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 「平民」に流れがちだった風紀委員達の目が、一様にシータへと集中する。



「……でも、メルディネスさんも、たしか。貴族、だったよね?」

「見ろよ。やっぱ襲われてんのは全員貴族じゃねぇか! 助かったキースだってそうだ!」

「だとしても」



 がなるビージをさえぎり、ギリートが笑う。



「『なぜシータ・メルディネスだけが、風紀委員ふうきいいんじゃないのに襲われたのか』。この理由がハッキリしない限り、出た結論はどれも早とちりになってしまうと思うね」

「っ……クソっ!!」



 ……それがいいだろう、と俺も思う。

 圧倒的に情報不足。今はどんな判断もきっと早計そうけいだ。



〝単なる観光・遊興ゆうきょう……百パーセント王女の気紛きまぐれだ〟



 ――――本当か?



 いいや、本当だとも。

 結局俺にも、あいつらの正体がハッキリ分かっているわけじゃない。早計なのには変わりない。

 いたずらな早とちりで思考の範囲をせばめれば、見えるものも見えなくなる……



〝君の心を乱す事実のすべてを、今後知ることは一切許さない。何一つ、知ってはいけないよ。アマセ君〟



 ……そうだ。

 しっかり、見なければ。



「とにかく、もっと情報が欲しいよね。リコリス先生、彼ら、目覚める見込みは?」

物騒ぶっそうなことをサラッと聞くのね……彼らがどんな魔法まほう・あるいは魔術まじゅつにやられたのかは分からないから、計器だよりでわかる限りだけど……命に別状はない。生命維持は問題なく続いている。このままいけば、きっと近いうちに目覚めると思う」

「そうですか――ってことは、ひとまずは目覚め待ちになるんじゃないかなぁ。それからじゃないと前に進めないよ。……というわけで。目下僕たちが片付けなくちゃいけない問題は……校長先生」



 ギリートがふくみのある目でクリクターを見る。クリクターは大きく息を吸い込みながら目線を下げた。



「率直に聞きますね。やめます? 明日からの魔法祭まほうさい



 ……皆が皆、クリクターを見る。

 ギリートの言葉はもっともに聞こえるだろう。

 すでに学生から、十名にのぼる被害者が出ている。明日からは一般の客もやってくる。

 敵の狙いが判明していない以上、今のまま祭りを続ければ最悪、プレジアの関係者以外から犠牲ぎせいが出る可能性があるのだ。

 これ以上の犠牲を出さないためにも、祭りの中止が最善であるように思われる。



 目を閉じていたクリクターは、やがてその厚みのあるまぶたをゆっくりと押し上げ、言った。



「いいえ。大魔法祭は続行します」



「ど――どうして!」

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