我ら、ヤネウラベヤー

流々(るる)

第一話 「はしご、気をつけて登ってね」

「何やってんの? 早く先に上ってよ」

「お、お前が先に行けよ」

「タケシが言い出したんでしょ! ここの屋根裏部屋にお化けが出るらしいから確かめようって」

「そうだけどさ……なんか、ヤバくないか?」

「仕方ないじゃない。閉館してからじゃなきゃ出て来ないっていういう噂なんだから。六時までに終わらせれば、『トイレ行ってましたー。てへ』でごまかせるよ」

「……うん、そうだな。とっととお化けの正体を見届けてやるか」

「はしご、気をつけて登ってね」


「外はまだ明るいのに、ここは窓がないから暗いんだね」

「懐中電灯、持ってきてるから」

「おっ、さすがタケシ。

 うわぁ屋根裏ってこんな風になってるんだ。なんか木で作ったジャングルジムみたい」

「そっかぁ? 俺には博物館で見たクジラの骨みたいに見えるぞ」

「別に変わったところはないみたいだけど」

 (ギュギュッ)

「何だ? 今の音……」

「あっちの方から聞こえた気がするけれど」

 (グゴッ、ググゥガ)

「今度は屋根の方から……」

 (ヴォモーン)(ギギューガハッ)

「な、なんなの!?……あちこちから変な音がするよ、タケシ!」

「お、俺に聞いたって、分からないよ」

 (グガァ)(ムンフ)(ヴァモ)(ギュギュッ)(ドゥォーン)

「う、うわぁ! お化けだーっ!」

「ちょ、ちょっと、おいてかないでよー!」


        *


 ここは、とある公園の中にある古民家資料館です。

 築百二十年になる古民家を移築し、資料館として昼間は開放していますが、いつの頃からか、公園で遊ぶ子供たちの間でが広がり始めていたようですね。

 ここの屋根裏にはお化けがいる、と。

 この日、やって来たのは小学校四年生くらいの男の子と女の子。慌てて梯子を降りたので、男の子は落ちてお尻を打ったようですが大丈夫でしょうか。

 としては驚かすつもりなど、まったくないんですけど……。


「ほれ見ろ。まだ驚がすちまったじゃねえが。すたはんでわーさ任せろで喋ったのに」

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