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「ッ――」

『陛下っ、』

「貴様――それほどまでに――堕落だらくして――余のリシディアを――よくも――!」



 親衛隊が、イミアとレヴェーネが声を上げ、老王を抑える。

 ココウェルは裸にローブと巻き布を羽織っただけという姿で一切の抵抗をせず、蹴られた下腹部を抱えてうずくまった――



「……わたしに、何を言う資格も無いと承知の上で、申し上げます」



――まま、真っ直ぐに老王を見る。



「国を捨てて逃げていたお爺様じいさまに、そんなことを言われたくはありません」

「何……と? この、小娘、この……」

「陛下、どうか気をお沈め下さい。殿下もです! 今そのようなことをっ」

「どうして、ここまでひとり行方をくらませていたのですか? どうして最後まで皆を信じ、国を守るため戦っていただけなかったのですか? わたしなどより――わたしなどよりよっぽど、皆は国王あなたと共に戦いたかったはずなのに!!」

「わからぬ、わからぬ。お前などには何もわからぬ」

「お爺様、わたしの話を――」

「鳥籠にしがみついていたお前などに政治はわからぬっ!」

「わたしを籠の鳥にしたのはお爺様ではありませぬか!!」

「母親だ!!――おお前に何もあ与えず何もき築かせず、んん何も乗り越えさせないよう余にすすがりついて願い出たのは、あの女であるぞ……! 貴様も解っておろうがっ」

「……そう母にけしかけたのは、お爺様ではないのですか……!!」

「――陛下、殿下。どうか今は争わず、一刻も早く無事なお姿を国民にお見せくださいませ。皆上で不安を募らせてございます。非戦闘員の国民達など、その不安いかばかりか」

「――」



 イミアが早口に言う。

 老王は小さな肩を上下させながら、親衛隊に押されるようにして階上へと上がっていった。

 ココウェルは背を向けたまま、体に力を込めてぶるぶると震わせる。



「……陛下があのように・・・・・臆病になられて、もう随分になります。たった一人でリシディアを背負っている陛下のお気持ちを、どうかお察しください。殿下」

「……わたしに背負わせるつもりなど、毛ほども無いのでしょうね。お爺様にも――――あなた達にも・・・・・・・



 ココウェルがイミアとレヴェーネを見上げる。



 魔術師達は暗い目のまま、ココウェルから視線を外して老王に続いた。




◆     ◆




「陛下!!」「ケイゼン陛下!!」「ご無事でおられた!」「これでまだリシディアも安泰じゃ!」「よかった、本当に……!」



 臣たちが口々に、地下牢獄から上がってきたケイゼン・ロド・リシディアの姿に歓喜する。

 老王は親衛隊に促されながらそれに応え、応え――――そしてナイセスト・ティアルバーを見て表情を一変させた。



「これは――一体――なぜき、貴様等がここここにおるのだっ!!」

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