第158話 理解不能

 以前にも聞いた話だったが、カゲトラは一条やアルフォードと同じ、職業に勇者を持つ者だった。


「天を支配し天候を操り、世界に天災をもたらす魔法。使い方次第では、世界に大災害をもたらすほどの強力な魔法だ」


「ふ~ん、それが天属性魔法か」


「そうだ。我はカゲトラのその魔法に、手も足もでなかった」


ドラゴンには翼と口があるが、それすら出なかったのだろうか?

と、まあそんなことはさておき、とりあえずカゲトラは強かったということだ。


「それで? カゲトラと最後にあったのはいつだ?」


「正確にいつだったかは忘れたが、終戦以降は会っていない」


「他のメンバーにもか?」


「会っていない。我は主にカゲトラとしか話さなかった。それに元々、ドラゴンは多種族と交流のない種族だ。特に、人間とは関わるべきでないという教えすらあるくらいなのだ」


「人間と関わるべきじゃない? なんでだ?」


人間限定という部分に疑問を感じた。


「人間が愚かな生き物だからだ。長い歴史の中で毎回戦争を起こし、世界を破滅へと導くのは、大抵人間だ」


「そうなのか?」


「ああ。『人間は愚かな生き物である』……それが龍王様の口癖だった」


「龍王様?」


龍王……確か、以前にもそんなことを言ってたな。

だが今思えばドラゴンに王がいるとは興味深話しだ。


その黒龍曰く、その龍王は遥か昔に一度だけ人間に支配されていたことがあるらしい。

人間に精神支配を受け、気づくと大陸中を暴れ回っていたそうだ。

その話をこいつはよく聞かされたということだった。


「その……龍王ってのは何だ?」


だがその龍王なる人物が分からない。

人でないことは分かっている。


「流石のお主も古龍については知らぬか?」


「古龍? なんだそれ?」


「古龍ドストエフスキー。それが我らが王の名だ」


「我ら? ってことは、他にもいるのか?」


「お主は、ドラゴンについては何も知らぬのか?」


黒龍はまるで、それが常識であるかのように問う。


「知らん。ドラゴンに会ったのは、お前で2人目だ」


ドラゴンは何て数えるだ?

とりあえず今は人型をしているし、人と同じ数え方にしておこう。


「前に会ったのはハーディーって名の紅いドラゴンだった」


「何?! ハーディーだと?!」


「知り合いか?」


「知り合いもなにも、紅龍ハーディー・ドゥ・シュタイン・ゴッホは、我ら三大龍の一角であるぞ!」


「三大龍? ってことは、もう一人いるのか?」


「最後は白龍だ。そして我ら三大龍を束ねし王が、龍王様だった」


「ふ~ん……」


このレベルのドラゴンが3匹か……


「それよりニトよ、そのハーディーとはどこで会ったのだ?」


「ああアルテミアスの近くだよ。龍の秘宝とかいうのを取られて困ってたから、俺が助けてやったんだ」


すると黒龍は納得したような表情を見せる。


「なるほど……やはりお主であったか」


どうやらあの一件をあのドラゴンから聞いていたらしい。

あのドラゴンはよくここに来るのだろうか?

まあどうでもいいか。


「そんなことよりカゲトラの話だ」


ドラゴンの話は興味本位で聞いてみたがもういい。


「終戦を迎えて、その後どうなったんだ?」


「そうだな……」


すると黒龍の表情が険しいものへと変わった。


「しばらくしてからだった。ある日、カゲトラの死を知ったのだ。当時、とある地を治めていた神国メウィノースピア。我の聞いた話では、どうやらその国の王女をたぶらかしたことにより、カゲトラは処刑されたということであった。だが我はそれを信じてはおらぬ。あ奴は人格者であった。おそらく何かに巻き込まれたのであろう。その後の噂で、カゲトラはやはり死んだのだと知った」


