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 突然の命令に面喰めんくらっている様子のイミア。

 生き残っている兵士らが戸惑いの目線を交差させ、イミアとレヴェーネを見る。

 息筋張いきすじばったのはココウェル、そしてシャノリアだった。



「ちょっと待ってくださいお爺様じいさまッ!!」

「とらえる必要なんてないわあなたッ!! この子にそんな力が残っていると思――」

「今の男は息を吹き返した・・・・・・・のだな? ルエリケ王宮魔術師長」



 低く淡々とした、それでいて芯のある声と目がイミアに飛ぶ。

 イミアは一瞬止まりながらも、その言葉にうなずく。



「……その通り、ですわ。――こんな馬鹿みたいなこと、自分で言いたくはないのですが――皆さんも見ましたでしょう?」



 イミアが周囲に視線を送る。

 誰もが真正面から、イミアの目を見ることができていなかった。



「……何を見たんだ? リリスティア」

「え、あ――大丈夫? アマセ君…………さっきね。いきなり起き上がったの。あそこで倒れてる敵」

「な――」



 ――思わずバンターの名を口走りそうなのを寸前でこらえ、改めてバンターを見る。

 いつの間にか――奴の顔は無くなっており、俺を捕らえるよう命じたえらそうな老人の前に倒れている。



「……単に、まだ死んでなかったというだけの話じゃないのか? イミア」

「……いいえ、確実に死んでいましたわ。どんな魔法も魔術も、消えた命を吹き返すことなど出来ません。絶対に……」



 ……そこで、やっと気付いた。



 俺を見るイミアの目が――いなリリスティアの目さえも、どこかおかしいことに。



「リリスティア。俺は何かおかしなことを言ってるか?」

「え。いや、」

「ケイ・アマセ」



 ナイセスト・ティアルバーが俺に話しかけてきた。



「お前……なんともないのか? あれだけ狂気的な戦い・・・・・・をしておいて」

「…………え?」



 ――――見えない左目が、うずいた。

 そこで初めて、自分がどんな目で・・・・・他人に話かけていたかを思い出す。

 鳥籠・・の中、辛うじて動かせる指で左目に触れながら、ゆっくりと閉じた。



「陛下。時間をかけている暇はない。やはりこの小僧――」

「捕らえる必要ないわ。むしろそんなことをしてる暇はない」

『!』



 この場で初めて聞く声に、再び破壊された城門付近へ視線が集中する。



 現れたのはプレジアの校医こうい――もとい魔女まじょリセルだった。

 彼女に遅れて、幾人かのアルクスが姿を現す。



「――パーチェ」

「リコリス先生」

「パーチェ先生っ」

「――誰だ?」

「プレジアの保健医ほけんいですわ、お初に。その子は私にお任せください、陛下」

「きき危険はないのか?」

「ええ。この子の命以外には――これは『痛みの呪い』の症状です。以後その子の病状はわたくしがしっかり管理いたしますので、どうかご心配なく――」

「やけに詳しいな。何故『呪い』について知ってる?」

「っ――」



 ――ジレイ・ディノバーツが、俺に歩み寄ってくるリセルの進路を塞ぐように立った。

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