4
「な――」
片手で握った、刃先付近に穴の開いた
「熱くなって大局を見失うな。アルテアス」
「た。大局って――わっ」
「ずわァははっ! 拳一発止めた程度でなァにを油断――」
『うおあああぁぁッッ!!!』
背の圧力が無くなったガイツはこれまで止めていた呼吸を再開し、剣を杖代わりにして体勢を保った。
「兵士長!」
「我らも奴らも王女の居場所を知らない、ならば条件は同じだ。下らんことで冷静さを失うな!」
「――冷静、」
「思考を止めるな戦い続けろ、
「――――、はい。はいっ」
「不安に圧し潰されているのはお前だけではない。義勇兵コースの数人が既に戦意を失いかけている。戦いはアルクスに任せろ。一人でも多くを奮い立たせるんだ!」
「わ……分かりましたっ!」
「よし――――これより戦闘に加わる! メテア、お前は『戦力外』の保護と治療に当たれ! 他の者は敵戦力を分析しつつ出来るだけ戦力外から遠ざけろ!」
『了解!』
口元の魔法陣を消したガイツが魔装剣を携え、屋敷を破壊しながら暴れる「ディオデラ」へと向かっていく。
マリスタはビージを
いくつもの屋根の先に、ヘヴンゼル城が見えた。
(――お願い。無事でいて、ココウェル……!!)
◆ ◆
地が鳴り。
振動に、少女が
「った……!」
もう何か所目かもわからない傷を足に負い、また血がにじむ。
「もう……もう、いやだ……」
ココウェル・ミファ・リシディアは、地面に血の跡を残しながら裸足で瓦礫の中を歩いていた。
「ヒぃッ……!?」
付近で瓦礫が崩れ落ち、音に体を縮み上がらせて立ち止まる。
息を殺し、迫っているかもしれない追っ手に怯え切った頭を抱えてうずくまる。
(……なんで)
何故、自分がこんな思いをしなければならないのか。
何故、自分を見つけ出してくれる味方が誰もいないのか。
最初から、味方など誰一人いなかったからではないのか。
「……なんで……」
生まれた時から、誰の愛も与えられなかった。
気が付けば政治からは遠ざけられ、歴史書にも自分の名前と写真だけ載らなかった。
「出涸らし」の
アヤメ・アリスティナは最初から自分をオモチャだとしか思っていなかった。
ケイ・アマセは事件解決のために自分を利用していただけだった。
味方だと思った者達の中にはあっさり裏切者が現れた。
わたしが何をした。
わたしが悪いのか。
わたしが、わたしが、わたしが――――
「……なんでわたしが、こんな目に…………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます