北の都の黒手帳
花屋 ラスク
退屈 by海堂 尊
この場所は退屈だ。
何もない、田舎だ。
全世界約70万人の人間の中にはそんな静かで自然豊かな田舎がいい。という人も居るだろう。
しかしよく考えてみて欲しい。
映画館はもちろんファストフード店もない。
学校には友達はいるが、どこか距離があっていったい何年前の不良だよ、という輩が教室の真ん中で近くの席の大人しい奴にしつこく絡んでは大声で騒ぎ立てている。 さらに自然豊かというが少なくとも僕が住んでいる場所は自然豊かだとは言えないだろう。東京の自然公園の方が数倍綺麗だ。そんな場所に住むよりは都会で暮らした方が充実する日々を送れると思う。
そんなことを親に話したのは、中学での修学旅行が終わって学校から家まで帰っている車の車内だった。
話して親から出てきた言葉は「じゃあ高校から都会行けば?」というものだった。
「いいの?」僕は、正直親が適当に出した言葉だと思っていた。「いいわけないでしょ、冗談だよ。」と言われるものだと思っていた。母・希美子は、とにかく都会は物価が高いと東京に住んでいる自分の妹に言っていた。
「いいよ?あんた成績はいいんだし。」
返されてきたのは予想外の言葉だった。そしてその後に母は言った。
「北都なら」
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