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◆     ◆




「ただいま戻った!!」



 ズバ、と勢いよく舞台セットのある演習スペースに飛び込み。



『よく戻った!!!』



 ドバ、とそれ以上に勢いよく、マリスタはエリダらに舞台裏ぶたいうらへと引っ張り込まれた。



「んの?!」

「パフィラ、シータは!?」

「らちってきた!!!」

「じゃないのだわよ!??! 一体何のつもりなのだわあんたたちっ、私にはもうこの二日目午前中しかのんびり学祭を回る時間なんて無いのだけれど!?」

「だーいじょうぶ学祭は逃げないから!」

「今この時刻一刻こくいっこくと逃げてるのだけど?!?!」

「……またこれは何の悪巧わるだくみなんだ? アルテアスさ…………。。。」

「オーダーガード君。いや、私にも何が何だか……どしたの?」

「実家帰りのマリスタを見て見とれてるんだと」

「んなっ?!? な、ななな何言うんだチェーンリセンダッ!! 僕は断じて」

「きゃーだんしだ! えっち!!!!」

「え??!?!!? し、失礼だなロックコール君は相変わらずっ!」

「うきゃー!」

「実家帰りのマリスタはこのあたしに迫るくらいカワイくなるからねぇ」

「あ?」

「……私イチ抜けるのだわ。茶番なら勝手にやって」

「いーいからまあまあ。まずは話を聞いてくれたまい。ではこれより作戦会議を始めまーす」

「さ、作戦会議って……何話す気なのよエリダ」

「あ、そうだ先に聞かせて。お父さんとの話、何か収穫はあったの?」



 マリスタに詰め寄るようにしてエリダ。

 赤毛の少女はグ、と体を一瞬固くし――すぐにかぶりを振った。

 場に小さな嘆息たんそくが響くも、それは一瞬だった。



「オッケー、それじゃ今度はあたしの話ね――――あたしらでデモやるってのは、どうよ」

『――デモ?』



 マリスタと声がかぶって顔をしかめるシータを置き、エリダが続ける。



「そう、デモ。話にくらいはきいたことあるでしょ」

「あ、あるけど……でもデモっていってもどういうことすんのよ」

「でもデモー! おもしろ!」

「パフィラ、静かに」

「一応、二つにしぼろうと思ってる。アマセの解放と、学祭の続行。色々考えたけど、この二つならあたし達が要求してもスジ通るかなって」

「スジ……って?」

「成り行き上私達は知ってるけど、魔術師コースの人って、襲撃事件のことに関しては『何も知らない』人達ばかりでしょ。そんなあたし達が、襲撃事件を根拠こんきょにあれこれ話すことは出来ない。リシディアと戦争になりそうなことは止めてくれ、なんて言えない」

「でも、アマセ君のこととか、学祭がくさいのことは私たちでもいえるよ!」

「だから、どうやって伝えたらいいか考えよう、ってことになって」

「……その結果がデモだっていうの?」



 シータが鼻で笑う。

 エリダがムッとして彼女を見た。



「なあによ、何かおかしいこと言った? あたし」

「あのねエリダ。デモってどうやって、どんなことをするものだか知ってるの?」

「え。そ、それは……なんかこう、集まってワーって言うこと、くらいしか知んないけど」

「誰なのだわ? 提案したのは」

「一応私」

「ほーん。で? デモについての知識は?」

「うーん。エリダが知ってる程度、ではあるわね。過去にあった王都でのデモの様子を、ニュースでみたことがあるくらい。だから提案したの。他のみんなは、デモとかみたことある?」

「あるわよ。耳障りな大声でうるさくってかなわなかったのだわホント」

「ま、街でやってる小規模なデモくらいなら……あれもデモに入るよね? 何人かで街角に乗り付けて、何か言ってる人たちとか」

「しらないなー」

「私も皆と同じくらい」

「ハッ。じゃ、システィーナ以上にデモについて知ってる人はいないのだわね。こりゃ傑作けっさくだわ」

「けっさく?」

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