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 少し疲れた顔で、フェイリーがギリートを見る。

 ギリートは軽く手を挙げた姿勢のまま、目だけを明後日の方向に向けて口を開いた。



「今の言い方からするとですよ。あなたは、アマセ君を信じられるだけの材料を手に入れたら……彼らを信じるんですか?」

「当然だ。信ずるに足る材料さえあれば――」

奇遇きぐうですねぇ。僕も丁度ちょうど同じことを考えてたんですよ。ちょっと前から」

「何?」

胡散うさんくさいにおいがプンプンする、でもそのくせ、周囲の人間にはやたら一目置かれてる。僕も気になったので、言ってあるんですよ彼に。信じるに足る存在か、見極めさせてもらうって。どう見極めるかは決めてあるので」

「……それが何だ」

「ですからね、それを試金石ってことにしていただけないかなぁと思いまして」



 ギリートがニコリと笑った。

 胡散臭い笑顔だ。フェイリーも同じ感想を持ったのか、目を細めてギリートを見返した。



「……つまり、今後のお前の意見でもって、アマセを信じるかどうか判断しろと?」

「ええ。今現在、大貴族だいきぞくの中で恐らく一番マトモで、」

「は?」

「?!」

「人望があって、王国にもプレジアにも人脈と、社会的地位を持った一族の嫡男ちゃくかなん、ついでにプレジア魔法まほう魔術学校まじゅつがっこう生徒会長でもある、このギリート・イグニトリオの意見で以て、です」



 輝かしいまでの決め顔でギリート。

 言外に侮辱ぶじょくされたシャノリアとマリスタ以外の面々も、呆れ返った顔で彼を見た。

 まあ……



「…………自賛じさんが過ぎやしないか」

「自分のスペックをちゃんと把握しておくことも大事だと、ルームメイトに教わったもので」



 ……そういうことなのだが。



「信用に値するでしょ? 僕の言葉なら」

「……確かにお前の噂は、俺が学生だった頃から聞いている。対面で話すと最悪な印象だが、」

「えーそれいっつも言われるんですけど」

「その思慮深さと実行力、実行を確実に成果に結びつける才覚と実力は、十分な評価に値すると」

「ありがとうございまーす」

「対面で話すと印象最悪だがな」

「二回言う必要ありました???」

「ありますね」

「あるだろが」

「あるな」

「あるね」

「ある!!!」

「あ」

「お前さんには二回でも三回でも足りゃしねーよ」

「ザードチップ先生までやめてくださいっ」



 シャノリアがたしなめるも全員素知らぬ顔。というか変に息の合ったチームワークを見せるな。

 本人はカラカラ笑っていた。



「……分かった」



 フェイリーが大きな溜息ためいきき、背を向ける。



「アマセのことはお前に任せる、イグニトリオ。くれぐれも私情で動かないでくれよ」

「了解であります。決して肩入れなどせず、あくまで中立の立場から」

「……俺は彼らの目覚めを待ちながら、引き続き校長への尋問を続ける」



 わざとらしく敬礼などをし、ギリートはフェイリーの背を見送った。



「さてと。アレ、みんな顔怖いけど」

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