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「だってペアでしょ、一応。フォンさんと。もう片方のカップルはどっちも止められなかったし」

「そうですよ。なんでアマセがやる気になってんスかあれ」

「よくは解らないけど……私から人に話すことでもないんだと思う」

「そーすか。ま、俺には関係ないんでどっちでもいいスよ。壊せってなら壊しますコレ」

「そ、そうなの?」

「そりゃそっスよ。俺とフォンに接点無いでしょ」

「バリバリあるでしょ、神キュロス! ユニアと全面対決じゃない、第二幕! まさかこのおよんで忘」

「だああっ、覚えてます覚えてます!! でもあれは役の接点でしょ!」

「役の接点は大きいのッ!! 一度の舞台ぶたい共演から結婚に至った俳優はいゆうってメチャメチャ多いんだから!」

「わかりましたわかりました私が悪うございました!! でもホントに劇以外で付き合いなんて無いんですよ、フォンのやつとは!!」

「そ、そっか……じゃあやっぱ、」



 シャノリアが視線を、パールゥとナタリーに戻す。



「最初から、あれが目的だったってことか」

「正確には、アマセの奴と話そうとしてコーミレイにはばまれた、って感じスけどね。見てなかったんスか、近くに居たでしょ」

「居たけど、そう意識出来てなかったのよ。ケイの体調だけがとにかく心配で」

「……ホントモテますね、あいつは」

「…………」

「ああ、嫉妬しっととかじゃねーっスよ、俺は」

「え。違うの」

「嫉妬なんざはるか昔に通り過ぎて、今は恐々きょうきょうとしてます。いつ火の粉が俺達に降りかかるか、って」

「まあ、気になるわよね……友達とかはなんて言ってる?」

「色々っスけど、劇の完成度にまで影響しないかって、みんな迷惑がってますよ。言葉選ばずいうと」

「そうだよね~……でも私が介入かいにゅうするわけにもいかないじゃない、ああいうの」

「……まあそりゃあ。プライベートの範囲なら」

「え?」

学祭がくさいの出しモンにまで影響あるのをプライベートとは言わないっスよ。一応俺、風紀委員ふうきいいんなんで。公的こうてきなものに悪影響出るようなら、止めに入りますよ。ここに残ってるのもそのためみたいなもんス」

「……そうよね。私も一応、教師だし。あなたと同じスタンスでいさせてもらうわ」

「頼んます。アマセとザードチップ先生のとこはともかく、フォンとコーミレイのとこは……マジで未知なので」




◆     ◆




「どうしてあなたが私を止めるの? ナタリーっ」

「はい一旦落ち着きましょーね、パールゥさんねー。はい深呼吸―、すぅーはぁー」

「馬鹿にしないでッ!」

「馬鹿にされないと思うんです? 今のていたらくで。まだ戦ってもないのに目が血走ってますけど。まるで初陣の一兵卒いっぺいそつのようですねぇ、ヨユーを持ちましょうよ、ヨユーをっ☆」

「…………この、」

「……だから周りが見えねえんですよ、貴女あなたは」



 刺すような視線。

 非難ひなんでなく、罵倒ばとうでもなく、ただただ無関心極まる排除はいじょの視線。

 


 私は、こんな女と近頃まで友人だった・・・・・・・・・のか。



「私の前に立つってことは、やる気なんだ?」

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