴れ馴れしくなる奴だ。サブリナは……
「とりあえず先に話を聞きましょう」
質問に、安易に答える気はない。
先生面しやがって……
俺から何かを聞きたいなら、まず自分が話せというものだ。
「ユートピィーヤ王とパスカンチン王は、未だ目を覚まさぬ。じゃが容態は少しずつじゃが良くなっておる。と言うても、まだしばらく時間はかかるじゃろうがな」
最初に話したのはオズワルドだった。
だからどうした?
それが俺の感想だ。
俺はそれをに対し何も言わない。
最もな姿勢だろう。
わざわざ呼び出しておいて最初の一言がそれとは、つくづく馬鹿にした奴だ。
とりあえず俺を疑っていることは分かった。それはいい。
俺が何かしたと決めつけているのだろう……まあ実際、俺がやったわけだが、それにしても順序があるだろ?
疑うのは勝手だが、証拠を出していただきたいものだ。
「両国共に、両学校を支援してくださっておる出資者の方々じゃ。もはやただでは済まぬ」
もういい。
「用がないなら帰らせてもらいます」
俺は席を立った。
「お主は!」
するといきなり大きな声で怒鳴りつけるオズワルド。
その声にネムがビックリしていた。
「自分がしでかしたことを! 理解しておるのかああ!?」
部屋に怒鳴り声が響き渡る。
響いた声が鳴りやむ間もじっと俺を睨みつける2人の校長。
そこで俺は、とりあえずマスクを取った。
「何か証拠でもあるのか?」
俺はただじっと2人の目を見つめ、抑揚なく問う。
敬意など不要だ。
こいつら相手にそんなものはもう、必要ない。
偽善さえもだ。
「まさか俺の魔力でも感じたか?」
こいつらに俺の魔力は感じ取れない。
だから痕跡すらも見つけられない。
俺はサブリナとオズワルドの顔を見比べた。
そこからは怒りが伝わってくる。
「既に片方も紅いか」
するとオズワルドは返答するわけでもなく、そう呟いた。
「俺を愚弄するつもりか? これでもわざわざ手を抜いてやったんだぞ? 少しは有難く感謝したらどうだ? 俺がその気ならあいつらは死んでてもおかしくなかったんだ。それが分からないか?」
「そう。やはり、あなたがやったのね?」
サブリナは死んだ魚のような目で俺を見た。
そこには俺を見下した感情以外、何も感じない。
もう限界だ……
「はあ?!……そうじゃないだろおお!」
もう黙ってはいられない。
こいつらはおかしい。
普通に考えて、もっと気にすべきことがあるはずだ。
「もしあの場に俺がいなければ、ネムが無理やり連れていかれるところだったんだぞ!? それを何だ?! 俺がやっただと?! 論点が違うんだよ論点がああ! お前らは謝罪する側だろうがあ!?」
「ニト! 落ち着いて!」
「ご主人様!」
トアとネムが俺をなだめようとする。
「間違っておるのお……」
だがさらにそこで、爺が理解できないことを口にした。
「お主に落ち度がある。それは明白じゃ」
「は?」
俺は一瞬言葉が詰まった。
これを吐き出せば、次に出るのは罵声では済まない。
じっと、怒りを堪える。
「何があったのかは予想がついておる。じゃがお主は魔法で拷問を行ったのじゃ。これを罪と言わずして何と言う?」
「奴らがこれまでやってきたことを! そのままやっただけだ! それのどこが罪になる?!」
するとオズワルドは大きなため息を吐いた。
そして爺くさい間を空け、俺に説教するように語りかけた。
「良いか? あの2方は共に王じゃ。この世界において王は、その権力故に何をしても許される。均衡を保ってさえおれば、戦争でもしかけぬ限りは許されるのじゃ。そしてすべてにおいての決定権を有しておるのも王じゃ。もちろんあの2人の王が、この一件によりこの2校を閉鎖するよう願い出たとしても、あの者らの一存では決められぬ話じゃ。じゃが各出資者たちを集結させ議会を開くだけの力は持っておるのじゃよ。その意味は分かるじゃろ? それが権力じゃ。この学校はその権力の上に生かされておるに過ぎん」
「奴は獣人をゴミの様に扱い! そして獣人は食べる物だと言ったんだぞ?! ネムの前で!」
「それが王の御意志じゃ。わしらには何もできん」
こいつは何を言ってるんだ?
生徒が一人、拉致されかけたんだぞ?
意志だとかそんなことを言っている場合じゃないだろ?
大罪だぞ?
それを認めるのか?
それを認めるということは、獣族への虐殺を認めるということだ。
それがどういう意味なのか分からないのか?
「まさか……これまでにもいたのか? これまでにも……あいつは、生徒を攫っていたんじゃないだろうな?」
オズワルドは俺の目を真っ直ぐ見て答えた。
「それが王というものじゃ。わしらには使命がある。このマーセラス様とベアトリス様が遺されたこの二校を存続するという大いなる使命があるのじゃ。何事にもそれは変えられぬ。お主には分からぬか。一人の犠牲か数十億の犠牲か、どちらかと問われたとき、お主ならどちらを取る? 答えは明白じゃろ」
クソが……
「この学校の存続が、数十億を救うとでも思っているのか?」
「答えるまでもないことじゃ」
腐ってやがる。
こいつらは腐ってやがる。
「お主はまだ若い。世の中、キレイごとだけでは生きていけぬのじゃよ」
どいつもこいつも、腐ってやがる。骨の髄まで。
誤解していた。
こいつらは仕方なく呑みこんでいるものだと思っていた。
だがそうじゃなかった。
容認していたのか……こいつらも。
「ニト様、これが世界です。皆、利己的なのですよ」
スーフィリアの言う通りだ。
いや、スーフィリアはこれを言っていたのか?
スーフィリアには見えていたんだ。
世界は利己的だ……スーフィリアはいつもそう言っていた。
俺はその言葉を分かっているつもりだった。
俺には見えているとそう思っていた。
だがまったく見えていなかった。
これが真実なんだ。
こいつらにはもう自分たちの選択に対する罪悪感などない。
当然だと思っている。
その段階はもうとっくの昔に過ぎているんだ。
俺が甘かった。
俺は何を夢見てたんだ?
ここが異世界だからか?
異世界には汚れも穢れもなく、誰もが望むファンタジーが広がっていると、そう思っていたのか?
違う……どこの世界もそうだ。
すべて腐りきっている。
救えない、もう救えないんだ。
誰かが浄化しないと……。
「ぐっ!」
「ぬっ!」
俺は気づくと、念動力で2人を拘束していた。
「ぐっ! 離……しなさい! こんなことをして!」
「それがお主の……答えか?!」
「動くな。そして抵抗するな。逆らえば殺す。勝手に喋っても殺す。お前らには今、何の権限もない。俺が王だ」
殺したい。
今すぐにでも殺してやりたい。
もしあの時、俺があそこにいなければ……ネムは……
想像すればするほど、殺したくなってくる。
こいつは見て見ぬふりをしていたんだ。
そしてそれを仕方のないことだと、正当化していた。
許されることではない。
「何人だ? これまでどれだけの獣人があいつらに連れていかれた?」
「ニトさん! 離しなさい! 何も私たちは好き好んでやっていたわけではないのよ?! 仕方なく!」
息を吐くように嘘をつくか? 腐っている。
浄化だ。こいつは生きていてはいけない。
「だったらどうだというんだ? だから自分に罪はないと?」
笑いがこみ上げた。
「良くもそんなことが……。お前らはいま俺に何と言った? 俺に罪があるとそう言ったよな? 拷問を行ったから俺は罪人だと、そう言ったよな? それなら何であいつらは罪人ではない? 王なら何をやっても許されるだと? そんな横暴が通用するわけないだろう」
「小童がぁ……それが世というモノじゃ。お主は未熟ゆえ分からぬのじゃ。それが世の常なのじゃよ」
「それでも歳を取ったつもりか? お前みたいな奴を老害と言うんだ」
俺はそう呟き、2人を壁際に投げ飛ばした。
「ああ!」
「ぐわぁ!」
ここは……虚像だ。
すべてが嘘。
嘘で血塗られ固められている。
俺が思っていた以上に世界は腐っている。
この2人からも腐臭が伝わってくるようだ。
「お前らはもう、救えないな」
「救うじゃと? ほっほっほっ……何様のつもりじゃ?」
今はダメだ……抑えろ。
「お前ら? 対校戦はどうするつもりだ? 明日は俺の試合がある。その後には追加試合もあるわけだが、こんなことになった後で、俺がそう易々とお前らのために動くと思うか?」
その言葉に2人はただ俺を睨むことしかできない。
「ふ……安心しろ? 出てやるよ、試合くらいな」
「すべてをどうにかすることなど出来ぬ。いつか……お主にも分かるはずじゃ。魔法は万能ではない。権力は魔法よりも崇高なものなのじゃ。わしらが救いたいと思うても、権力の前には屈服するしかない。それが生きると言うことじゃ。今に分かるはずじゃ」
それは力のない者の言う言葉だ。
俺はそうはならない。
すべて、変えてみせる。
俺の思うがままに……すべて。
「そんなもの……分かりたくもないな。自分の魔法を信じられない奴に、一体何ができるっていうんだ? いや……そうか……クックックックッ」
