2




◆     ◆




魔弾の砲手バレットっ!」

「…………」



魔弾の砲手バレットが飛ぶ。



魔弾の砲手バレットっ!!」

「…………」



 魔弾の砲手バレットを避ける。



魔弾の砲手バレットっ! 魔弾の砲手バレットっっ!!!」

「…………」



 避けて避けて、あっさり避けて。



「はあっ、はあっ、はああっっ……フンッ!! 伊達だてに兵士コースに入ってるワケじゃないってことね……! ま、あんたなんかまだまだだけどッ」

「…………」



 マリスタは、考えていた。



詠唱破棄えいしょうはき。って確か、呪文ロゴスとかその構築式こうちくしきとか、その魔法についてちゃんと理解しておかないと、使えないもの……だったわよね)



 対する相手は自称じしょうリシディア国王女、ココウェル。

 ともすれば初等部の女子にも見えてしまうほど小柄こがらだが、その豊満ほうまんな体つきからして同い年くらいだろう、と目される少女。



 つまり、人生経験で言えばマリスタとそう変わらないであろう、少女。



魔弾の砲手バレットっ!」

「おうおっ」



 悲しいかな、マリスタは自分が相当にサボってきた人間であることを、強く自覚している。

 自覚しているからこそ、仲間たちに支えられ、彼女はここまでやってこれたのだ。



 ――だからこそ、思うのだが。



(もしかして……この子……)



「チイイィィッッ!! 魔弾の砲手バレット魔弾の砲手バレット魔弾の砲手バレット魔弾の砲手バレットばりぇぴぽっっ!!??!?!」



 爆音。

 ココウェルの背に一発ずつ・・・・展開されていた魔弾の砲手バレットが残らず巻き込まれ、ココウェルを巻き込んで爆ぜる。

 ロングワンピースのすそを踏み滑り、ココウェルは顔から盛大にずっこけた。



 無論、英雄の鎧ヘロス・ラスタングは使っていない。



(じ……自爆した……詠唱えいしょうんで失敗した……!!)

「っ~~~~~っ!! った……!!」

(……この子、もしかして……)



 義勇兵ぎゆうへいコース歴数か月のマリスタでも、容易ようい辿たどり着く答え。



 この少女は。自称王女は。



(……メチャクチャ弱いんじゃ……!?)



「あ……あのさ、ココウェルちゃん」

「『ちゃん』付けで呼ぶな王族に向かってお前ッ!! 大体わたしの方が年上だろうがッ!」

「もしかして、魔弾の砲手バレット初めて使った?」

「!!!!」

「………………」

「ばっばっ、ばっっっか言ってんじゃねーよ貧乳がよ!! 王女たるわたしが魔法の、しかも初歩の初歩の魔法……ハァ?!?!??!?」

(すっごいキレてる……)

「むしろわたし!? お前の実力を見てただけだし!?!? 聞いてんだからなお前、四大貴族よんだいきぞく史上最弱の女ッ!! アルテアス家凋落ちょうらくきざしっ!! クソザコド低能ものぐさ貧乳女ッッ!!」

「――――魔弾の砲手バレット



 マリスタの、背後に。



 空間を琥珀色こはくいろに染め上げる程の弾丸が、展開された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る