11
「ディ――」
「あッハ――」
「ほォん?……おおん!? 貴様、ディルス・ティアルバーか! どうなっとる、捕まっとるはずじゃ――」
「うお、ホントに来てるよ――おい待て、動くなッ!」
事情を知るアルクス数名が駆け付け、警戒を保ったままディルスをにらむ。
当のディルスは首などをゴキゴキいわせながら、何の興味もなさげにアルクスへ視線を返した。
「『動くな』か。私にかける言葉としてこれほど月並みなものも無いな。退屈な連中だ――さて。バニング・ロイビード」
「!?……な、なんだ」
「……嘆かわしい程の連携不足だな……よい、さっさと
「危篤――」
「ペトラ・ボルテールに
「――! いや、だが彼は首を――神経を傷つけられていて……」
「……成程。
「何とか……できるというのか?」
「我ら大貴族は国を導く存在。貴様等
「何を言って……、!」
「貴様の人体への医術と、我が人体への
「……すぐに用意をする! リコリス先生ッ、ティアルバーにイグニトリオ君の状況を伝えておいてください!」
「……これが希望を捨てなかった結果?」
「え?」
「いえ何も。承知しましたわ」
「お願いします! いける、やれる……ここだ。ここが俺の正念場だ……!!」
バニングは
リセルはそれを、少しの間見つめていた。
◆ ◆
『――――』
「こ……こいつらには殿下を殺せないだと? どういうことだ、何か
「いや。でもずっと考えていた――
「!」
「……普通に考えれば、お城の正面から、だよね」
「ああ。だが知っての通り、正面の城門には俺達も見張りを置いていた。いくらこいつらが兵器の力で姿を隠そうが限界がある」
「じゃあ……別の場所から? 窓を割って――」
「誰も音を察知できない
「え?」
「
表情の読めない正面の黒装束から目を離し、長髪の女を見る。
その表情は隠れているが――聞いてはいるようだ。
「……あんた。
『!!?』
味方が揃って息を
最初に食って掛かってきたのはペトラだった。
「私達が、周囲を警戒しだす――そのずっと前からいたというのか? そんな馬鹿げた――」
「そうだ、俺達が警戒をしていた。加えて――それまでここにいたのはディルス・ティアルバーだ」
「!」
「あの食えない男のことだ。何か俺達に知らせていない、侵入者を探知する仕掛けを施していたって不思議じゃない――いや、実際仕掛けているように思う。考えてみればあの男、俺達を完全に信用したという訳でもなさそうなのに、やけにあっさり城を出ていった」
「そ、そう考えられん訳じゃないが――」
「その上ペトラ、あんた確か――黒装束についての情報をガイツから受け取っていたよな。あれはいつのことだった?」
「……、!!」
「そう、もう
「…………」
「聞きたいのはその時のこいつらの様子だ。何か、そう――
「!!…………受けた。黒装束は戦いもそこそこに逃げ出したようだ、と」
「……別の目的があった。そしてその後今まで、こいつらは一切姿を現さなかった。ノジオス・フェイルゼインの危機にも、ナイセストが城を奪還した時も、誰にも一切加勢した様子はなかった――――その間実に一時間以上だ。恐らく『
「で――でも待ってよケイ、」
声をあげたのはココウェルだ。
「こいつらが、城にいたんだとして――わたしはどうして、今の今まで襲われなかったの? おかしいじゃない、こいつらは今わたしを狙って――」
「そうだ。俺の仮説が正しければ……こいつらは今になって、急にお前を襲い始めたことになるんだ。ココウェル」
「ど、どうして――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます