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「そんな適当なことでデモが成功するわけないでしょ。そもそもその日のうちに計画して実行されるデモなんて在り得ないし、やれてもその日に効果なんて出ないし。馬鹿みたいだわ」

「シータは詳しいの? なんかやけに……」

「お家柄、よくデモをされる側・・・・だったからね。うるさくて日々の生活を散々つぶされたわ。あんな迷惑行為が社会的に認められるだなんてよく言ったものだわよ」

「な、なるほど」

「つまり、こんなことを提案したシスティーナも、乗っかって雁首がんくびそろえて馬鹿ヅラさらしてるあんたたちも、それに私を巻き込んだことも冗談にしたって笑えないってこと。勘弁してほしいものだわよ、全く。それじゃあね」

「ちょっと言い過ぎなんじゃないのか? 君」



 ピタリとシータが動きを止め、吊り上がった目を声の主、テインツに向ける。

 彼もまた不快を隠そうともせず、顔をしかめてシータを見た。



「どうしてそう、人が積極的に起こそうとしてる行動を冷笑れいしょうするんだよ。少しくらい前向きに検討する姿勢があってもいいんじゃないか」

「いや、オーダーガード君大丈夫だから」

「ハァ。あなたもう少し賢いのかと思ってたのだけど、バカなのだわね。言っても分かんないのだわあんたみたいなバカに」

「ほら、そうやって早々に議論を切り上げて逃げようとする。対案も無いし真面目に考えてもいない証拠しょうこだ。馬鹿なのはどっちだよ」

「あのねぇ! 真面目を強要しないでいただけるかしら!?」

「し、シータっ」

「ほう、じゃ君は真面目じゃないって言いたいのか、今回の件に関して! 自分も襲われた身じゃないか、自分さえ心配じゃないっていうのか!?」

「オーダーガード君っ」

「……あーもう嫌だわ。ホント嫌。二度とこういう話に私を呼ばないで」

「あ、シータ――――えっ、オーダーガード君っ!?」



 すく、と立ち上がり、一人一人をめつけて去っていくシータ。

 その後ろ姿を不満の眼差しでとらえ一瞬見送ったテインツだったが、大きく息を吸ったと同時に後を追っていった。

 エリダがバッとマリスタ達を見る。



「や……やばくない、か? 追わないと」

「うーん。ああなったシータが頑固がんこなのは、エリダもよく知ってるよね? いいんじゃないかな、二人に任せとけば」

「い、いいのかなぁ……」

「うん。それより、デモするかしないかの方が大事だと思う。時間も限られてるから」

「そ、そう言うなら……」

「ねえエリダ、システィーナ。デモってやるのにどんな準備がいるの?」

『え?』



 シータとテインツの話には触れず、マリスタが言う。

 両目を左上に傾けあごに手を当て、思案する金色と紺色こんいろ



「私がイメージしてるデモはこう、最初から人が集まってる感じのデモだけど。ああいうカタチにしようと思ったら、とりあえず何がいるかな」

「……まず人数がいるわよね。身もふたもないけどさ」

「いや……まずは場所と、デモの内容じゃないかしら。事務の方に場所を取れるか聞いて、そのときデモの内容を伝えて……今は学祭期間だし、学祭の実行委員と、デモしたい場所を先に借りてる団体に、許可を取ることも必要でしょうね」

「でもさー、学長のかわりが決めたって言ってるんでしょー? じむの人なんて学長の手先じゃね? きょか下りなくね?」

「い、言われてみれば……」

「……やるんだったら、拡声器とかも欲しいとこだね。大声張り上げるにも限界があるし」

「あ、あたしデモやってるとこでビラ配ってるの見たことあるよ。チラシみたいなやつ」

「ちらしは時間なくないっすかねー?」

「……それくらい?」

「え? 何よ、それくらいって」

「準備に必要なものとか、妨げになる課題とか。そのくらいかな」

「あー、そうね……そのくらいじゃない」

「よし。じゃあやろう」

『え?』

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