【ステージ4】『ミステリィの女神様』
プロローグ
私
そう。かくのごとく私は現実と虚構とを取り違えるほどに、何よりもミステリィ小説というものが大好きだったのだ。
何せそれが高じて何と高校入学早々に某ミステリィ新人賞にてデビューを果たし、今や現役高校生美少女ベストセラーミステリィ作家として人気を博しているくらいなのだから。
しかし作家はあくまでも作家であり、小説の中の名探偵とはほど遠い、何とも世知辛い稼業でしかなかった。
まさしく私が理想とする知恵と勇気と行動力だけで颯爽と難事件を解決していく名探偵を自分の作品の中で生み出し世間で大好評を得てみたところで、私自身の作家人生のほうは、売り上げや人気投票や賞レースやコネや前時代的な学閥支配や物分かりの悪い編集者や口さがない評論家や愚鈍な同業者たちとの軋轢その他諸々にがんじがらめに縛りつけられた、地味で辛いばかりの創作活動という現実世界が延々と続いていくのみなのである。
私にできることといえばせいぜいのところ、自作の中に自分と同姓同名の名探偵キャラを登場させて、架空の難事件を解決させて虚しく憂さ晴らしをするくらいのものであった。
このように私が夢と現実とのあまりのギャップに耐えかねて、自分にとって何よりも大切だった唯一最大の夢をあきらめかけていた、まさにその時。
──まさか『女神様』によって、叶えられることになるなんて。
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