第3話 神の構築

 海守はローブの男に立ちふさがった。


「なぜ立ちふさがる」

 ローブの男は問う


「さあ、どうしてだろうか」


「まぁいい、邪魔だ。」

 男が海守を通りすがろうとした。

 だが、海守は男の後ろからぐっと男を掴んだ。


「くっ、だれだお前は!なぜ邪魔をする!」


「俺は、ただの通りすがり...」


「...だっ!!」


 海守は精一杯の力で男をどうにか転ばせた。

 中学の途中まで習っていた合気道が、ここで効いたようだ。


 逃げていた少女が後ろを振り向く。

「なっ、なにをしているの!?」

「あなたは関係ないでしょう!?」

 意外にも清楚な話し方で少女が驚く。


「俺はいい!君は逃げろ!」


 少女は少しあたふたしたが、

「ごめんっ」

 とだけ言って逃げていった。

 さっきの清楚な驚き方とは一変、いかにも少女のようだった。


 海守は少しの間は、男をおさえていられたが。

「もういい!民間人相手には不本意だが、神気ちからを使わせてもらう!」

 そう男が言うと、男の手元に黒い物体が浮かんだ。

 さっと男はポケットからライターを取り出し、

 ライターを手元の黒い物体に近づけた。その瞬間


 ドカアアン


 軽い爆発が起きた。

 瞬時に男は逃げだし、少女を追いはじめた。

「うっ...」

 かろうじて海守は軽傷だった。

「くっそ!」

 海守はすぐに立ち上がり、男を追う。

 大小様々なビルの裏路地を駆け巡る。

 追っても追っても、追いつけない。

 そこで海守は土地勘という言葉を思い出した。

 ──俺だからできること──

 海守は見慣れた街の道を思い出し、先回りすることにした。

 すると少女を発見した。

「こっちだ!」

 海守は少女に呼び掛けた。

「あなたは!」

 少女が驚きながら、海守の方にかけよった。

 すぐさま海守は少女の手を掴み、すぐそばのマンションを囲っている塀の後ろに隠れた。


 ...ローブの男が過ぎ去っていくのが見えた。

「あなたは誰?どうして私を助けてくれるの?」

 少女が問う。

「俺は水閊海守みつか みもる。君を助ける理由は正直俺にもわからない。」

「ただ、君を見た瞬間美しいと思えた。初めて生きたいと思ったんだ。」

 少女が、少し警戒しながらも、自分の状況を話し始めた。

「...私は、仲巫なかみこ彩海さいみ。」

「私には特殊な神気ちからがあって、それを狙っている人たちに追われてるの」


「さいみって、彩る海で彩海さいみだろう?」

「いい名前だな」

 海守は少女の名前を知れて、嬉しそうにつぶやく。

「みもる?だっけ、あなたはどういう字を書くの?」

 彩海は少し照れると、そう聞いた。

「俺は海を守るで海守みもる。」

「ん?彩る海の君と、海を守る俺...」

 海守が気付くと。

「なんか...運命的だね...」

 彩海がそう続ける。

 二人はクスクスと笑い合う。

「なんか俺たち息が合うな。」

「そうだね。」

 そんな、幸福的な会話ができるのも束の間。


「こんなとこにいたのかよ...」

 ローブの男が二人を見つけた。


「彩海!下がって!」


「おいおいまたお前かよ...」

「まぁいい、そいつをかばうってんなら、お前も民間人じゃあねぇなぁ」

 男の手元に再び黒い物体が浮かび始める。


 ──俺は──


 青年の覚悟が決まった。


 ──彩海を守る!!


 青年は悟った。


 ──俺は──






 ──神の力を得た。










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