黒龍から悲しみが伝わってきた。


以前はドラゴンのことなど何も分からなかったが、今では俺もこいつの考えていることが分かる。

俺がそれだけ強くなったということだろう。


「惜しい男を亡くした。だがこの世界はその損失に未だ気づいてはおらぬ。あ奴とは、多くを語り合った訳ではない。言葉を交わしたのは数回であった。だが我はあの時、あ奴の頼みに応じた。そして共に帝国を滅ぼした。我は、あ奴の意志に従ったのだ。そうしても良いと思えるほどの人間であったのだ」


こいつはカゲトラに、相当の信頼をおいていたわけか。


だが、なるほど……それ以上は知らないわけか。

とりあえず、黒龍がしんみりする前に本題に入ろう。


「お前の話は分かった。分かったところで本題に入りたいんだが、まず先に教えておく。龍の心臓は生きてるぞ?」


俺がそう言った時、人型ドラゴンの目が不気味に見開いた。


「何! それは、本当か?!」


「ああ、ただし生きていると言っても、カゲトラとアドルフについては俺も分からない。それからシャオーンは死んだ。確実に生きていると言えるのはカリファさんとゼファーだけだ」


「……なるほど。何度か聞いた名だ。忘れてしまったが、一度や二度、話したことはあったかもしれぬな」


こいつは本当にカゲトラしか興味がなかったんだな。


俺はその後、黒龍に5人のすべてを話した。

ゼファーとシャオーンは神国に向かって以降、どうなったのかは分からないということ。

そして俺はゼファーと会い、カリファさんは今もビヨメントで生きているということだ。

だが黒龍は名前を聞いても、今一、ピンときていない様子というか、思い出しながら聞いているように見えた。


「それでなんだが、その後、例えばアドルフさんが尋ねてきたってこともなかったんだよな?」


「ない。我はカゲトラ以外の者とは特に語ったことはなかったからなぁ。あ奴以外は知らぬ。だが裏で何かが起こったということは推測しておる。『龍の心臓』の名が、時代と共に失われていったことも知っておる。月日が経ち、気づくと、世界に平和をもたらしたはずの英雄の名が、不自然にも世界から消えていた」


カリファさんと同じだ。

あの人もこいつと同じことを言っていた。

記憶が戻った後、記憶がなかったそれまでのことを振り返り、そう教えてくれた。


「つまり、その後のことは知らないと?」


「そういうことだ。その後、我はあ奴にしてやれることはないとかと考えた。そしてカゲトラの意志を受け継ぎ、『龍の心臓』を立ち上げたのだ」


「なるほどな、新生『龍の心臓』ってことか。話は大体分かった。それでもう一つ聞きたいんだが」


「今日は質問が多いな?」


するとジークがそう言いながら、落ち着きのない態度でイライラしていた。

おそらく組織についてこの龍に問い質すつもりだろうが、もう少し待ってもらおう。


「これで最後だ。この話が済んだらもう行く。それにこれはおそらく、お前らにも関係のある話だ」


「申してみよ」


俺は黒龍に言われるがまま、ジークを無視して話を進めた。


「ダームズケイル帝国については知っているな?」


すると一瞬で、場の空気が変わった。

ジークの表情が一瞬、揺れ動いたのが分かる。

ドラゴンを含めたこの場にいる4人の心が、荒々しく動いている。


「実は少し前まで俺は皇帝に命を狙われていたんだが、そのお返しに直接、皇帝に会ってきたんだ」


「……なんだと?」


黒龍の表情から、こいつらにとっても帝国というものが何かしらの意味を持った存在であるということが伝わってくる。

いや、当然か。

龍の心臓が権力の暴走を阻止する組織なら、帝国は正に対象と言える。

奴らは手に入れた力を使い、戦争を企んでいるのだからな。


「皇帝というだけあって……いや、単純に俺が未熟だっただけだが、そう上手くはいかなかった。だが帝国の狙いが『龍の心臓』だということは何となく分かった」


「なんだと? どういうことだ?」


父親の驚いた顔を置き去りに、すかさずジークが尋ねる。


「理由は分からないが、奴はどうもその5人の冒険者を探しているらしい。それもかなりの入れ込みようだった。俺が5人について知っている素振りを見せただけで、顔色が変わったからなぁ……まず間違いないはずだ。それで聞きたい。奴がカゲトラたちを狙う理由について、“親友”であるあんたは何か知らないか?」


