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「解ってるのよ? あんたも劇の前くらいから、急にアルテアスさん達と一緒にコソコソし始めたものね? そっち・・・側に行ったから急に大人しくなったんでしょ? 見事なてのひらがえしじゃない恐れ入ったわメルディネスッ!!」

「…………」

「私達はね? あんたらみたいにゴクヒサクセン・・・・・・・を抱えてるワケじゃないのよ。あんたらからしたら子どものお遊び・・・・・・・しか抱えてないのこっちはッ! でも……ゥぐっ、だからこそそれが全てなのッ! 学祭がくさいを回ることも他の出し物にも参加しないでっ、この劇だけの為に一ヶ月精一杯もう精一杯頑張ってきた人だっているんだよッ!!」

『……!』

「…………」

「それをアンタらの都合で振り回されて! 理由を聞けば『教えられません』の一点張り!!うゥッ……だからせめてちゃんと上演し切りたくって、やっとの思いで勝ち取った最後の機会も――――それさえこいつらの都合で全部メチャクチャになったんだっ!! その上まだ私達にガマンを強いるのかッ!!? ナメたこと言うのもいい加減にしろッ!!! いい加減にしてよぉっ……!!!!!!」



 ……思わず、顔を上げていた。

両肩を支えられながら、嗚咽おえつらして泣き崩れるいち・・『平民』の少女。

 それを見るロハザーが、ヴィエルナが、システィーナが、パフィラが……事情を知る者全員が、かける言葉も無く呆然ぼうぜんと立ち尽くす。

 そんな中動いたのは、



「……思いはまれなくちゃいけない。これまで傷付いた分、最大限に。そうだよねシータ、それに……イグニトリオ君」



 うなれたリフィリィの頭に手を置き、彼女の前に立ったリア・テイルハートだった。



「ん? ああ、うん。その通りだと思うよ」

「思うだけじゃなくて、そうして。これから、少しずつでもいいから」

「? なんで君が僕にそんなこと言うのかはわかんないけど……いいよ。この件に関しては、生徒会長としてしっかり補償ほしょうに当たらせてもらう。約束する」

「ありがとう。――――リフィリィ。今度は」

「そう、あんたが耐える番――――や、違うか。あんた信じる・・・番だわね」

「……信じるですって?」



 涙のあとを光らせながら、リフィリィが鋭い目でシータを見上げる。

 シータは少しの考える素振そぶりを見せたのち――――リフィリィの前にペタンと正座で座り込み、彼女を真正面から見た。



「覚えてる? 私はよく覚えてるわ。すっごく腹立ってたから」

「何のこと? 腹立ったことなんてあり過ぎて、」

「そうだわよね。あのときよ、あのとき――――アマセ君が捕まって、先生たちが学長への嘆願書たんがんしょか何かを、持ってきてたとき」

「――――あれが何?」

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