「何がおかしいのじゃ?」
オズワルドは脇腹を抑えながら尋ねた。
「疑っていた訳じゃない。だが、今、はっきりと分かった。深淵は正しかったのだと」
「深淵が……正しかったじゃと?」
「ふ……お前は知らなくていい。その老いた脳みそと、このご立派な校舎と共に死んでいけばいい」
俺はマスクを纏い、壁にもたれかかったままの2人を横目に、部屋を出た。
トアたちはその様子に戸惑いつつも俺に続く。
後少しだけ付き合ってやるよ。
この、ままごとに……
▽
しばらく会話もないまま、俺たちは廊下を歩いた。
怒りが支配し整理がつかない。
何を語ればいいのか分からない。
だが今やるべきは……
……
俺はそこで立ち止まった。
「ニト?」
「ご主人様?」
「ニト様?」
「……」
俺はそこで、異空間収納から魔道具『聖女の怒り』と
「スーフィリア、これをお前にやる」
「これは……」
俺はスーフィリアに白い杖を渡した。
「『聖女の怒り』だ。魔力さえあれば、誰でも聖属性の中級魔法が使える」
スーフィリアは俺の話を聞きながらも、いきなり杖を渡され戸惑っていた。
「ネムにはこれだ」
そしてネムには剣を与える。
「特に高価な物ではないが、今はこれで我慢してくれ。近い内にそれなりの物を……いや……待てよ」
そうだ。俺にはあるじゃないか。
どんなモノも最強へと反転させることの出来る“魔法”が。
俺は渡す直前で思いとどまり、一度、剣を見つめた。
固有スキル『反転の悪戯〈極〉』は道具にも可能だ。
どんな姿になるのかは分からないが、反転後は、俺がもう一度手を加えない限りはそのままの姿を保ち続ける。
俺は頭の中で、剣を反転した。
「……なるほど」
すると剣は一瞬で刃が消え、そこには“剣”というようなものではく、どこからどう見ても金棒にしか見えない物が現れていた。
取っ手の下には輪っかがり、大部分には鋭い突起が無数についている。
そして全体が真っ黒だ。
「ネム、これを持てるか?」
俺は念のため、本人に確認を取る。
というのもネムの体には似つかわしくないデカさなのだ。
こんな大きな物をネムは扱えるだろうか?
するとネムは答えるよりも先に金棒を手に取った。
すると金棒はネムの手に触れた瞬間、見る見るうちに収縮し、ネムの背丈にあった大きさに姿を変えた。
といっても、まだ大きい。
だが、この金棒が何であるかはさておき、出来事からしてネムのサイズに合わせたと理解するのが自然だ。
つまり多少デカいように思う金棒は、これでジャストサイズなのかもしれない。
「大丈夫なのです。持てるのです」
背丈の2倍はあると言うのに、ネムは軽々と片手で金棒を扱っていた。
だったらいいか。
「ネム、それはお前にやる。それと、今日からネムに『獣王流派』を教える」
いきなり稽古をつけると言いだす俺に戸惑う3人。
「ネムは強いかもしれないが、このままではまダメだ。半端に強いと利用されてしまう。ネムにはこれから、俺の持てるすべてを授けるつもりだ。もちろん俺の出来る範囲でだが、まずは剣技の習得から始める。そして今以上に強くなってもらう。そうすれば昨日みたいなことがあっても、利用されずに自分で解決できるだろ?」
これが得策だ。
念のためスーフィリアには杖を渡したが、ネム程強いわけではないにしても、おそらく大丈夫だろう。
おそらく、どこかの変態貴族でもない限り襲われたりはしないだろう。
トアには『蛇剣キルギルス』があるし、現状ネムよりも強いから問題ない。
なんならトアにも剣技を教えるか……
そうだ、ならば3人同時に教えればいい。
身を守る術を。
「とりあえず俺はどんな時でも3人を守りたいと思うが、もしかしたら今後、俺がいない時に3人が狙われたりするかもしれない。そうなった時に、ある程度は自分で解決できるだけの力を、身につけておいた方がいいと思ってな?」
すると3人は同時に納得したような表情をした。
「今から闘技場に行こう。そこでネムに剣技を教える。なんならトアも習うか?」
「私はいいわ。剣技なら使えるから」
トアは魔族特有の剣技を一つ習得している。
「そう言えばスーフィリアは剣を使えるのか? どうせだし、お前も習うか?」
「剣なら幼少期より父に仕込まれましたが、私は研究者でしたので物心ついた頃には手放していました。今も問題なく使えますが、私はこの杖で十分です。もしよろしければ、少しこの魔道具を調べてみたいのですが、その……一度解体してみてもよろしいでしょうか?」
「解体?」
「はい、上級錬金術師であるわたくしには、魔道具の解体は、作ることと同様に容易いことなのです」
この世界には数多くの職業があるが、俺は殆ど理解していない。
錬金術師とはそういうモノなのだろうか?
