12
シャノリアが沈黙を破る。
トルトの圧を真後ろで受けたリグオートの顔を、冷や汗が伝った。
実際には突風など吹いていない。
ただ鋭い視線と共に投げられたトルトの
「何かにつけて敵を見つけてギャアギャアと騒ぎやがってよ。お前さんら、実は
「で――でも先生、彼らは隠し事を――」
「だから何だよ。こいつらがお前らに、何か不利益をおっかぶせた事実でもあるってのか」
「それを明らかにするために、隠してることがあるなら話せってことなんですよ!」
「そうです! 後ろ暗い所が無いなら、何かを隠す必要なんかないんだ!」
「危険な思考ですよ。それは」
やってきた教師の中で一番背の高いアドリーが、ゆっくりとトルトの前へと歩み出た。
皆の視線が集まる。
「な……何が危険だって言うんですか。むしろ危険を避ける為に僕らは――」
「誕生日を、サプライズしたい時。それを
「……誕生日?」
「人は、後ろ暗くなくとも隠し事をします。下手な決めつけは視野を
「…………」
何か言いたそうに黙り込んだ少年の肩を、アドリーは優しく叩いた。
「解っていますよ。あなた達はきっと、そんなこと百も承知です。ただ、今は
圧迫感の無い、どこかひょうきんにさえ感じられる声色と軽い表情で、生徒達を見回すアドリー。
その視線の端で、
アドリーは、変わらない調子でその背姿に声をかけた。
「ああ、待ってください。コーミレイさん、アルテアスさん」
「友人が馬鹿共の
「はい遠回しに
「たいがく?!」
「マリスタ反応しなくていいですからっ」
「……反応するだけの元気はあるのですね、結構。――そう時間は取らせませんから、もう少しだけ私達に時間をください。……我々教師陣も、どう動くべきかを決めなければいけませんからね」
「どう……動くか、ですか?」
テインツが問う。
アドリーは薄く笑って
「話せる範囲で、聞かせてもらえますか? 今朝からここまで、アルクスの皆さんから伝え聞いたことを」
◆ ◆
「……なるほど。何から何まで初耳です」
「じゃあ、やっぱり先生たちは誰も……」
「ええ。恐らく校長先生も、何も知らされていないのでしょう。オーウェン・アルテアス
「ハイ質問。……です、マーズホーン先生」
「なんでしょうか、イグニトリオ君」
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