「んんん……」


顎をなでるながら渋い表情をする黒龍。


「知らないなら別にいい。今、知ったところで、どうこうできるわけじゃないからなぁ」


「できないだと?! お前でもか?! 皇帝はそんなに……」


するとジークが俺の言葉を勘違いし、さらに心を乱した。


「そうじゃない。あいつら自体は俺からしてみれば取るに足らない連中だ。今直ぐにでも滅ぼせるだろう」


俺がそう答えると、ジークは一瞬、俺の言葉に苦笑いを見せる。

そして直ぐに、意味を理解した。

その横でエリザとアルフォードも同じ表情をし、呆れている。

俺は適当に同じような苦笑いを返し、話を進める。


「だが奴らは獣国を支配下においていてな? 獣人が虐げられているみたいなんだ。実態が分からない分どれだけの規模かは分からないが、おそらく獣人が拉致されている可能性もある。人質になっていることも考えられるんだ。まあこれは飽くまで、俺の憶測だが、そうなってくると手が出せない」


するとその時、考えていた黒龍が口を開いた。


「分からぬ……分からぬが、考えられるとすれば、我らが帝国を滅ぼしたことであろう」


すると黒龍はさきほどの質問に答えた。


「数百年も前の話だろ?」


「うむ。だがそう考えるのか妥当だ。おそらくその者は知っておるのであろう。同じダームズケイルという名だ。過去の記述が残っていてもおかしくはない」


それは俺も考えていたことではあった。

だがそれではあまりに単純すぎないかとも思った。

それだけを理由に、詳細は分からないが、この20年の間、戦争の準備をしてきたってことか?

5人の冒険者を殺すという、それだけのためにか?

だがあいつは取り乱していたようにも見えたからなぁ……


いや、だが鬱陶しいあいつの芝居かもしれないしな……


答えを出すのはまだ早い。


「まあ俺も一応、現『龍の心臓』メンバーな訳だが、お前らは帝国に関してはどうするんだ? あれは正に権力を悪用しやりたい放題している連中の典型例だ。まさか放っておくわけじゃないよな?」


「そうじゃない」


すると、すかさずジークが否定した。


「そのために、仲間を集めていたんだ」


俺は直ぐに納得した。


「……なるほどな」


俺はジークが以前言っていた言葉の意味を理解した。

『俺たちには時間がない』……ジークはそう言っていた。

つまりそれが仲間を集めていた理由ということだ。


「お前と始めた会った時、俺たちは3人だった。そして3人では帝国を落とせない。あの国には『王の盾』がいる上に、その実態もまだ1人しか分からなかったからな。さらにその下には、獣人で構成された戦士の部隊までいる。グレイベルクを相手にするのとは訳が違う」


なるほど……つまりあの時からこいつらは分かっていたわけか。

獣人が虐げられていたことも。

帝国が獣人を使って、いずれ戦争を起こすということも。


「俺たちはまず仲間を探すことにした。その矢先にグレイベルクが勇者召喚を行ったんだ」


「話は分かった。じゃあ今はどうなんだ?」


「今は何よりお前がいる。先ほどのお前の言葉が本心なら心強い」


こいつは何かと俺を頼るが、それでいいのだろうか?


「確かに、殺れるとは言ったが……まさか獣人ごと殺るつもりじゃないよな?」


「それは仕方のないことだ。戦争と比べれば、今なら死体も少なくて済む。今の内にあの国は落としておくに限る。常に最善の手を尽くすべきだ」


だがこれは人間の始めた戦争だ。

獣人には関係がない。

だというのに、獣人を見殺しにするのか?