魔道具を作るのが錬金術師。そういう認識で良いのだろうか?
だが今はやめておこう。話が長くなりそうだ。
「ああ、好きにして構わない。それはもうお前の物だ」
「ありがとうございます」
こんなところだろうか?
今できるのはここまでだな。
最も、早い話がレベルを上げればすべて解決するわけだが、実はもうダンジョンは、そういう意図においては使えない。
というのも、もうダンジョンには“モンスター”が現れない。
ヴェル曰く、ダンジョンにいたあれらはモンスターのような“低族”なものではなく、魔物と呼ぶらしい。
この世界にも高い知能を秘めたモンスターに『魔物』という基準を設けるシステムがあるが、それと同じ意味なのだろうか?
あまり詳しくは聞かなかったが、どうやら『魔物』は“ダンジョン語”らしい。
俺はそう考えるようにしている。
つまり『深淵の愚者』や『魔物』のように一般に浸透していて、かつ意味に差異があり名称だけ類似した、ヴェルが知っているモノを俺はそう呼んでいる。
そして、そのダンジョン語に属する魔物だが、あれは当初、候補者である俺を選別するために現れたものであり、以降は希望すれば現れるが、それを殺したところで以前のようにレベルが上がることはないらしい。
それよりもヴェルは……
――『ダンジョンはマスターの一部なんだぜ? つまり、そいつらもマスターの一部なんだ。やりたきゃやってもいいが、可愛そうなんでできれば止めてやってくれ。殺す意味がねえからな』
と、拒否していた。
ということで、レベルはもう自力で上げるしかないというわけだ。
廊下を進みながら空を眺め、今後、どうしていこうかと少し考える。
だが今は考えるよりも、まずやる方が先だ。
空いた時間を使ってネムに教えられることを教えていこう。
と、その時――
「……」
ふと、気づいた。
「ニト? どうしたの? 演習場に行くんでしょ?」
「あ、ああ! 悪い……」
思わず立ち止まってしまった。
一瞬、覚えのある魔力を正門付近で感じたからだ。
これは……
するとその時、3つの別れ道に出くわす。
右の階段を降りるか左の通路を進むか、それとも真っ直ぐ進み、つき当たりの階段を降りるかだ。
「こっちから行かないか?」
俺は左から行くように提案する。
「え? でも、それじゃあ遠回りよ?」
「何となくこっちの方がいいような気がするんだ」
「そうなの?」
3人は疑問符を浮かべていたが、特に聞き返すこともなくそのまま左に曲がった。
できるだけあいつには近づきたくない。
ただ、それだけのことなのだが……
「ねえニト? さっきから何を考えてるのよ? 悩んでることがあるのなら黙ってないで教えてよ?」
「え?」
「ご主人様……ネムのせいなのですか? ネムが……ネムが……」
すると急にネムがぐずり出す。
悩んでいる? 俺が?
「……」
2人が俺を不思議そうな目で見ている。
どうやら結構な間、俺は
「わっ!」
俺はネムを抱き上げ、肩に乗せた。
「さあ、行こう」
やはり考えていても仕方がない。
今後の事も、明日の事もだ。
俺は冒険者だ。
だから別にどこへ行こうと関係ない。
色々、思うことがある。
正直、そう簡単に怒りは治まらない。
だが冷静になることが、何より大事だ。
そして冷静になり、ふと思った。
この学生ライフだが、そろそろ……潮時なのかもしれないと。
学校の廊下。
そして窓から見える、大空。
学生として、あと何回、この空を見られるだろうか。
空が以前にも増して、不快に見える。
これが異世界の空か?
この灰色が?
いつもそうだ。
いつも見ても、何も変わらない。
俺はいつになったら、異世界にいけるのだろうか?
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