「獣人は関係ないだろ? 何の罪もない者を一方的に殺すのか?」


するとジークの眉間にしわが寄る。


「……言っただろ? 仕方のないことだと? それに強制的に戦わされている奴らばかりじゃない。中には獣国よりも待遇がいいことから、自発的に手を貸している者もいるんだ。ならば同罪だろ? そいつらを殺して何が悪い?」


「皇帝が誘惑したからじゃないのか? あのおっさんならやりかねないことだ」


するとジークがうんざりしたような態度で……


「さっきからお前は何を気にしているんだ?! 何故そこまで獣人に拘る?! あの時は何の躊躇いもなく城ごと破壊して見せたじゃないか?! 分かってるのか?! あの時、お前が認識していないだけで、城の中には何百という人間がいたんだぞ?! お前はあの一瞬で、そいつらを城ごと殺したんだぞ?! 別にそれを咎めている訳じゃない。中には関係のない人間もいたかもしれないが、それでも俺は必要な……「人間がいくら死のうが関係ない」


そうだ……関係ない。


「は? 今、何て言った?」


「人間がいくら死のうと、俺には関係ないと言ってるんだ」


ジークは俺の言葉の意味が理解できないらしい。

戸惑いを感じる。

そしてそれは表情にも激しく表れている。


「それは……どういう意味だ? いや、待て……人間の死は、関係ないと言ったのか?」


「そうだ。別に深く考える必要はない。そのままの意味だからな?」


するとジークは、俺の心意を探るように凝視した。


「ニト、それはおかしいぞ?」


するとアルフォードが口を挟む。


「お前も人間だろ? なのに何故、人間が関係ないと言える?! 関係大ありだろ?!」


「別に筋を通すつもりはない。俺のことはどうでもいい。ただ人間の死に、俺は何も思わないと言ってるんだ。特に関係のない人間にはな? だが獣人は別だ。あいつらはこの世界に必要な存在だろ?」


「必要な存在?……どういう意味だ?」


アルフォードも分からないか……


「ニト、私たちにも分かるように説明して?」


エリザも分からないか……


「そうか……分からないなら、それでいい」


おそらく話しても分からないだろう。

これは俺にしか分からない。

それだけは分かる。


「良くないだろ?! それでお前が手を貸さないと言うのなら、計画を大幅に変更することになる。まず襲撃は無理だ!」


「だったら、あんたが行けばいいんじゃないか?」


俺は黒龍にそう告げた。

俺ほどではないが、こいつもそこそこだ。

魔力量からしても、『王の盾』を凌駕りょうがするくらいの力は持っているはずだ。


「我は行かぬ。これはお主らだけで解決せよ」


「なんだと?」


「我が組織の任務に手を貸すことはない」


まったく意味が分からない。

自分で作っておいて、手はかさないだと?

働くのは下の人間か?


「何か……理由でもあるのか?」


「……われが次に戦場へ舞い降りる時、それは死ぬ時だ……それ以外にはない」


「どういう意味だ?」


「お主と同じだ。分からぬならそれでいい」


癇に障る奴だ。

こいつはこの城に引き篭もっているらしい。

そして帝国の件にも参加せず、飽くまでジークや俺にやらせるということだ。


「お前はそれでいいのか?」


ジークはこの怠けたドラゴンをどう思っているのだろか?


「無論、初めからそのつもりだ。これは俺たちで処理する」


「強気なのはいいが、結局俺がいないと出来ないわけだろ?」


「できないとは言っていない。計画を変更するだけだ」


「どうするつもりだ?」


ジークは軽くため息を吐くと、改まったように答える。


「――各国に要請を出す」


「要請だと?」


ジークの話は実にシンプルなものだった。

できるだけ多くの国と交渉し、兵が集まり次第、帝国に戦争を仕掛けると言うものだった。


『戦争を止めるために戦争をするのか?』と尋ねたが、『それも、あるいは仕方のないことだ』とクールにジークは答えた。

要は被害を最小限に抑え、帝国を滅ぼす。これが重要らしい。

もちろん戦争自体は不本意らしいが、帝国が相手では仕方がないということだった。


「じゃあ俺は獣国に行って、被害の様子を見てくる。でないと実態が分からないからなぁ」


「好きにしろ。もう何も言わない。いずれにしろ、帝国を滅ぼすにはお前の力が必要不可欠だ」


「さっきから、まるで帝国を知っているような物言いだな? あいつらの何を知ってる?」


するとジークの表情に闇が差し込む。

そこには悲しみと、何より憎悪が窺えた。

そしてジークはその怒りを抑え込むように、ゆっくりと話し出した。


「ニト、お前にとってはどうか知らないが、あの国は俺にとっては最大の敵だ」


「敵だと?」


「あの国を殺すことが俺の目的だった。だがあの国以外もそう成り得ると考えた俺は、父の考えに賛同したんだ。それが……俺がこの組織にいる理由だ」


「その……よく分からないんだが、何があったんだ? 聞いてもいい話か?」


「俺も……それからエリザも、皆、あの国に大切な者を殺されている……」


ジークはそれ以上、話す気がないように見えた。

まあこんなことをしているくらいだ。

こいつらにも俺と同じように、“何かが”あるのだろう。

それにジークは前に、“自分たちにも闇はある”と言っていた。

つまり、その闇が帝国と関係しているということか?


「まあいいさ。言いたくないなら俺も聞かない。この話は終わりだ。ただ言っておくが、だとしても俺は考えを変えるつもりはない。俺は価値のある者を助ける。ただそれだけだ。獣国にはいつ行くことになるか分からない。しばらく戦争が起こることもないだろうからな。それまでは大丈夫なはずだ。それまで俺は自分の旅を続けさせてもらう。獣国にはその過程で寄るつもりだ」


だがジークは俺の言い分をあまり良く思っていないようだった。


「分かってるのか? 状況的にはいつ戦争が始まってもおかしくないんだぞ?」


「その時はその時だ。それに予兆はあるだろう? 今戦争が始まったとして、一体誰があの国と戦うって言うんだ? 誰が好き好んであの国と戦いたがる? やる気になっているラズハウセンですら、直ぐには無理だと分かっている。帝国を滅ぼすと言って、俺を仲間に誘ってきたダームズアルダンの騎士ですら、現状では戦えないと言っていたぞ? それで一体、誰が帝国とやり合うって言うんだ?」


「そんな話をしているわけではない。お前の情報にはムラがある。有難い情報だが判断材料にはならない」


どうやらジークは、戦争は近いと予想しているらしい。


「始まった時は直ぐに駆け付けてやるさ。ラズハウセンには知り合いもいるからな。要請を出すならその国からにしろ。直ぐに答えてくれるはすだ」


ジークはそれ以上、言い返さなかった。


「話は済んだ。俺は戻らせてもらう。それからジーク? お前、一条に俺のことを喋ったろ?」


「喋っただと? 何のことだ?」


するとその時、忍び足で広間を去ろうとするアルフォードの姿が見えた。


「アルフォード?」


俺が声をかけた途端、肩をびくつかせ立ち止まるアルフォード。


「お前か? 一条にラズハウセンのことを喋ったのは? おかげでバレるところだった」


アルフォードはこちらに振り向くと、苦笑いで誤魔化していた。


「余計な気を遣うのはやめろ。これはあいつと俺の問題だ」


「ハッ……ハッハッ……悪い」


お節介な奴に、意固地な奴……そしてそれを見守るよく分からないエリザ。

そして怠け者のドラゴンか……俺は入る組織を間違えたのかもしれないな。

それに、会う度に、こいつらとの会話がやりにくくなっているように感じる。


場合によってはこいつらとの縁も切っていいと思っているが、今は情報が不足していることもある。

しばらくは、組織に身を置いておこう。


ジークの計画など知ったことではない。

その時がきたら、こいつらへの用もなくなるわけだしな。


どうするかは、また考えさせてもらうことにしよう。

いずれにしろ、こいつらは俺を無視できないんだ。


だが、これはこれで愉快なもんだ。

まるで俺が操っているようにも思える。


渦を抜け、俺はため息を吐きながら、広間を後にした。

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